第五十一話 せっかく異世界に来たんだから、ご飯をとられたくない。
遅くなりました。
よろしくお願いいたします。
「おれ、は」
起きると知らない部屋のベッドで寝ていた。
怠い体を無理やり起き上がらせて周りを見回す。
「ここはどこだ?」
記憶をたどるが、シューランのジジイと戦っていた途中で記憶がないのだ。
「おう、起きたか!」
「え?」
そこには俺が体を与えた妖精の一人で、体格のいい男寄りの妖精がいた。
頭がズキズキと痛い。
前世でいう二日酔いに似ている。
「すみません。状況が把握できていなくて。俺が倒れた理由も含めてその後何があったか教えてもらってもいいですか?」
「がってんだ!」
こいつの大きな声が頭に響く。
「まずは! えっと、なんだっけな?」
ダメだ。
他の奴に。
「ルヴァンが起きた!」
目の前に現れた黒髪黒目の女の子が水の入った容器をテーブルに置いて俺に抱き着いてきた。
前世で慣れ親しんだ日本人の容姿に懐かしさを感じた。
そう言えばこいつは。
「シラユリ、か?」
「そうだよ。どうしたの、記憶が無いの?」
「いや、頭痛でくらくらして思考回路がうまく回らないみたい」
「無理はしないで寝てて」
俺はシラユリの言う通りベッドに横になる。
だが、こいつが来てくれて助かった。
「あの戦闘はどうなったんだ?」
「ルヴァンが急に倒れて終わったよ。テルマリリって人の見立てでは魔力欠乏症で倒れたんだって」
「そうか」
確かにこの体のだるさは前世を思い出してすぐに倒れた時によく似ていた。
だが、あの時と違い天職をもらってMPも何十倍にも増えていた。
自分のステータスを確認しながら注意を払いながら戦っていた。
なのになんで?
「それはね、私たちは繋がっているからみたいなの」
女性寄りの妖精が食事をもって現れた。
「それってどういう?」
「あなたは私たちに助けてほしいと願ったでしょ? そして代価として体をもらったんだけど、その契約とこの体によるつながりが強すぎて、私たちが魔法を使うたびにあなたのMPを消費してしまっていたみたいなの」
「な、なるほど?」
正直半分も理解できていないが、とりあえず頷いてみる。
「私たちは妖精。魔法を使う時自然や空気中のMPを消費する。でも、今はあなたからもらってる」
「ああ、そう言う事か。理解できたよ」
俺が倒れる直前、妖精たちが魔法を使いまくっていたのを思い出した。
それがすべて俺のMPで賄われていたとしたら全然足らないのもうなずける。
俺自身も回復魔法を使ったりしていたし。
って、あれ? 今の声ってどこから?
俺は布団をめくると子供の身体の妖精がいた。
「なにしてんの?」
「温い。ここいい」
「出なさい」
「はい」
ちっさいのは俺の布団を剥いで持って行ってしまう。
寒い。
「他にも、あのドレスで攻撃を防ぐとMPが消費されてたみたいで」
シラユリの言葉にあの悪夢がフラッシュバックする。
つまりはこういうことだ。
「もう二度と変身するものか」
「いいじゃない! かわいかったでしょ! 強くなれたでしょ! コンビで二人は~みたいな魔法少女を目指しましょう!」
「やだよ! しかも、そのまま行くとシリーズ重ねるたびに増えてくだろ」
「私は白黒派だわ!」
「俺もだよ! 初期の方が好きだ!」
「だったら」
「見てほっこりの方だったらよかったよ。でも、変身する方だろ! 嫌だよ!」
黒歴史すぎて泣けてくる。
これで写真にでも取られていたら自殺か持っている奴らを一人ずつ暗殺していただろう。
とりあえずはこれからだ。
「お前らどうするんだ?」
「どうするとは?」
子供の身体の妖精が首を傾げる。
「いや、だって。もう、ここにいる理由がないだろ?」
「契約、我らは終わりの時まで手助けをする」
「でも、せっかく体を手に入れたのに」
「問題ない。人の一生など瞬きの時と変わらない。その後楽しむ」
「そう、か」
でも、それまでその体は持つのだろうか?
