第五十ニ話 せっかく異世界に来たんだから、できる事をしよう。
よろしくお願いします。
俺が目覚めて四日が経った。
光水の月に入り本格的に寒くなってきた。
去年だともうそろそろ雪が降っていた。
「いきます。〈クイックヒール〉!」
その瞬間目の前の傷だらけだった兵士は傷一つ無くなっていた。
「助かったよ」
そう言って、兵士のオジサンは教会を出ていった。
だが、次々に負傷者が運ばれてきた。
「〈クイックヒール〉!」
そして、今日二十人目の兵士を治療するのだった。
俺は起きた次の日から回復魔法を行い続け、何十人もの兵士たちを治療してきた。
本当はもう少しMPが回復してからの予定だったが、予想外の事が起こったのだ。
なんと、ドラゴンが鉱山から出てきたのだ。
リヴォルバードラゴンは鉱山の銀を食べているので、外には出てこないと考えられていた。
そのためいくつかの部隊が鉱山の入り口近くでモンスターを駆除していたのだが、その場で抗戦することになったのだ。
自分のテリトリーに入ってきたことを怒ったドラゴンの無慈悲なる攻撃に数人の兵士が犠牲になったが、何とか逃げることができた。
だが、最悪なことにドラゴンの出現に興奮したモンスター達が村を襲うようになり、寝ずに兵士たちが戦うことになったのだ。
最初は難なく倒し続けていたが日を重ねるほどに怪我を負う兵士が増えてきて、今に至る。
何人も回復しているのに一向にゴールが見えないこの状況で少しでも時間が短縮させたくて、テルマリリ様に〈クイックヒール〉を習ったのだった。
「ちゃんと休憩取ってるかい?」
俺がMPを使い切って一息ついているとテルマリリ様が飲み物が入ったコップを持って治療室に入ってきた。
「少しは」
「本当は?」
「半日無休」
俺が隣で治療している横で折り紙をしながらスピレイが答えた。
魔力が必要なので妖精たちには魔法を使わないように言ったところ、彼女は「暇」と俺の所にやってきたので前世での鶴の折り紙を教えたのだ。
そしたら暇さえあれば折るようになってしまったのだ。
そのせいで、俺の治療室には千羽鶴が二房あった。
この調子でいけば明日にはもう一房増えることになるだろう。
「君は頑張りすぎだよ」
「でも、〈MP回復〉のスキルがレベル3になったので、大丈夫です。」
回復魔法をかけ続けて二日目に俺はこのスキルを得たのだった。
テルマリリ様に見てもらうとMPの回復量とスピードが上がるスキルだった。
俺はおかげでMP消費が〈ヒール〉よりも多い〈クイックヒール〉をかけられる回数が増えたのだ。
そのため、一日にMPが満タンの状態から空になる回数が増え、MPの上限が比例するように増えたのだ。
職業変化の効果もあり、今ではMPはアルマルデ様に見せた頃より五割ほど増えている。
最初は子供を戦場になんて、と思っていたがこんなに成長できるなら来てよかった。
「セシアが君を心配する理由が分かったよ。無理をし過ぎです」
「でも、ここで無理をしないと兵士たちはもちろん、村の人も俺達もただではすみません」
兵士たちがここを守り切れるかが俺たちの生命線になっている。
多少の無理はご愛敬だ。
「次を連れてきたよ」
負傷兵の中で傷が重い人をクロクリが選別し、アンミリがそれを運んでくれていた。
俺が魔法に集中したいと頼んだ所二人は快く受け入れてくれたのだった。
「ありがとう。それじゃあ、〈クイックヒール〉!」
すると、息も絶え絶えだった兵士はゆっくりと目を開いた。
「俺は、助かった、のか?」
「はい。でも、重症でした。きちんと休息はとってください」
「すまない」
その男も謝って出ていった。
本当は休んでほしいのだが、緊急事態なのであの兵士もすぐに戦場に戻るつもりなのだろう。
「死んだ方が楽だったかもな」
アンミリがそうつぶやく。
俺はそれを否定できなかった。
「ボルヴァードくんは本当に呑み込みが早いね」
俺の治療を見ていたテルマリリ様は褒めてくれた。
「ありがとうございます」
「もしかして、〈リカバリー〉も?」
「それは、すみません。発動はできるのですが、MPも魔力も足らないようで、今は一部の復元が精一杯です」
「でも、出来たんだね」
ガシェルさんにもらったアルマルデ様の手紙に書かれていた通りに〈リカバリー〉を発動するといとも簡単に発動できたのだ。
だが、絶対量が足らなかったのだ。
試しに腕を失った兵士にかけてみたがMPを全て使いきっても上腕を半分ほどしか戻らなかった。
改めてアルマルデ様の化け物ぶりが垣間見えた。
「それなら、回復魔法レベルは」
「はい、今はレベル9です」
「全くこの子は」
テルマリリ様が呆れた声でそうつぶやいた時だった。
「ちゃんと寝なさいって言ったのに!」
そう言って、シラユリが入ってきた。
シラユリはテルマリリ様を視界に入れると俺を指した。
「ルヴァンは昨日徹夜で治療してました!」
「お、おいそれは」
「なに?」
テルマリリ様は笑顔なのにその目は笑っていなかった。
「今すぐ治療室から出ていきなさい! 少なくとも今日は魔法全般を禁止します!」
俺は教会から追い出されてしまった。
〈夜間行動〉で眠れなかったから時間を有効活用しただけだったのに。
今も眠くない俺はとりあえず村を目的もなしに歩くことにした。
村は閑散としていて疲れきった兵士たちがちらほらと見れた。
ぐ~
「そういえば、まだ昼ご飯を食べてなかったな」
「それはダメだぞ」
声に振り向くと厳つい顔の兵士たちがいた。
「じゃあ、一緒に行こうな」
「え? ちょっと!」
俺は男たちに担がれると拉致されるのだった。
明日は今日より遅い時間か、日を跨いでしまいます。
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