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#10 ラブコメ上位互換Part2


「まさかこんなに早く言うことになるとはね」


俺は息を呑んだ。俺を追ってきた千冬は何やら重大なことを今にも言いそうだった。


「晃司、これなら信じてくれる?」


そう言うと千冬は咳払いをして、息を深く吸い込む。

ために溜めて放たれた言葉は——


「こんかいり〜5期生の海のマドンナ、蒼芽 海莉だぞっ」


!!


一瞬自分の耳を疑う。俺には確かに『蒼芽 海莉』という俺の推しであるVtuberの名前が聞こえてきて、その上、配信まんまの声が聞こえてきたような気がして。


「まさか……!?」


そう言うと千冬はクスッと笑う。


「おしゃべりはまた後でね。早く戻らないと胡夏心配してるよ?」


そう言って千冬はそさくさと歩いていく。

俺はその歩いていく背中が今までの何よりも大きく感じた。まさかいつも隣にいる女の子が……嘘だよな?流石に……?いや……


「早く〜置いてくよ?」


「あ、あぁ、悪りぃ」





「どこ行っちゃったんだろう」


 私はやっぱり自分の問題は自分でなんとかしないといけないと思い、急いで家を飛び出して、2人を自分の家の辺りで探していた。


「私、言っちゃいけないことを言ったなら謝らないと。……それに結果はわかりきっているし」


 考えれば考えるほど頭が痛めつけられる。走っている途中何回か放棄しそうになる。もういっそ忘れてしまおうかと言う方法が頭をよぎることも多々あった。

 私は1番近くの河川敷まで来たが、誰もいなかった。さすがにここには来ないのかな。


 他のところをあたろうと、階段を急いで駆け上がる。……登っていた先に待っていたのは、絶望だった。


「よぉ。この前はえらく恥かかせてくれたじゃねーか」


 浦本……!?しかも私をいじめていた他の人まで。その数5人。やっぱり男というものは醜いもの。返り討ちにされたって、注意したって、正論を言ったって恨みを持たれる。執念深い。全く反省していないようで、春江さんに殴られたことなんてただの着火剤だったようだ。


「……何しに来たんですか」


「いやぁ、このまま終わったんじゃメンツが危ういからな。あの胡夏に恥かかされるのはかなりの屈辱だからな。きちんとここで落とし前つけさせてもらうぜ」


やっぱり私をボコボコにしに来たんだ。外なんて出るもんじゃなかった。

なんであんな春江さんはいい人なのに、こいつはこんなにクソなの……?私は結局こういう人達に絡まれないといけないの!?


「なんだその目は。気に入らないな」


パンッ


「……ッ!」


浦本から放たれた手が私の頬にダイレクトに当たる。


「ほら、昔みたいに泣けよ。弱虫。そして今すぐいなくなれよ。もちろん俺を殴ったあいつもボコしておくからな」


「……春江さんを傷つけるのは私が許さない」


泣かない。……私は春江さんのそばにいるために。私の使命はそれだけ。他の何でもない、それは初めて秋風 嵐紫の声を聞いた時から変わらない。


「ハッ、強がっても意味ないぜ。まぁめんどくせぇから、とりあえず弱虫ちゃんはここでねんねしときな」


拳を振り上げる。


「……助けてッッッ!」


私は春江さんを求めるかのように小さく叫んだ。すぐそこまで拳が迫る。

私はそのまま————


「はいそこまで〜」


「あぁ?なんだ貴様?この前の男でもねぇな、関係ないやつは引っ込んでろガキ!」


 浦本を止めたのは春江さんでもなく、千冬でもなく、見知らぬ茶髪の男の人だった。浦本より少し身長が高くて、鼻ピアスをしていた。

当然その人にも拳が振りかぶられる。


「おっと〜」


軽々と避ける。何この人、春江さんレベルで強そう……

 しかし、流石にまずいと思ったのか、周りにいた仲間達もその茶髪の人を狙って4人で囲む。


「やだなぁ、数人で1人の人を取り囲むって。ほんと情けない」


そしてその人は、唖然と見ていた私の腕を引っ張る。


「えっ、ちょ」


「早くいくよ〜ここは危ないからな」


「行かせるかよ!!」


浦本が不意打ちで狙ってきた。まずい、このままじゃ……!


「めんどくせぇなぁ。なら構ってあげるよ」


必死の間合いに入られたかと思ったが、その人は涼しそうな表情ですぐさま戦闘体制に入る。そして浦本より何倍も速く、拳を繰り出して顔に一発入れたのだ。

それが大ダメージとなったのか、立ち上がることができなかったみたいだ。


「ぐっ…………なんだよお前……!オレたちになんか恨みでもあんのかよ!?」


「さぁね〜 困ってる女の子がいたら助けるのが男ってもんでしょ?」


 私はさらに唖然する羽目になった。春江さんだけじゃなく、この人までも浦本をワンパンしているからだ。


「じゃ、この子にはもう手出しさせないから」


 そう言い放つと、すぐさま口が空いたままの私の腕を引っ張って走って行った。


「ここまで来りゃあ大丈夫っしょ」


「あ……あの……ありがとうございます……」


「お礼はいらないよ」


「え?」


なに?どういうこと……?お礼言わなくていい……?助けてもらったのに……?

私は混乱を顔におもっきり出していた。


「ほら、お礼は俺じゃなくて、彼に言いなよ」


彼?


「おーい、琢夢!」


この声は……!春江さん!!


「胡夏さんも無事でよかった……」


「連絡ありがとーね晃司」


ん?なになにどういうこと?訳がわからないんだけど……?


「胡夏の顔が混乱で満ちてるから説明してあげなよ」


千冬ちゃんもいる。


「家に戻ってからな」




 聞いたところによると、春江さんが出て行った先の公園で、千冬ちゃんは春江さんを見つけ、そして連れ戻そうとする時に、千冬ちゃんは春江さんに、「胡夏多分絶対に私たちを探しに家を出てるから、もしかしたら危ないかも」と言って、春江さんは中学で一緒のクラブチームで拳法を習っていた、しかもちょうど今家が名倉市である、有馬川ありまがわ 琢夢たくむに連絡をし、あらかじめこんな写真の人を見つけたら知らせて欲しい、と言ってたらしい。


「うぅ……ごめんなさい……私が勝手な行動をしたせいで」


「こっちこそごめん、急に出て行って。超有名Vtuberと今まで色々交流してたというプレッシャーやばくて」


「一件落着だね〜」


 ようやくこれで落ち着いてみんなで遊ぶことができるな……まぁほとんど俺のせいだけど。何して遊ぼうかな?


「じゃあ私たち帰るね」


ん?


そう言って千冬と琢夢は部屋を出て行こうとする。聞いてないんだが??


「ちょちょちょ、琢夢はまだしもなんで千冬、お前まで帰ろうとしてるんだ!?」


「胡夏から逃げた罰。胡夏も一緒にいたいって言ってたよ?頑張ってね〜」


 顔が意地悪な顔だった。そのまま2人は部屋を出ていく。すぐに後を追おうとする。……が。


「ちょっと待って——」


ガシッ


え。


「行かないでください。そう誓うまで私はこの手を離しません」


「ちょっ!?!?」


胡夏の両腕は俺の腰に巻き付いていた。見えてないけど多分顔も近い。息も荒い。





「私の春江さん、いや、嵐紫さん。ガチであなたのこと推してるし、大好きで仕方がないんです。もう耐えられません。もっと細部まで見させてください————」


「はぁぁぁぁ〜!?」


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