表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界2周目、君はモブ。  作者: 有在ありおり
第5章
48/49

東堂さんでも怖くなることはあるんだな

しまった。


戸積を見張るあまり、逃げるのを忘れていた。


「近頃の若者はさァ、事件現場を見るや否や、スマホを取り出して、やれグロいのが撮れただの何だのと不謹慎なことをするけど、君たちもそういう部類なのかな?」

「え、いや……」

「あーでも、それはないか。今は、えーあいとか、それ以前に異能もあるからな」


勝手に疑いをかけたくせに、勝手に疑いを晴らす三枝(さえぐさ)という刑事。


「じゃあ、なんで逃げなかったんだ? 他の学生は逃げてるのに」


まさか、尾行してましたなんて言えるわけがない。俺が困っていると、東堂さんが、この場に似合わない爽やか笑顔で、


「実は、現場にいた人ーー戸積さん。知り合いなんです。それで、助けに行くかどうか迷って、逃げ遅れてしまったんです」

「あ、そうなの。そりゃあ心配だったね。失敬失敬」


片手を顔の前にやり、ぺこぺこ頭を下げてくる三枝。そのあまりもの態度の変わりように、俺は拍子抜けしてしまう。


「ーーでも、それじゃあ、どうして逃げようとしたんだい?」

「サイレンの音で恐くなってきちゃって」


眉を下げながら、弱々しく笑う東堂さん。彼女は今、なんらかの賞を取れそうなほどだった。


「それに、戸積さんって、こういうのを見られるの、嫌な人なんです。少し見栄っ張りだから、私たちは、知らないふりをしていた方が良いと思って。ね?」


俺たちは、こくこくと頷いた。三枝はぼりぼりと頭を掻く。


「困ったな……まじで善良なパターンか。いや、まだわからんけど、おい升宮(ますみや)。この子達、保護してやれ」

「この子達、ですか? あら」


背後を振り返った三枝。升宮という名前に俺は聞き覚えがあった。そうか、そういえば……。


学校で会った時とは違う、グレーのスーツに身を包んだ升宮さんが、そこにはいた。相変わらずの穏やかな笑顔で、彼女は言う。


「お久しぶりね」




「ごめんなさい、疑うような真似をして。三枝さんったら、いっつもあんな態度なの」


どうやら、三枝は、升宮さんの上司らしい。警察庁刑事局異能力対策課の課長だとか。


「あの、三枝さんって、課長、なんですよね? そんな偉い人がなぜ?」

「人手不足だよ」


俺たちが座っているベンチとは違うベンチに座る三枝が、はぁあ、と溜め息を吐きながら言う。


「俺たちは外回りはしないんだが、なにせ、捜査一課も三課も異能力犯罪でてんてこ舞い。だから、異能力対策課が、異能力と関係ない、比較的()()()事件に駆り出されるってわけだ。わかったか坊主?」

「坊主じゃなくて、白永。白永佳太です」


むっとして言えば、「へーへー」と軽い返事で返される。正直言って、変な人だとは思うが、升宮さんの上司であるなら、ある程度は信用できる。


と。


「三枝課長」

「おう、待たせたな。安藤クン」


木の陰から声がして、ぬっ、と身長の高い男が姿を現した。今までそこにいたのだろうか。


「こちら、“作業班”の安藤クン。君たちを重力で捕縛したのは彼だ」

「安藤です。よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします……」


作業班って、あんまり聞かないけど何を作業しているのだろうか。捜査三課のこともよくわかっていない俺は、とりあえず、差し出された手を握った。


「と、東堂さん?」


背中に重みを感じたと思ったら、東堂さんが俺に寄りかかっている。ぎゅ、と俺の服を握っていた。


「ごめん、佳太君……背中貸して。今更、怖くなってきちゃった」

「あ、ああ」


東堂さんでも怖くなることはあるんだなと、俺は思った。規格外の力を持っているとはいえ、そういえば彼女は、ついこの間まで、普通の女の子だったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