第十二話 せっかく異世界に幼馴染がいるんだから昔を懐かしみたい
よろしくお願いします。
今日中にもう一話投稿したいです。
期待せずに待っててください。
ハーキスタ家を出る前日。
いつもの回復魔法の練習があると思っていたが、突如今日を休暇にすることをアルマルデに告げられた。
しばらくは戻ってこれないから悔いが無いように過ごすようにとの事だった。
だが、暇を持て余していた。
セシアさん以外にすごく仲が良かった職員も特にいないし。
どうしようかと廊下を歩いている。
すると、向かい側からセシアさんに車椅子を押されてリリシアお嬢様がやってきた。
いつもはあまり着飾らないお嬢様だが、今日はとても綺麗な白のドレスを着ていた。
そして、その膝には大きめのバゲットが置かれていた。
「ルヴァン、今日暇なのでしょ?」
「そうですね。何もすることが無くて当てもなく適当に歩き回る程度には暇でした」
「とてつもなく暇なのね」
「果てしなく暇です」
そう俺が返すとお嬢様はクスリと笑って見せた。
いつもの無邪気な笑顔と少し違って、不思議な気持ちになった。
「それなら、あなたに私のピクニックへのエスコートをさせてあげる」
「このような栄誉ある役目を賜り、誠にありがとうございます」
「気にいってもらえてよかった。セシア、ルヴァンに車椅子を押してもらうから、バケットの方をお願い」
「畏まりました」
セシアさんは俺にリリシア様の車椅子のハンドルを明け渡すと、お嬢様からバケットを受け取り後ろに下がった。
「それじゃあ、久しぶりに花の丘に行きましょう」
「分かりました」
花の丘は伯爵家を出て少し歩いたところにある丘なのだが、どういうわけか誰かが手入れをしているわけでもないのに年中色とりどりの花がさいているのだ。
俺がまだ記憶を取り戻す前はお嬢様とよく遊びに行っていた。
花と一緒に蝶や様々な昆虫も住んでいた。
ある日、虹色の羽の蝶を見つけた時にお嬢様が走り出して。
「ふふっ」
「何を笑ってるの?」
「虹色の羽の蝶を見つけた時を思い出しまして」
「!! わ、忘れなさい! あ、あれは、まだ子供だったからで!」
いやいや、八歳なのだから今も子供だろう。
あの時は蝶を捕まえようとして、走り回ってる間にワンピースの裾を踏んでしまい破いてしまったのだ。
しかも、そのワンピースがお気に入りだったこともあり、泣き出してしまったのだ。
でも、そんな泣いているお嬢様の頭上に虹色の蝶が止まって、それを見ていつのまにか二人して笑っていたのだった。
「ほ、ほら。ちゃんと前を見て押しなさい」
「はい、お嬢様」
そして、目の前には一面花で埋め尽くされた丘があったのだった。
春のこの頃はピンクや白などの淡い色の花が多く咲き誇っていた。
丘の頂上付近まで車椅子を押していく。
「ありがとう、ルヴァン」
「どういたしまして」
お嬢様は車椅子から降りると、セシアさんが敷いてくれたシートの上に腰を落とすのだった。
しばらく、俺達は言葉もなく花を見ていた。
この沈黙も心地よかった。
でも。
「お嬢様、どうされたのですか?」
俺はお嬢様の変化の方が気になってしまっていた。
「なにが?」
そう言いながらもお嬢様の笑みは全てを分かっている表情だった。
「なんと言いますか、背伸びしている。そのように思いまして」
「大人っぽく見える?」
「ちょっと、違和感がありますが」
「っちぇ。まだまだだわ」
そう言いながらお嬢様は頬を膨らませた。
更にほんのりと頬を紅くして。
「ねえ、逆に聞くけどルヴァンはなんでそんなに変わったの?」
「変わった、ですか?」
「そうよ。前までは全然頼りなくって、まるで弟のように思ってたのに」
確かに前世の記憶を取り戻す前の俺はお嬢様に手を引かれて、途中でついていけずによく転んでいた。
中身に四十近いおっさんの記憶が入ったのだ。
人も変わってしまうだろう。
「そ、そんなに、変わりましたか?」
それでも、俺の中には八年間お嬢様と一緒にいたボルヴァ―ドの記憶がある。
意識してボルヴァードの人となりを変えないようにしていたのだが。
「変わったわよ」
リリシア様は一呼吸おく。
「ズルい」
「ズルいですか?」
「ズルいよ。だって、今まで弟のように思ってたのに、急に変わって」
また、沈黙が訪れた。
髪をすく風が流れていく。
「ねえ、ボルヴァード」
「はい、リリシア様」
「私ね、素敵な女の人になる。お母様にも負けないような」
「きっとなれますよ」
俺の言葉にリリシア様は俺の腕に抱き着く。
「ちゃんと迎えに来るの、約束よ」
迎えに来る?
会いに来いという意味か?
まあ、それなら。
「分かりました」
俺の言葉にお嬢様は嬉しそうに頷くのだった。




