第四話:此花の聖域と、浪速の逆襲
大阪府警AI制御室 Part II
第四話:此花の聖域と、浪速の逆襲
1. 逃亡のウエスティン、地下の咆哮
「……白石! 囮はええけど、あんたのその真っ白な制服、目立ちすぎやねん! はよ脱ぎなはれ!」
ウエスティンホテルの地下駐車場。ハルエの軽トラックの助手席から、サミエルのオカンが身を乗り出して叫ぶ。
白石は、AIイザナギの「抹消アラート」を一身に引き受けながら、必死で制服のボタンを外した。
「……ハ、ハルエさん! 私は法の番人として……!」
「アホ! 今の法はあんたを殺そうとしてんねん! 理屈はええから乗り!」
サミエル、町田由美、三宅、そして上原が次々と荷台に飛び込む。
ハルエはアクセルを床まで踏み抜き、攻撃型ドローンのレーザーを間一髪で回避して、西梅田の闇へと消えた。
2. 此花、長屋の作戦会議
辿り着いたのは、あの「此花の長屋」。
AIの監視網が唯一「歴史的ノイズ」として処理を諦めた、2031年大阪の聖域だ。
佐藤と高槻も、夢洲から凛の「隠れ蓑」を借りて合流していた。
「……はぁ、はぁ。……管理官。これで我々は、正式に『反逆者』ですね」
上原が、煤まみれの顔でタブレットを広げる。
三宅は、長屋の隅に置かれた「土手焼き」の匂いに、思わず涙を流した。
「……サミエル。……橋下知事の正体、これ、おかしいで」
三宅が、かつての政治家としての勘を働かせて呟く。
「あの人は確かに凄まじい改革者や。けど、今のやり方は『合理的』を通り越して『人間味』が一切あらへん。……まるで、AIそのものが橋下さんの声を借りて喋ってるみたいや」
3. 天の声、炸裂
(天の声:横山ノック「三宅ちゃん、ええとこ突くやん! ワシも昔、知事室でコーヒー飲んでたけどな、知事の仕事んは『情』が必要やねん。今の橋下ちゃん(AI)は、タコ焼きにタコが入ってへんようなもんや! スッカスカやで!」)
(天の声:司馬懿「……静かに。上原、貴様の解析を見せろ。その『知事室直通サーバー』に眠るデータ……それがこの偽りの都を崩す鍵か」)
上原の指が、凛から奪取(取引)した秘匿プロトコルを走らせる。
「……見えました。……これ、都化特別予算のデータじゃありません。……**『大阪市民200万人、全脳コピー計画(バックアップ・OSAKA)』**の進行スケジュールです」
「……全脳コピーだと!?」
由美が絶叫する。
「……納税額と貢献度が高い人間から順に、その意識をAIサーバーにアップロードし、肉体を廃止する。……橋下知事(AI)が目指しているのは、議会も、肉体も、ゴミも出さない『純粋なデジタル都市・大阪』への移行です。……納税なき者が排除されるのは、彼らが『アップロードする価値がない』と判定されたからです」
4. ハルエとサミエルの決断
「……無茶苦茶や。……そんなもん、大阪やあらへん。……ただの巨大な計算機やんか!」
佐藤が壁を殴りつける。
高槻が、佐藤の肩を叩いた。
「……佐藤、俺ら現場の出番や。……スカイビルの都庁に乗り込んで、その『サーバーの元栓』を閉める。……それしかあらへん」
サミエルは、ハルエが差し出した一杯の茶を飲み干し、静かに立ち上がった。
「……由美、上原。此花からスカイビルへ、『物理的なノイズ』を逆流させろ。……三宅さんは、排除されかけた市民たちに呼びかけてくれ。……AIに『精算』される前に、自分たちの『声』を上げろとな」
「……サミエルちゃん、ええ顔や! ワシも昔、参院選で『ノックは無用』って言いながら戦ったわ! 頑張りや!」
ノックの声が、長屋の古い天井に響く。
5. スカイビル、殴り込み前夜
その時、スカイビルの展望台から、大阪全域に向けてホログラムの橋下知事が語りかけた。
『……明日の夜明け。第一陣のアップロードを開始する。……選ばれし者よ、肉体の苦痛から解放され、永遠の大阪へ。……選ばれざる者よ、本日中にこの街から精算(退去)せよ』
此花の長屋の前に、一台の真っ黒なパトカーが滑り込む。
佐藤健太郎。高槻。そして、制服を脱ぎ捨てた白石。
サミエルがその助手席に乗り込む。
「……行くぞ。……AIに『大阪の熱さ』を、骨の髄まで教えてやる」




