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第三十七話 せっかく異世界に来たんだから問題を洗い出したい。

よろしくお願いします。


昔、心やさしい魔族の女の子がいた。

女の子は村のみんなが好きで、友達が大好きで、家族を愛していました。

そんな彼女の事をみんな大切にしていました。

とうとう十歳になった女の子は天職をもらう日が来ました。

みんなに好かれる彼女は誰かのためになれる職が欲しいと願っていました。

それを知る知人たちは彼女は『聖女』になるだろうと思っていました。

そして、天職を授かるために神の像の前で祈りを捧げました。


「みんなの幸せを守れる、支えられる、そんな力が欲しいです」


彼女の純粋でありながら強い願いでした。

それに呼応するように強い光が彼女を包みました。

天職が与えられたのです。

彼女が心からの願いをかなえられる職。

誰もが予期しないものでした。

それが『魔王』でした。


魔族を統べるもの。

誰よりも頂点に立つ者が心やさしい女の子だ。

その事により村だけでなく魔族の誰もが喜んでいました。

そんな中それは起きました。

女の子は町を火で埋め尽くしてしまったのです。

その火は次第に炎になり、炎はは人の肉を焼くたびに強大になり、血を啜るたびに広がって、彼女が涙するたびに命を食らっていった。

誰もが近づくことすらできない中、氷結の『勇者』が現れました。

彼は氷と結界を得意とする勇者でした。

『魔王』の炎を氷で退け、結界で勢いを殺しました。

その間に聖剣で貫かれた彼女は神を呪いながら、深い眠りについた。



◆ ◇ ◆ ◇



シューラン猊下は本を音読した本を閉じて俺達と向き合った。

場所は変わって猊下の執務室から共用の図書室の一角に来ていた。


「どうかな?」


本を棚に戻した猊下は俺に意見を聞いてきた。

どういう意味で聞いてきたのかよくわからないが。


「色々な解釈ができる内容だと思います」


そう言うと、猊下は嬉しそうに頷いた。


「まさにその通り。別に隠していたわけではないのだ」


「千何百年も昔の事だから、伝えられた内容が少しずつ変わっていったってことかい?」


アルマルデ様は呆れたようにため息をついた。

この世界は前の世界のように誰もが欲しい情報を手に入れることができるわけではない。

しかも、それが人から人への言い伝えになれば、その内容も変わっていくのだろう。


「だが、数代前の教皇は民たちを刺激してもそこに本当の安寧は無いと判断し、一部のもの以外本当のことを知らせなくしたのだ。そして、私の代で……」


猊下は言葉を止める。

何かあるのだろうか?


「言い忘れていたのだ」


「「「それはダメだろ!」」」


思わず俺たち三人の声が重なった。

アルマルデ様は明後日の方を見てため息を吐き、テルマリリ様は頭を抱えていた。

それを見てもシューラン猊下はいつもの笑顔を絶やさなかった。


「それで、実際はどう言った結末だったのでしょうか?」


「勇者の真意までは分からないが、彼の結界と封印で『魔王』となったガフマルノディルを止めて、氷の中で眠らせたというのが本当の結末だ」


「殺すことはできなかった?」


「そうなのかもしれないし、そうでないかもしれない。彼の文献では多くの民を蝕む魔物討伐の話が記述されている。その中でも邪神を異次元に封印した話が一番有名だろう。でも、その記述も封印とだけ書かれていた。もしかしたら、彼自身は何かを殺すことをよしとしない人だったのかもしれない」


「そう、なのですね」


そして、深いため息の後にシューラン猊下は近くの談話室にて今回の問題点を洗い出すことになった。


「一番まずいのはその襲撃者だな」


猊下の言葉に俺は首をひねる。


「魔王の復活ではないのですか?」


「それなら、考えるだけ無駄だ。私達ではどうしようもない。その時が近いことを教皇に伝えて、勇者の派遣をしてもらうほかない」


もう対処の方法は決まっているらしい。

それでは、なぜ襲撃なのだろうか?


「地図はもうないのに」


「いや、地図はまだある。それも、数か所に。その一つである湖畔の教会の地図が無くなっても問題ない」


「? では」


「この襲撃は源泉の洞窟の地図が目的ではない」


テルマリリ様の言葉に猊下は頷いた。

じゃあ、何の目的。

俺が考えているといつの間にか三人が俺を見ていた。


「そう言う事になるか」


「でも、彼にそれだけの理由が?」


「ルヴァンはエルフとドワーフのハーフ。〈神々の血〉のスキルも発動している。そこまで言えば察しはつくだろ」


その言葉で他の二人が納得したかのように頷いた。


「な、なんなのでしょうか?」


「まだ、彼には伝えていないのかい?」


テルマリリ様はアルマルデ様に問いかける。


「政治的な問題だ。いつかは伝えるが、今はまだ。その時まで守ってやるしかないだろう」


まだ教えてくれはしないようだ。

俺は猊下を見る。


「ヒント、エルフやドワーフは人間や獣人とは違い、純血を尊む。それは上の者であればあるほど」


他の二人に聞こえないように俺に教えてくれたのだった。




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