表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
13/13

第13話 聞こえていた

1日3本ペースで投稿していきます!

 仕込みをしながら、独り言をいう癖がある。


 前世から癖で、食材の効能を声にだしながら整理する。深夜の調理室でも、一人のときはずっとそうしていた。よく同僚にからかわれたりしていたっけ。


「人参…血の巡りを助ける、冷えに効く。葱…気を巡らせる、体を温める。生姜はすでに入れたから…」


「レンコンは?」


 声がした。


 振り返ったら、ライアス様が厨房の入口に立っていた。


 今日はまだ早い時間だった。

 昼前というには早すぎて、どっちかというと朝だった。


 書類をもったまま、普段と同じ表情でこちらを見ていた。


「…いつから、いらっしゃいましたか?」


「葱のあたりから」


(聞こえていた)


「…独り言をきかせてしまいました」


「構わない、というか初めてではない」


「え」


「フィーナの独り言は初めて聞いたわけではない」


 そうだったのか。

 いつもは、他人に効かれても何も感じていなかったけど、


 すこし、照れくさい。


 ライアス様は椅子に座った。


「続けろ」


「え」


 また驚くようなことを


「蓮根は、止血と咳止めに使われていた食材です。それから…精神を落ち着かせる効果があると言われています。」


「はい。興奮しすぎた神経を静かに落ち着かせてくれます」


「興奮…」


「緊張や疲弊が続いているときに有効です。今日のライアス様には---」


「会っている、か」


「…はい」


 ライアス様が少し間を置いた。


「よく分かるな」


「食材の声と顔色で判断しました」


「顔色…」


「昨日より、眉間の力が少しつよく、肩の位置もわずかに上がっています。」


 ライオスは反論もせず、じっと黙っていた。


「…前世でもそうしていたのか」


「はい。患者の表情と体の状態を、同時にくみ取る訓練をうけていたのでそれが癖になりました」


「お前と一緒にいればいるほど、隠せないな」


「すみません」


「謝ることではない」


 ライアスは書類を開いた。さきほどよりも肩の位置が下がっていた。


 私は鍋に蓮根を加えた。


(独り言、聞こえていたのか…)


 恥ずかしいというわけではない。

 嫌ではなかった。


 前世でも、特に効いてほしいと思って言っていたわけではない。

 でも、この人に続きを聞かれたとき、少しだけ嬉しかった。


 蓮根の柔らかい匂いが、厨房に広がっていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

これからは、自分のペースで執筆をつづけていくつもりです。


評価やブックマークで応援していただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