第十一話 せっかく異世界に来たんだから成長しに行きたい
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次は明日の昼頃を予定してます。
「それじゃ、旅支度しな」
俺が正式に弟子になった次の瞬間アルマルデ様がそう言ったのだった。
「え?」
「え? じゃないよ。あんたはあたしの弟子になったんだ。あたしが王都に戻るならそれについてくのは当たり前だし、なにより教会で名前の登録をしなくちゃいけない」
「そうなんですね」
「確かに育った土地を離れるのは不安かもしれないがね。男なんだからいつまでも伯爵家におんぶにだっこってのもまずいだろ」
まだ、八歳だけどいずれ成人してこの家を出ることになれば、手に職は必要だし、王都のような大きな町の方が働き口が多いし、行くのは当たり前の事だろう。
つまりは、早いか遅いかの問題だった。
それならば。
「分かりました。俺もついていきます」
「そう来なくっちゃ。でも、明日立つのはやめにしとくよ。随分と魔力も使っちまったから休みたいし、ちょうど一週間後のキャラバンに乗っていくよ」
「了解しました」
「そっちもどうするか考えときな」
アルマルデ様がセシアさんに視線を向けていった。
それに対して「はい」とだけ呟いたのだった。
そして、俺は次の日から回復魔法の修行をしながら旅支度をすることになったのだ。
だが、リリシアお嬢様に〈介助〉を使わなくてよくなってしまったので、MPを枯渇させるのに時間がかかるようになってしまった。
そこで、アルマルデ様が時短の策として近くの教会に仕事をしに行くことになったのだ。
朝は五時起きだし、教会の掃除から業務がスタートするのだが、その教会がやたらと広いしで辛いことばかりだった。
だが、いい修行になった。
多くの人たちが教会に助けを求めに来たのだが、ほとんどが高齢者か兵士の人たちだった。
高齢者の人たちには年による関節痛や腰の痛みの所へ〈ヒール〉をかけていった。
兵士は町を囲う塀の周りにでる魔物の駆除でけがをした人たちの傷をいやした。
他にも火事でやけどした人などもいた。
その時、初めてやけどは〈ヒール〉で治すのだと知った。
おかげで、始めて四日目には伸び悩んでいた回復魔法がレベル3になったのだった。
そんなこんなで忙しい日々を過ごしていたある日だった。
「ルヴァン!!」
鬼の形相でリリシアお嬢様が走ってきたのだった。
しかも、まだ松葉杖が取れてないのにだ。
「あ、危ないです。あ!」
案の定、お嬢様は転びかけるがギリギリのところで体を滑り込ませて、下になることができたのだ。
「元気になったからといって、まだ以前のような体ではないのです。危ないですよ」
「なんで」
「?」
「なんで、この家を出てっちゃうの!」
出ていくというのは、アルマルデ様について王都に行くことを言っているのだろうか?
リシャリア様には今までお世話になったこともあり一言あいさつしたが、そういえば、お嬢様には言ってなかったな。
ここ最近忙しかったこともありお嬢様には代わりのお付きがついてリハビリをしていた。
その事もあり、めっきりお嬢様には会っていなく、それと同時にいうのを忘れてしまっていたのだ。
「えっと、俺はアルマルデ様の正式な弟子になったので「ダメ!」
お嬢様は俺の胸に抱き着いて泣いてしまった。
どうしようかと悩んでいるとお嬢様は涙で濡れるその瞳で俺を睨んできた。
「ルヴァンはずっと私の側にいて! どっかに行くなんてダメ!」
うーん。
お嬢様がなついてくれているのは分かっていたが、ここまでとは。
兄の心情としては大変うれしいことではあるが、何分他の使用人たちの視線が痛い。
助けを求める視線を俺が向けると、使用人たちは視線を逸らしそそくさと逃げて行ってしまった。
仕方ない、何とか説得してみるか。
「お嬢様、以前夢について話してくれましたよね」
「うん」
「俺はお嬢様のように困っている人をもっと助けて上げたいのです。そして、それはアルマルデ様の近くで勉強した方がもっとたくさんの人を救えるようになる。そう思ったから王都に行くのです」
「でも」
「お嬢様、もう二度と戻ってこないわけではありません。自分に自信が持てるぐらい立派になったら戻ってきます」
「それでもイヤ!」
せ、説得が難しい。
なかなか折れない。
もう背に腹は代えられない。
昔、甥っ子を返す時に使った、伝家の宝刀を使うしかない!
「リリシア様!」
「なによ」
「俺、帰ってきたら何でもします。だから、今は、ね」
「なんでも?」
「はい。なんでも」
「なんでもって事はあなたができる範囲でってこと?」
「はい。そうなります」
しばらく、お嬢様は考えるとおもむろに立ち上がり去って行ってしまった。
どうしたらいいのか分からず、とりあえずアルマルデ様に頼まれていた蝋や油などの旅に必要なものを屋敷から集めてくるのだった。
そして、集めたものをアルマルデ様に渡しに行く途中だった。
「見つけた!」
お嬢様が紙とペンをもって走ってきたのだ。
「ここにサインして!」
「これは?」
「せいやくしょ」
「誓約書」
ああ、何でも聞くってやつのね。
色々書いてあるが、所詮子供の書いたものだし、何よりアルマルデ様に頼まれたもので手がいっぱいいっぱいだった。
こんな廊下の真ん中では置く場所もない。
早く持って行ってしまいたい。
「それに署名するのは後でではいけないでしょうか?」
「ダメ!」
そうですか。
正直、面倒臭くなってきたので俺はお嬢様に紙を持ってもらいながら、何とか署名することに成功したのだった。
「これで」
「はい、約束は守ります」
「うん、うん!」
この時は知る由もなかった。
この約束で、あんなことになるなんて。




