第13話 聞こえていた
1日3本ペースで投稿していきます!
仕込みをしながら、独り言をいう癖がある。
前世から癖で、食材の効能を声にだしながら整理する。深夜の調理室でも、一人のときはずっとそうしていた。よく同僚にからかわれたりしていたっけ。
「人参…血の巡りを助ける、冷えに効く。葱…気を巡らせる、体を温める。生姜はすでに入れたから…」
「レンコンは?」
声がした。
振り返ったら、ライアス様が厨房の入口に立っていた。
今日はまだ早い時間だった。
昼前というには早すぎて、どっちかというと朝だった。
書類をもったまま、普段と同じ表情でこちらを見ていた。
「…いつから、いらっしゃいましたか?」
「葱のあたりから」
(聞こえていた)
「…独り言をきかせてしまいました」
「構わない、というか初めてではない」
「え」
「フィーナの独り言は初めて聞いたわけではない」
そうだったのか。
いつもは、他人に効かれても何も感じていなかったけど、
すこし、照れくさい。
ライアス様は椅子に座った。
「続けろ」
「え」
また驚くようなことを
「蓮根は、止血と咳止めに使われていた食材です。それから…精神を落ち着かせる効果があると言われています。」
「はい。興奮しすぎた神経を静かに落ち着かせてくれます」
「興奮…」
「緊張や疲弊が続いているときに有効です。今日のライアス様には---」
「会っている、か」
「…はい」
ライアス様が少し間を置いた。
「よく分かるな」
「食材の声と顔色で判断しました」
「顔色…」
「昨日より、眉間の力が少しつよく、肩の位置もわずかに上がっています。」
ライオスは反論もせず、じっと黙っていた。
「…前世でもそうしていたのか」
「はい。患者の表情と体の状態を、同時にくみ取る訓練をうけていたのでそれが癖になりました」
「お前と一緒にいればいるほど、隠せないな」
「すみません」
「謝ることではない」
ライアスは書類を開いた。さきほどよりも肩の位置が下がっていた。
私は鍋に蓮根を加えた。
(独り言、聞こえていたのか…)
恥ずかしいというわけではない。
嫌ではなかった。
前世でも、特に効いてほしいと思って言っていたわけではない。
でも、この人に続きを聞かれたとき、少しだけ嬉しかった。
蓮根の柔らかい匂いが、厨房に広がっていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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