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第十話 せっかく異世界に来たんだから褒められたい

よろしくお願いします!

今日中にもう一話更新します。

面白いと思っていただけたら、下の星の評価もしていただけると嬉しいです!


リリシアお嬢様に〈介助〉を使ってから更に二週間が経った。

この間の変化として、俺は午前中にお嬢様に〈介助〉、〈介護〉のスキルを発動していた。

最初に魔力が多く必要な作業から済ませておかなくてはいけないからだ。

その後、回復魔法の練習だった。

だが、依然とレベル2から上がる気配はなかった。

〈介助〉を使うとMPが大幅に無くなり、一時間もしないうちに練習は終わってしまう。

そこで、アルマルデ様から魔法以外に薬について学ぶことになった。

俺の持つ〈配薬〉を有効活用するためだ。

そして、俺は気づいてしまったのだ。


薬の種類が少ない。


そもそも、この世界で傷を負えば回復魔法。

毒を飲んでも回復魔法。

大体が回復魔法で済んでしまうのだ。

必要な場面といえば、お嬢様のような魔法が効かない〈原初の毒〉を飲んだ時。

俺のようにMPを大幅に消費して回復したい時。

病気で苦しんでる時の三パターンだ。

それでも、お嬢様の飲んだ毒のようなものはかなり入手困難な代物だからほとんど薬を使う必要もない。

MPもきちんと管理していれば使う機会などほとんどない。

最後の病気に至っては痛み止めや病気の進行を遅らせるものばかりで、完治という概念がなかった。

しかも、医療というものの進歩がない。

こんな世界では薬の必要性も落ちるのは仕方ないことだった。


だが、前世でも一介護士でしかなかった俺に医療レベルを上げることなどできるわけもなく。

断念するのだったが。


〈ノルオンの根の粉〉

血行を促進し新陳代謝を上げる。他に利尿作用、解熱作用あり。

飲みすぎると腹を下すことあり。


配薬でお嬢様に薬を飲ませる時にふとその薬の効能が分かったのだ。


まあ、〈配薬〉のおかげだろう。

前世でも配薬するにあたって、お客様がどんな効果があるものを飲んでるかぐらいは知らなくてはいけなかったしな。


だが、これで簡単に新たな薬を発見できるのではないか。

そう期待をしていた。

試しに屋敷の庭になんとなく咲いていた雑草をいくつか確認してみる。


〈ランゲル草〉

解熱作用がある。服薬するには調合が必要。


〈ミシシリの実〉

胃腸薬になる。効能を出すには調合が必要。


数十個確認して見つけはした。

しかし、残念ながら薬としての効能はあっても、引き出すには調合が必要だった。

今回は能力チートはできないようだった。

でも、調合ができるようになればと思い、アルマルデ様に教えを請いに行った時だった。


「あんたはまずは回復魔法に専念しな。それに、来週には王都にあたしは帰らないといけないんだ。教えてやる時間なんて無いよ」


「え? 帰るのですか?」


「そりゃそうさ。元々ここには仕事で来ただけだったし、聖女の仕事もそろそろ溜まってきてるだろうからね。家も王都にあるし、帰らない方がおかしいだろ」


確かにそうだが、もっと前に教えてほしかった。


「なにしょぼくれてんのさ」


そういいながら、アルマルデ様は俺の頭を乱暴に撫でたのだった。


「それに、調合はできるが、教えてやれるほどじゃないんだよ」


「わ、分かりました」


だが、アルマルデ様は四日で帰ってしまう。

とりあえずは回復魔法に専念することを決めたのだった。


午後からはお嬢様のリハビリの手伝いが主な仕事だった。

リリシア様は最初の事故から手動車いすだったが、驚異の回復力を見せ今では松葉杖で移動をしていたのだった。


「ルヴァン! 始めるわよ」


俺がリハビリ室に入るとお嬢様はとても元気に笑っていた。


「「1,2,1,2,1……」」


そして、リハビリでは手すり歩行が主だったものだった。

俺はそばで、体を支えながら歩行の手伝いをしていた。


「お嬢様、少しペースが速いです。もっと、慎重に、一歩ずつ」


「だ、大丈夫。これぐらいだったら。……あ!」


「おっと」


