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第三十九話 せっかく異世界に来たんだから天職をもらいたい。

遅くなりました。

よろしくお願いします。


馬子にも衣装。

つまらぬ者でも外形を飾るとりっぱに見えることのたとえ。

まさに、今の俺がそのたとえにぴったりの状態だった。

白色を基調とするドレスのような服なのだが、金の刺繍が施されさらには赤のローブをその上から肩にかけられている。

一緒に持たされている杖には宝石がちりばめられている。

総額いくらするのだろうか?

聞きたいような、聞きたくないような。

でも、やっぱり怖いので聞かないでおこう。

着られてる感しか感じない。


「すごく似合ってるよ!」


そう言って褒めてくれてるのはシューラン猊下だった。

もちろん、この服を用意したのもこの人だった。

今日は天職をもらえる日なのだが、俺は早朝いつものように徹夜で魔法の練習をしているとテンションの高い猊下が俺を拉致したのだった。

儀式は午後からのはずなのに。

洗礼の時みたいになにか前準備が必要なのかと思っていた。

だが、シスター達にもみくちゃにされて、気づいた時にはこの服を着せられていた。

そして、今俺は。


「もっと表情良く笑って」


「……はい」


その姿で、絵師の前で座っていた。

俺のこの姿を見て「後世にも残さないと!」などと言い出した猊下が勝手に呼び寄せたのだった。

しかも、写真を撮るのとは違い時間がかかる。

かれこれ、もうお昼近くだ。

朝食も食べてないのでそろそろ限界が近い。


「はい、下書きは終わりました。後日、出来上がったものをお持ちします」


「早めに頼むぞ! 今からもう待ちきれん!」


「……ハハハッ」


乾いた笑い声しか出てこなかった。


「さて、知りたいことは知れたかい?」


絵師が帰った後、シューラン様はいつもの笑顔で俺に尋ねてきた。

結局、メギドが来てから更に調べたが何もわからなかった。


「何も分からなかったか?」


「明確な答えは得ることはできませんでした。でも、エルフやドワーフのことについては多少知ることである程度の予想は付きました」


「ほう、聞いてみても?」


楽しそうにシューラン猊下は髭を撫でなでた。

俺は一個ずつ確認するように話し出す。


「まず、ハーフについて。人間や魔人、獣人は偏見があまりない。それに対し、ドワーフとエルフはハーフについて強い差別があります。これは古代種と言われる種だからです。その血に誇りがある」


他にもドラゴニュートという古代種がいたらしいがもうほとんどいないらしい。

その原因が古代種たちは出生率が低いこと、そしてハーフ種が増えてきたことによるものだった。

古代種の血は偏見がない近代三種と比べると弱い。

例えば獣人と人間が子供を作ればその子供は人間か獣人が生まれるが、エルフと人間の間からはハーフエルフと人間が生まれる。

つまりは純血が減っていってしまうのだ。

ドラゴニュートはそれが許せずにほぼ消えていった。


「ですが、俺はハーフエルフでもなくハーフドワーフでもない。二つの血を持った種なのですね」


「その通りだ。そして、今まではドワーフとエルフの間から生まれる子供も、ハーフエルフかハーフドワーフしか生まれないと言われていた」


実際にもいくつもの文献にもそう書かれていた。


「でも、古代種にも強い血を持つ人たちがいる。でも、実際にそんなことがあれば文献や噂になるはずなのに」


どこの世界にも例外はいる。

それが古代種の王族なのだ。

王族は強い血を持つために異種族間でもハーフではなく純血が生まれる。

このことからドワーフの国では王族のみ一夫多妻が認められているとか。


「そこまで分かっているとはさすがルヴァンくん!」


「では?」


「ほぼ当たり。でも、答え合わせは君が十五歳の成人を迎えた後にしようね。さて、長話もこのくらいにしないと。これから天職の儀の準備しなくては」


そう言ってシューラン猊下は奥の部屋に消えていった。


これでご飯が食べられる!

意気揚々に部屋から出ると笑顔のアルマルデ様がそこにいた。


「ここにいたのかい」


「……。猊下に捕まって」


「そうかい。でも、これから天職をもらう流れも分らずに、そのままでいいのかい?」


「ダメです」


「ならついておいで」


ダメもとで聞いてみよう。


「ご飯を食べてからか食べながらではダメですか?」


「はあ、セシアに頼んでおくからさっさと来な」


「はい!」


言ってみるものである。

説明を受けると既に昼は過ぎており、天職の儀が行われることになった。

ミドリちゃんの誕生日は俺の一日後らしい。

その為、俺の誕生日の次の日である今日が天職をもらう日になったのだ

本来平民は年度末である闇無の月に一斉に教会で天職、スキル鑑定をしてもらうそうなのだ。

また、今日は盛大に飾り付けがされているので俺たち二人以外もいると思っていた。

しかし、今日は俺達だけらしい。

なぜなのかセシルさんに聞いたところ、「あなたは誰の弟子ですか?」と返された。

つまりはそう言う事なのだ。


俺が聖堂前の扉に着くと既にテルマリリ様とミドリちゃんはそこにいた。

しかも、いつもの黒い修道着ではなく白いワンピースのような服だった。

洗礼の時も似たような服を着たが、今ミドリちゃんが来ているのはほんのりと美しく輝く光沢のある物だった。

それが、なんというか。


「結婚式のドレスにも似てるね」


「な、なにを言ってるんだ!」


ミドリちゃんは急に怒り出してしまう。


「それに、こんなの。私には似合わない」


「そんなことない。似合ってるよ。すごく綺麗だ!」


その言葉にミドリちゃんは俯いてしまう。

もしかして、何かまずいことでも言ってしまっただろうか?


