第九話 せっかく異世界に来たんだから結果を残したい。
ブックマークが増えました!
とっても嬉しいです!
これからも頑張るので飽きずに読んでいただけると幸いです。
「もうそろそろかね」
今日も例のごとく回復魔法を練習していた。
そろそろ、お昼になる頃ふいにアルマルデ様がそうつぶやいた。
その表情に不敵な笑みを浮かべており、その姿はいつの日か見た悪役の魔女のような顔だった。
「な、なにが、でしょうか?」
「なにって、そんなもんあんたの〈介助〉のだよ」
「え?」
あれから練習の成果もありMPも増え更に最大値が倍の61にまで増えていた。
最初の頃は魔力を枯渇させるのに一時間もかからなかったのに、今では午前中の練習時間をすべて使ってギリギリ枯渇させていた。
そこそこ増えてきたのでそろそろ試しにという事だろう。
「なんだい、当初の目的を忘れてたのかい?」
「いえ、そんわけでは。でも、魔力量は足りるのでしょうか?」
お嬢様を助けて上げたい。
その気持ちを忘れたことは無い。
しかし、正直に言えばまたスキルによる魔力枯渇で死の淵に立たされるのではないかと恐怖が俺の中にあった。
しかも、アルマルデ様に修行を付けてもらってからまだ一月(三十日)しかたっていなかった。
一ヶ月前とは雲泥の差ほどステータスが上がったのは自覚がある。
魔力も52にまで増えた。
だが、それでも怖いものは怖い。
「やっぱり見せるんじゃなかった」
「いえ、一つの目標になりましたので」
自分に自信がない理由があり、それがアルマルデ様とのステータス差にあった。
先日、なぜかわからないが俺が 鑑定〈人間〉のスキルを持っているのがアルマルデにバレたのだ。
最初は隠していたことを怒られるかと思ったが特に何か言われることは無かった。
それどころかアルマルデ様は一つの指標として自身のステータスを見てもいいと許可してくれたのだ。
さすがにスキルは許可は出なかったが。
確認してみる。
アルマルデ・フォルトロン 人間族 67歳 聖女Lv89
HP 452/454
MP 15499/15264
筋力 521
知力 4569
魔力 7853
「なに、これ?」
アルマルデ様のステータスを見た時の俺の口から思わず漏れた言葉だった。
魔法職である聖女にもかかわらず筋力やHPですら俺の百倍以上あった。
MP、魔力に至っては五百倍もあった。
「あんたはまだ、十歳前だからもらえないが天職を頂くことができんだよ。その天職のスキルを上げれば上げるほどステータスは上がるんだ。努力しても私ほど上がるかまでは分からんけど」
「ほへー」
「ほら、練習の続きをしな!」
「ほへー」
「いつまで呆けてるつもりだい!」
「は、はい!」
まだ、俺自身が未熟なのも分るが、ここまで自分のステータスが低いと思わず落ち込んでしまった。
しかも、回復魔法のレベルも一週間前に2になってから全く上がる様子がない。
そんな俺が〈介助〉を使っても大丈夫なのか。
それが気がかりだった。
「いつまで、うじうじ悩んでるんだい!」
パン!
「いたっ!」
突如背中に強い刺激が襲い掛かった。
下を向いていて気づかなかったがどうやらアルマルデ様が俺の背中を叩いたようだった。
さすが筋力521。
「ステータスなんかに飲まれんじゃないよ!」
「……? それって、どういう」
「若いもんにはよくある話だけど、筋力が高けりゃ強い、魔力が高けりゃ偉い、なんてのはただの迷信だ。筋力が高くて重いものを持てるようになっても、筋力の付け方がなってないと走るのが遅くなるんだ。戦場では遅いやつが一番狙われるからね」
確かにそのとおりである。
確認できるステータスは大まかすぎて、よくわからないことが多い。
……なんで、戦場?
「それにね。一ヶ月やそこらで何十年も培ってきたステータスを簡単に超えられても困るんだよ。あんたも強くなりたいなら努力するんだね」
「……はい」
「それじゃ、さっそく行くよ」
「どこへ?」
「助けを求めるお姫さんのとこだよ」
いつもはお昼の後にリリシアお嬢様のもとに向かうが、お昼少し前に行くとお嬢様は勉強中だった。
机に向かって必死に家庭教師の話を聞いていた。
だが、彼女は普通の椅子ではなく車いすに座っていたのだった。
「ちょっと失礼するよ」
「アルマルデ様!」
家庭教師の女性が深々と頭を下げた。
その彼女の胸には鳥の翼に抱かれる十字架のペンダントが下げられていた。
これはフォルトニア教の信者が付けている者である。
ついでに、抱かれる翼には様々で、白鳥の翼は平和、グリフォンの翼には善戦の願いが込められているそうだ。
国によっても教会にかけてある十字架の翼も違うそうだ。
話は戻るが、俺が入ってくるとお嬢さま一瞬笑ったように見えたが、すぐに頬を膨らませたのだった。
「ルヴァンは大きな胸がすきなのね!」
どうやら、俺が家庭教師のペンダントを見ていたのを胸を見ていたのと勘違いしたようだ。
ふむ、確かに良い大きさだ。
だが、言わせてほしい。
俺は尻派だ!