リリシア様が転びそうになったところで俺は彼女の身体を支えたのだった。

その後も何度も転びそうになるがお嬢様は負けずに頑張っていた。

そして、リハビリ終わりにお嬢様とお茶をする決まりになっていた。

リリシア様は座っている間でもご自身の足を動かしていた。


「ルヴァン、私ね。夢があるの」


唐突にお嬢様はそう話しかけてくる。


「夢ですか?」


思わず俺は聞き返してしまう。


「ルヴァンにはないの?」


「そうですね。とりあえず今は回復魔法のレベルを上げたいですし、もっとMPを上げたい。それに調合とかにも興味はありますね」


「そう、なんだ」


「それで、お嬢様の夢というのは?」


俺がそう聞くとお嬢様は顔を赤くしながらはにかむ。


「ごめんね、今は言えないけど。絶対に叶えるから」


そのひたむきな姿に俺も頑張らないとと思わされたのだった。


◇ ◆ ◇ ◆


「ルヴァン、もう〈介護〉は使わなくていいよ」


アルマルデが王都に帰る前日、アルマルデ様はいつもの検診の場でそう言った。


「え?」


どういう意味か分からなかった。

だが、近くで控えていたセシアさんが走って部屋を出る。

そして、数分もすると部屋にはリシャリア様が入ってきた。


「よろしいでしょうか?」


アルマルデ様の言葉にリシャリア様が頷いた。

そして、アルマルデ様は俺の方へ視線を向ける。


「よく見ておきな、ルヴァン。これから見せるのが最高峰の回復魔法だよ」


アルマルデ様がお嬢様に掌を向ける。


〈魔力ブースト〉発動

〈回復ブースト〉発動


「行くよ! 〈リカバリー〉!」


部屋全体が眩しい光に包まれる。

魔力の流動に微かに部屋が揺れ、その力の強大さを感じる。

数秒もの間続いた眩い光は次第に消えていった。

そして、それが消える。

だが、お嬢様にぱっと見の変化はなかった。

アルマルデ様はお嬢様の足をさわり、確認すると深いため息をついた。


「これで完治したよ。リリシア、よく頑張ったね」


「はい」


そして、アルマルデ様は「行くよ」との一言で、お嬢様と奥様を残して全員が退室したのだった。

その後、セシアさんも連れられてアルマルデ様の部屋に連れていかれた。

部屋はほとんど何もなく、来られた時に着ていた外套が壁に帰られてるくらいだった。


「ルヴァンもよく今まで頑張ったね」


「アルマルデ様が珍しく褒めている」


「そりゃ、褒めるさ。最初に診察したときは、まだ半年はかかると思ってたのに、こうも早く〈原初の毒〉を解毒しちまうとは思わなかったからね」


やはり、解毒は成功していたのか。

もちろん薬による排出もあったが、それ以上に最近はリハビリを頑張って多量の汗を流していた。

そのおかげもあるのだろう。


「お嬢様も頑張りましたから」


「そうだね、あの子も頑張った。でも、あんたがいなけりゃ頑張れなかっただろう」


俺のスキルを使う前はお嬢様は部屋に引きこもり、体もだいぶ弱っていた。

確かに俺がきっかけになったのは間違いないだろう。

でも、前世でもそうだが、きっかけはあっても頑張れる人なんて一握りしかいなかった。

俺もその一握りには入ることができなかった。


「やっぱり、お嬢様はすごいですよ」


俺の言葉にアルマルデ様は満足そうに笑った。

そして、鞄から黒い翼に包まれた十字架を取り出す。


「この十字架は魔王を倒した者かその親族、弟子にしかつけることは許されない」


そう言ったアルマルデ様は俺の首にペンダントをかける。

そして、頷く。


「今日この時をもって、私 アルマルデ・フォルトロンの正式な弟子とみとめ、我が名に連なることを許す」


アルマルデ様のその姿に俺は動けなかった。

いつもは気のいい近所のおばあちゃんくらいにしか思っていなかったが、その姿は誰もが口にする聖女そのものだったからだ。


「はい」


なんとか、俺は言葉をひねり出す。


「なら、あんたはこれから ボルヴァード・フォルトロン だよ」


そう言ったアルマルデ様の顔はイタズラが成功した子供のような顔だった。



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