「その言葉の責任はちゃんととるんだよ」


「え?」


次の瞬間、聖堂への扉が開かれた。

その先にはなぜか多くの見物客がいて、更に最奥の女神像の前にはシューラン猊下もいる。

猊下のジジイが用意した恥ずかしい格好のままなこともあり、一瞬足がすくんでしまう。

進まないと。

アルマルデ様に言われたことを思い出し歩き出す。

だが、俺の隣に誰もいないことに気づく。

振り向くとミドリちゃんが俯いたまま動けなくなってしまっていた。


責任をとれってそう言う事か!


俺は入り口に戻りミドリちゃんの手を取る。


「え?」


ミドリちゃんは驚いて俺の顔を見るが、俺は照れくさくなり視線を逸らした。


「かわいらしいわね」


「まるで、婚約式みたい」


「いや、聖女二人の弟子が一緒に天職の儀をするんだ。婚約するにもいいタイミングだし、そう言う事だろ」


「確かにそうね」


観客たちからの言葉に俺は恥ずかしさで死んでしまいそうになった。

足早に猊下の前に着くと跪いた。

一緒に来たミドリちゃんも同じような体制になる。


「それでは天職の儀を始める」


シューラン猊下の言葉で聖堂が静寂に包まれる。

そして、天職の儀は始まった。

まずは清めるとかで、跪いた状態の俺達に聖水をかけ、その上で世界樹の樹皮で炊いたお香をかける。

そして、「面を上げよ」猊下の声で俺たちは顔を上げた。

そこには真っ白なプレートが二枚浮いていたのだった。


「それでは天職を選びなさい」



☆介護士

☆まほうつかい

聖帝

教師



さて、ここで名前の横に星がついている職がある。

それがユニーク職と呼ばれるもので、その人だけに与えられる職らしい。

ユニーク職を二つ含めたこの四つから選ばないといけない。

残念ながら、〈回復魔法師〉も〈司祭〉もなかった。

そして、〈聖帝〉なんて聞いたこともない職がある。

だが、これを見た瞬間、どれを選ぶかなんて決まっていた。


〈介護士〉にしよう。


プレートの介護士の欄に触れる。

すると、天職用のプレートが後退し目の前に更にプレートが現れた。


『天職前の経験が加算されます。』


触れるとスクロールできるようになっていた。


『あなたは『介護の資格を十個取ろう』、『介護主任になろう』、『ケアマネージャーになろう』がクリアされました。追加経験値が加算されます』


『介護士はLv100になりました。他の職業から第二職業を選んでください」


お知らせのプレートが消えるとまた天職のプレートが俺の前に来る。

嬉しい誤算である。

どういうわけか第二職業を得られるらしい。

前世での頑張りがここにきて、いい結果になるとは予想外だった。

思わずにやけてしまう。


さて、残り三つか。


なら、必然的に魔法使いだろう。

その方が聖魔法、光魔法、回復魔法の使い勝手もよくなる。

プレートの〈まほうつかい〉の欄に触れる。

すると、再度天職用のプレートが後退し目の前に更にプレートが現れた。


『天職前の経験が加算されます。』


触れると先ほど同様スクロールできるようになっていた。


『あなたは『三十歳まで童貞を守ろう』、『三十五歳まで童貞を守ろう』、『三十五まで一度も女を知らずにいよう』がクリアされました。追加経験値が加算されます』


『まほうつかいはLv100になりました。他の職業から第三職業を選んでください」


「そっち!?」


「ルヴァンくんどうした?」


シューラン猊下が心配そうに俺を見てくる。

それを苦笑いを浮かべながら「大丈夫です」と返すしかなかった。


ちょっとまって、ここは異世界だよ!

だれも、前世の〈まほうつかい〉とは思はないじゃん。

しかも、経験がないことが経験値につながるとか何なの!?

この世界の神は俺を馬鹿にしてるのか!?


天職のプレートを見ると〈ようせい〉が追加されていた。

俺はこの世界が少し嫌いになりそうだった。


気を取り直して。

転生主人公的には、ここは〈聖帝〉を選ぶべき間も知れない。

だが、俺はハードな人生を進みたいわけではない。

でも、〈教師〉は前世でたまたま持っていた介護関連以外の資格から選ばれたものだろう。

ほとんど知識は無いし、俺の進みたい道とは違うだろう。

どうするべきか?


「大切なのは分かるが、そろそろ決めなさい」


猊下がこっそり俺に話しかける。

後ろを振り向くと観客たちが「早くしろ」と目で訴えていた。

隣のミドリちゃんももう決めたようだ。

仕方ない。


「ちょっと相談いいですか?」


もう、猊下に決めてももらおう。


「なんだい?」


「二つの内、どれがいいか決まらなくて。一つが〈聖帝〉で「〈聖帝〉にしなさい」


猊下の強い言葉に俺は「はい」と頷いた。

そして、天職のプレートの〈聖帝〉の欄に触れるのだった。

すると、プレートは消え代わりに視界の端に小さくダウンロード0%の文字が表示される。


「さあ! 二人とも自分の天職を高らかに宣言しなさい!!」


え!? そんな予定聞いてない!!

猊下の言葉に俺たち二人は戸惑う。


「まずはミドリ・フォルマトル!」


「え!? わ、私は〈聖女〉を頂きました」


その言葉に聖堂の全員がざわつき始める。

だが、猊下が手を叩くとすぐに静寂が戻ってくる。


「次は我の孫弟子ボルヴァード・フォルトロン!」


「お、俺は〈聖帝〉を、頂きました」


俺の言葉に全員が息をのんだのだった。






明日は夕方以降の更新になります。

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