それに〈介助〉の身体って。
「その体、三日しか持たないよ」
「「「「!!」」」」
シラユリを含めて四人とも驚く。
「また妖精になるのは嫌だ!」
特に真っ先に泣きついてきたのはシラユリだった。
元人間のシラユリには誰にも認識してもらえない妖精に戻るのは苦痛なのだろう。
「大丈夫、三日に一度〈介助〉を重ね掛けすれば続けてその体のままでいられるし。しばらくかけ続けていれば、〈リハビリテーション〉のスキルでいずれは体が定着するはずだから」
「なら」
「そうだな」
「我らも」
後ろで三人が頷きあう。
そして、小さいやつが俺の右手を噛む。
「我はスピレイ」
女性寄りの妖精が俺の首筋を撫でる。
「私はクロクリ」
男性寄りの妖精が左肩を掴む。
「あたいがアンミリ、よろしくな」
……
…………
「お前、女性?」
「ん? 妖精に女性も男性もないぞ」
そうか。
最近それ系の話題で失礼なことを続けていたからもしかしてと思っていたが、よかった。
「でも、ほれ見ろよ。この体は女性だぜ」
そう言ってアンミリが服を脱いで全裸になる。
「ルヴァン、鼻血」
「え?」
俺は鼻をこすると赤い液体が指についていた。
「なんだ、お前はこんな体にも反応するのか。うぶな奴だな」
「お願いです。目に毒ですから、服を着てください」
「なんだなんだ、こい「ダメです」
アンミリが面白がって近づいて来ようとするとそれをシラユリが止めたのだった。
こいつは俺の味方のようだ。
「ルヴァンをいじって遊んでいいのは私だけ「おい」
前言撤回、こいつも敵だった。
俺の服の裾をスピレイが引っ張ってくる。
「ご飯、食べていい?」
先ほどクロクリが持ってきてくれたパンを俺が許可を出す前にもう頬張っていた。
「クロクリ様、いざという時には、“お兄ちゃん”って最初に付けて頼めば、許してもらえますよ」
シラユリがろくでもないことを吹き込む。
それにそんなことでこの俺が許可するわけがない。
「お兄ちゃん、パン食べてもいい?」
「……たんとおあがり」
そして、俺のは食事はとられたのだった。
「話は変わるがここはどこだ?」
「ここはドラゴンが今住み着いている王都西にある銀鉱山。その麓にある村の教会だよ。あの戦闘の後ここに連れてこられて、二日間寝てたんだよ」
「そうか、それでいつから作戦が始まるんだ?」
「それは私が説明するよ」
その声の方を向くとドアの前にテルマリリ様が立っていた。
シラユリたちは俺の前に出て彼女を睨んだ。
それにテルマリリ様は「随分嫌われたものだ」と言葉をこぼすのだった。
だが、普通に考えればテルマリリ様も命令で動いていただけだ。
シラユリにアイコンタクトを取ると、四人は俺の前を開けてくれた。
「作戦はもう開始されていて、まずはドラゴンとの戦闘に当たって不安定要素が無いように銀鉱山近くのモンスターを倒すことになっている。それが終わればドラゴン退治だ。私たちは負傷兵を治療することになる」
「前線に出ることは?」
「ない。と言いたいが、現状分からない。相手はドラゴンだ。どこが戦場になってもおかしくない」
「そうですか」
楽観はできないが戦闘に駆り出されるという無茶ぶりは無いようだ。
少し俺は胸をおろしたのだった。
「ボルヴァード。今は山の浅い部分の討伐で負傷兵が担ぎ込まれることは殆どありません。体を整えることに専念しなさい」
「はい」
―――!
その時だった。
微かにだが、何かが吠える声が窓の外から聞こえるのだった。
面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価をお願いします。




