第四十話 せっかく異世界に来たんだから笑われたくない
すみません。
急いで書いたのですが、メンテナンスに間に合いませんでした。
よろしくお願いします。
天職の儀が終わった後、俺達はシューラン猊下に今日観客に来ていた人たちに紹介されていた。
誰もが友好的に接してきてくれた。
ただ、気になる点があった。
「ミドリさんとボルヴァード様はとても利発そうですな」
「ボルヴァード様がいるなら教会は安泰でしょう」
「是非ともボルヴァ―ド様とはこれからも友好的な関係でいたいですな」
誰もが俺に“様”を付けて話しかけてくるのだ。
それも、宝石や高価そうな服を身にまとった大人たちがだ。
隣にいるシューラン猊下は満足そうに笑っていたが、その後ろにいるアルマルデ様は終始無言を貫いていた。
そして、俺が大人たちへのあいさつにうんざりしたころには、アルマルデ様はいなくなっていた。
「ボルヴァード様?」
「す、すみません。少し疲れてしまって」
「そうですよね。準備にも時間をかけたでしょうし」
俺の着ているシューラン猊下が用意した服を見て、その男は色々と察してくれたようだった。
隣にいるミドリちゃんも限界のようだ。
「猊下、少し休憩を頂きたいのですがよろしいでしょうか?」
「おお、気がきかなくてすまない。行っておいで」
「ありがとうございます」
言う前に気づけよとも思ったが、まずはミドリちゃんだ。
俺はミドリちゃんの手を引いて聖堂を出たのだった。
「お疲れ様」
「ありがとう」
やはり、疲れていたようでミドリちゃんは教会裏のベンチに座った途端深いく息を吐いた。
俺も思いの外疲れていたようで特に話すことなくミドリちゃんの隣に座る。
先ほどいた聖堂とは違い、いるのは俺達だけで何の声もない。
ただ、風が優しく吹いているだけだった。
風の月は熱くもなく寒くもなくちょうどいい季節だ。
俺は空を見ると太陽が沈みかけており、空が真っ赤に彩られていた。
その色を更に際立たせるように星が輝く。
そう言えば、子供の頃妹と一緒に歌った曲があったな。
〈夕焼小焼で 日が暮れて〉
妹が好きだった歌だ。
子供の頃一緒に声を合わせて帰ったな。
〈山のお寺の 鐘がなる〉
この歌を歌うと今日はもう終わりなんだなって思えてすこし寂しくもなった。
〈お手々つないで 皆かえろ〉
今頃、前世の頃の家族たちは元気にしてるかな?
〈烏と一緒に 帰りましょう〉
俺はここで歌を止めた。
二番目もあるのだが、ホームシックならぬワールドシックになりそうだったからだ。
「ねえ、カラスってなんだ?」
「え?」
そう言えば、この世界にはカラスはいないんだった。
それっぽいのはいるけど、なぜか両目の間に第三の目がある鳥だ。
伯爵領から王都に来る際に何度か見かけたことがあった。
だが、名前も生態も知らない。
説明は無理だろう。
「お、俺も前に知人に教えてもらっただけだから分からない」
「そうなんだ」
過ごしやすい季節とはいえ夜になると冷えてくる。
俺は少し憂鬱な気持ちで立とうとした時だった。
ミドリちゃんに手を掴まれてベンチに戻る。
「ど、どうしたの?」
「もうちょっと、歌が聞きたい」
「うん、いいよ」
俺はミドリちゃんのリクエストに応えて前世の童謡を何曲か歌うのだった。
歌い終わって横を見るといつの間にかミドリちゃんは寝てしまっていた。
ミドリちゃんを背負って教会に戻る。
あれ? ミドリちゃん軽くなってる。
洗礼の洞窟の時も背負ったがその時よりかなり軽くなっていた。
本当は聖堂に戻るべきなのだろうが、戻る気にはなれなかった。
大人たちの上辺だけの言葉に値踏みするような視線が辛かったからだ。
ミドリちゃんの部屋の近くまでたどり着いた時だった。
そこにはアルマルデ様とテルマリリ様が何かを話していた。
しかも、二人の表情はかなり険しい。
「ただいま戻りました」
俺がそう言うとアルマルデ様は小さなため息をついた。
「ミドリを部屋に送ったら、あたしの所に来な」
「はい」
大変不機嫌なようです。
重い足取りでアルマルデ様のもとに行くとそこにはテルマリリ様がいた。
「それじゃあ、よろしく頼むよ」
「はいはい」
テルマリリ様が俺を見る。
そして、顔をひきつらせたのだった。
「なんだい? どうしたのさ」
アルマルデ様は問いかけるとテルマリリ様は「この子、三つも職がありますよ」と、珍獣を見た人のように俺を指さしたのだった。
どうやら、俺の職を鑑定してくれているようなのだが、その言葉に二人とも苦笑いしている。
俺もどう答えればいいのか悩んでいると、アルマルデ様は頭を抱えながら盛大にため息をついたのだった。
「一個ずつ確認してってくれ」
「ええ。まず、〈聖帝〉について。光、聖、回復魔法を得意とする。全ステータスが上がりやすいから攻撃や防御、回復もできる万能職です。戦闘時には仲間に強力な能力補正をかけることができますが、レベルが上がりにくいのが問題がある」
「上がりにくいってどれくらいですか?」
「昔同じ〈聖帝〉をもらった奴が九十歳で死ぬ直前のレベル60に満たなかったよ」
「レベル100とか無理だろ」
「まあ、諦めず頑張りな」
「はい」
テルマリリ様が軽い咳払いをする。
そして、次の説明をしようとする。
「先に〈介護士〉でお願いします!」
「え? 分かったわ」
あの職業の説明はできるだけ聞きたくなかった。
「〈介護士〉はHP、筋力、知力に補正がかかる職業です。介護中の相手を回復させやすくする以外にも、相手の感情を読み取りる力に補正がかかるようです」
「まあ、ルヴァンに合ってる天職だな」
「因みにこの職レベル100なんだけど」
「は?」
「後、もう一個の〈まほうつかい〉もレベル100。MPと知力に補正がかかる職業で「それ以上聞きたくない!」
俺の説明でテルマリリ様の言葉が一瞬止まるが、アルマルデ様が無情にも「続けな」と指示を出す。
いや! 聞きたくない!
「この職業は」
「やめて!」
「長い間……。プスッ。貞操を、プッククク。守り続けた、人への。フフフッ、職業ですって」
はい、言われました。
隠しておきたかったことを、しかも笑いながら言われました。
言ったテルマリリ様はすぐさま後ろを向いて、手で口を押さえながら笑ってるし。
アルマルデ様は隠しもせず盛大に笑っていた。
「ハハハッ。なんで、魔法使いなのに魔力に補正がかからないんだい! 完全にハズレ職だよ。あー。腹痛い」
「そんな、プククッ。笑うなんて、可哀そう。フー、クスス」
この二人を見て、俺は天を仰ぐのだった。
視界の端。
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