古巣
三枝の回想と矛盾したのであげなおしました。すみません。
「あーあー、安藤クン、女の子を怖がらせてやんの〜」
面白そうに言う三枝という刑事。俺と握手をした安藤という、刑事? は、表情を崩さずに、たぶん謝罪の意を込めて少しだけ頭を下げてくれた。
「いや、東堂さんが怖がってるのは、この状況にであって、決して安藤さんのせいじゃないですよ」
いたたまれなくなった俺がフォローをすると、安藤は伏し目になった。根が真面目な人なのかもしれない。
「なんだよ、ノリ悪い奴め」
そんな安藤とは反対に、三枝がけらけら笑いながらそう言った。悪かったな、ノリが悪くて。やっぱりこの人、苦手かもしれない。
「三枝さん」
咎めるような升宮さんの声。三枝は、肩をすくめて立ち上がった。
「どういうおつもりですか?」
「どういうつもりも何も。危機意識が欠如しているガキにはうんざりってだけだよ」
そう言って、三枝は、俺の目の前に一枚の紙を差し出した。警察庁刑事局異能力対策課、三枝一也。
ーーというか、三枝って。
その苗字に、俺は聞き覚えがあった。よくある苗字だけど、俺が知っている三枝は……。
「やばい時は知り合いだろうがなんだろうが見捨てて逃げろよガキ。それでも助けたい時は、俺に連絡しろ。高確率で出てやるから」
「あ、ありがとうございます……」
もしも俺が考えている通りなら、この人が俺たちに取っている態度は、正当なものなのかもしれない。
抱いていた敵対心が消えて、俺は素直に礼を言ってしまう。
「ん、まじで似てねえなぁ……」
苦笑しながら、三枝は、俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
似てないって、誰に? そんな愚問は、口にできなかった。三枝が、俺たちに、誰を重ね合わせているのか、わかってしまったからだ。
「今度はちゃんと逃げろよ、佳太君」
俺は頷いた。
「三枝課長」
「さん、で良いよ」
世界が異能に目覚めてから行われた、警察庁再編。それは、大幅な人事刷新だった。
実のところ、升宮も、つい最近三枝を知ったばかりである。彼は、升宮が元居た生活安全局に、突如として赴任してきた人間だ。
市民の安全を守る為、協力をしてきたけれど、出会ってからの日は浅い。完全に三枝を知っているとは言い難かった。
……だが。
「安藤さんでは、無いですよね? 重力操作の異能を持っているのは」
このような重力操作のやり方をする人物には見覚えがある。それなのに、彼女は姿を現さなかった。
どうしてわざわざ、嘘を教えたのだろう。そもそも、どうして“作業班”が……。
「なぁに」
先を歩いていた三枝が立ち止まり、振り返った。
「古巣に恩を売ってやろうと思ってな?」




