第三十八話 せっかく異世界に来たんだから友達を大切にしたい
昨日は休ませていただきありがとうございます。
また、よろしくお願いします。
俺はあれからシューラン様のヒントを頼りに図書室で調べ物をしていた。
だが、魔法や武術の練習でさける時間も少なかった事や図書館が広すぎる事、アルマルデ様に伏せられていることを調べている事への後ろめたさから、なかなか調べ物は捗らなかった。
このことから何日をかけても見つからなかった。
「ルヴァン。何を探しているんだ?」
俺がいつものように図書室で調べているといつの間にかまたミドリちゃんが近くにいたのだった。
ここ最近、一緒にいることが多い。
今、俺はテルマリリ様から聖魔法のことについてミドリちゃんと一緒に教授していただいているからだ。
これに関してはアルマルデ様よりもテルマリリ様の方が使い手として上なのだそうだ。
そして、その代わりにアルマルデ様がミドリちゃんに光魔法を教えていたのだった。
もちろん俺と一緒に。
二人の授業内容は面白かった。
特に聖魔法はその性質から光魔法によく似ているが、中身は全く違うという点だ。
光魔法は魔力を光に変換させることで、その熱や光量で相手を攻撃や翻弄する魔法だ。
しかし、聖魔法は魔力を物質などに注ぎ込むことで変化を与える魔法だ。
例えば浄化は強い魔素を注ぎ込み内側から不浄物を取り出す、シールドは空間に魔素を込めて壁を作るなどがあげられる。
この魔素を注ぎ込む工程で理由は分からないが光が発生する。
このことから光魔法に間違えられやすいが、全然違うものなのだ。
「今日は回復が早いんだね」
「毎日倒れてられないわ」
ミドリちゃんはそう言ってため息をついた。
彼女も俺と同じで聖女であるテルマリリ様から修行を付けていただいていたようだが、スパルタ具合ではアルマルデ様の方が何倍も上だった。
だが、本来天職をもらう前は大きくステータスは変化しないとのこと。
俺はMPが450しかないのは種族的ハンデだと思っていた血のにじむ努力をしてきたが、そんなことは無いらしい。
ミドリちゃんのMPは105との事。
俺のMP量を聞いたアルマルデ様も目を大きく開けて聞き返してくる程度には驚いていた。
そんなわけで、俺は彼女の四倍は練習で来たのでおこなったのだが、負けず嫌いの彼女は俺に対抗するように魔法を使い続けた結果、二人の授業の途中で魔力切れで倒れるのだった。
そんな事を何日も繰り返していたのだが、どうやら今回はいつもより早く回復したようだった。
「それで、何を調べてるの?」
「それは……」
なんて返せばいいか分からなくなったが、俺の読んでいる本のタイトルが『ドワーフの歴史』だ。
中途半端な言い訳では逆に不信感を与えてしまうかもしれない。
それなら、今俺たちに共通の話題に逸らしていった方がいいだろう。
「お、俺はドワーフの血が、入ってるらしいから。人種と違って、貰える天職も少し変わってくるのかな~って」
「ふーん。まあ、いいか」
納得はしていないようだが、これ以上は気にしないようだった。
だが、ミドリちゃんは俺の読んでいた本を覗き込む。
「それで、あなたはどんな天職をもらうつもりなの?」
「それは……。まだ、悩んでいるんだよね」
方向性は決まっている。
俺は結局は誰かのために生きていきたいのだ。
前世でも、今もその気持ちは変わらなかった。
また、それを実現するのに教会に身を置いた方が叶いやすいと判断した。
ここにはたくさんの情報があり、色々な力を教えてくれる先生がいる。
そして、誰もが困ったときに助けを求めてくるのが教会だ。
アルマルデ様がこの教会に戻ってから何人もの人たちを救ってきた。
その姿に憧れてしまう自分がいた。
「じゃあ、どんな風になりたいの?」
そう聞かれたら、こう答えるしかない。
「アルマルデ様みたいになりたい!」
それは親を尊敬する子供の用かもしれない。
でも、その姿、その力こそ俺は目指す場所なのだと心に決めていたのだ。
誰が何と言おうと変わるものではない。
だが、俺の言葉にミドリちゃんが冷たい目で俺を見た。
「あんな風に怖い人になりたいの?」
アルマルデ様は基本人に優劣を作らない。
そして、光魔法を教えている時、不手際があるとまるで俺を叱るようにミドリちゃんにも拳骨を落とすのだ。
子供が苦手とするのも仕方ないことだろう。
「いや、でもアルマルデ様はやさしいよ」
「そうなの?」