「さかってんじゃないよ。くそがき!」
隣にいたアルマルデから拳骨を食らうのだった。
家庭教師はちょうど切りがいいと、授業を終わらせて出て行ってしまった。
そして、ご機嫌斜めのお嬢様と向き合う形になったのだが、すごく睨まれている。
「え、えっと」
俺は睨まれ続けている。
「今日は〈介助〉をかけに」
更に強く睨んでくる。
「あの、だから、その」
お嬢様の瞳に涙がたまってくる。
「す、すみませんでした」
「なんで、謝るの」
「その、お、お嬢様には、気分の、良くない、光景だったかと」
「何が?」
「はい、あの、家庭教師の、胸を、見たのが」
「ルヴァン!」
「は、はい!」
殴られるのではないかと目を閉じる。
だが、いつまでもその衝撃が来ない。
俺はゆっくり目を開ける。
「あのね」
リリシアお嬢様はなぜか耳元まで赤くして、視線を逸らしていた。
「お母様は胸は大きい方だと思うの」
そうですね。
出るとこは出て、引っ込むとこは引っ込んでいる。
とても、いいプロポーションだと思います。
「私も、大きくなれば、お母様みたいに、なると思うの」
大きくなってから私を見ろと。
なるほど。
これはあれだな。
家庭教師の女性は嫌な思いをするくらいなら自分がというやつだな!
「分かりました、お嬢様」
だが、俺はそんな衝動を抑えられないお猿さんじゃない。
お嬢様のような小さなの女の子に欲情するロリコンでもない。
それに、これは前世では立派なセクハラだ。
「二度とお嬢様の前では女性の胸を見ません!」
なぜかお嬢様の掌が俺の前に迫ってくる。
だが、先ほどは殴られなかった。
よく考えてみればお嬢様はやんちゃでいられるが、そんな非道なことをされる方ではない。
俺は笑顔で、何の防御も取らずに、お嬢様のビンタを食らうのだった。
「なんで、そうなるのよ!」
なんで、こうなるんですかね?
「ホント馬鹿だね」
アルマルデ様がうんざりした声でそうつぶやいたのだった。
気を取り直して、お嬢様に向かい合う。
「坊主の魔力量が上がってきたから、そろそろ〈介助〉を使う。問題ないかい?」
「え、ええ」
アルマルデが俺の代わりに話していると扉が叩かれる。
「失礼いたします」
「セシアさん!」
緑色の液体が入った瓶を持ったセシアさんが入ってきたのだった。
最近、回復魔法の修行が忙しかったので全然会えていなかった。
とても久しぶりに会ったように思う。
そして、少し遅れてリシャリア奥様が入ってきた。
「さて、エリクサーもそろったことだし、さっそく始めるよ。リシャリア様もよろしいですか?」
「はい、お願いします」
「それじゃ、始めるよ」
アルマルデ様は俺の肩に手を置く。
その手は優しく、そして俺以上に力がこもっていた。
「力を抜きな」
アルマルデ様はつぶやく。
「はい」
俺はお嬢様の失われた左足へ掌を向ける。
残りMPも45ある。
魔力回復用のエリクサーもすぐそばにある。
大丈夫。
問題ない。
俺は大きく息を吸った。
「〈介助〉 発動!」
そして、変化は一瞬で現れた。
「これは」
「ここまでかい」
セシアさんやアルマルデ様が感嘆の声を上げる。
奥様はリリシア様のもとに駆け寄る。
リリシアお嬢様は自身の左足を触りながら驚いている。
そして、二人で抱き合いながら涙を流したのだった。
「坊や、魔力量は?」
「残り3です」
「午前中に回復魔法の練習していた分も考えれば、消費魔力は40ぐらいかね」
そう考察したアルマルデ様はぶっきらぼうに俺の頭をなでる。
「まあ、よく頑張ったよ。さすが、あたしの弟子だね」
「え?」
はじめてアルマルデ様に褒められた。
「今日はリリシアに〈介護〉使ったら休みな。明日から更にバシバシ行くから覚悟するんだよ、ルヴァン!」
「はい!」