「それに、性格の話をしているのではなくて、生き方としてだよ。誰かを助けるような存在になりたいんだ」
「だとすると。やっぱり〈司祭〉とか? でも、回復魔法が得意なんだよね。だったら、〈回復魔法師〉になるのがいいのかな?」
この二つは支援系の職だが〈司祭〉は信仰形の支援職で信仰する神様によって能力が微妙に変わってくるのだ。
逆に〈回復魔法師〉は本当に回復に特化した職でそれ以外がかなりいまいちなのだ。
「俺の〈介護〉や〈介助〉の能力が生かせる職があるといいのだが」
「なにそれ?」
「ああ、俺のスキルで二つとも何かしらの障害がある時に発動できるスキルなんだ。〈介護〉が障害を持つ時その状態的異常を無かったことにする。〈介助〉が同じく障害がある時その身体的異常を無かったことにするスキルだ。でも、このスキルは一定時間で解ける欠点があるけど」
「どれくらいで解けるの?」
「最初の頃は一日だったけど、今は三日くらい」
「MP消費量は?」
「一回40くらい」
「一時的とはいえすごい。それに効率もいい」
確かにそうかもしれない。
でも、このスキルは決定的な欠陥がある。
「依存性が高い。このスキルを使うと治る見込みがある人ならいいけど。どうしようもない人に使うと、その人の一生を背負い込むことになる」
「それって」
「ガシェルさんがその例だね」
ガシェルさんの病気を今のこの世界はおろか前世の世界でも直せるか分からない。
あの時はカーシャさんの大事な師匠だという事もありなおした。
そして、今では俺の師匠でもある。
助けたことに対して何の後悔もないが、こういった事態が続くのは避けなくてはいけない。
「だとすると、その能力を生かすとなるとどんなのがいいのかな?」
「医者とかって天職があるといいんだけど」
〈介助〉〈介護〉のスキルで一時的に治っている間に手術などで治すこと、そして手術後の体力が失われた時に支えることがができれば、患者が何のリスクも無く健康を取り戻すことができる。
「あるよ」
「え?」
「だから、あるって。〈医者〉」
「どんな天職!?」
思わぬ情報に俺はミドリちゃんの手を握る。
それを彼はため息をついて呆れながらも説明してくれる。
「帝国で初めて発見された天職で、基本は薬師のような職らしい。だけど、腹を裂いて悪い部分を取り除いたり、体調が悪い理由を瞬時に理解する職なんだって」
「そう、なんだ」
〈医者〉がはじめて発見された天職なら、それをもらった奴はもしかしたら、俺みたいな転生者がいるのかもしれないな。
少しあってみたいかも。
「そろそろ、戻らないと」
俺が考え事をしていると、そう言って彼は席を立つ。
「なあ、メギド」
「なんだい?」
もしかしたら誤魔化してくるかもしれないと思っていた。
だが、思いの外彼は普通に俺の声に言葉を返す。
その顔はミドリちゃんの顔だったが、表情はいつもニコニコと笑っていたアクアくんそのものだった。
「ミドリちゃんはもっとかわいらしい反応するぞ」
本物のミドリちゃんは俺の近くに居たがるが、潔癖なのか体が触れるほど近くに行くと顔を真っ赤にして怒るのだ。
未婚の男女がふしだらな事はしてはいけないとかなんとか。
手を握ろうものなら拳が飛んでくるだろう。
「分かってる。彼女ボルヴァードくんを好きだもんね」
「兄とか親しみのある好きだろ」
「それ本気で言ってる?」
はじめてメギドは目を大きく開けて驚いて見せた。
彼の感情を見ることができて少しうれしかった。
メギドだと分かっているのに俺は彼を嫌いにはなれないようだった。
「アクアくん」
「そっちで呼ぶの?」
「なんだっていいさ。ただ、何か助けてほしいなら面と向かって言ってくれ。犯罪以外だったら手を貸すから」
「……そうか。なら、その時になったら、遊びに来るよ」
「そうだな、友達だし」
一瞬視線を離した瞬間にメギドの姿は無くなっていた。
俺は小さく息を吐き出す。
「ボルヴァードくん、アルマルデ様が呼んでるよ」
振り返るとミドリちゃんがいた。
俺は彼女の手を握る。
「な、な、な!」
顔を真っ赤にする。
そうそう、この感じ。
ミドリちゃんは可愛いなあ。
さあ、バッチこい
俺は一発は殴られることを覚悟した。
だが、拳は飛んでこなかった。
「け、穢された」
「え?」
「結婚、だからね」
拳の代わりに、爆弾発言が飛んでくるのだった。
今日中にもう一本上げます。
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