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【ネトコン13受賞】代筆令嬢リゼットはくじけない ~あなたの代筆はもうやめにします~【9/1書籍化予定!】  作者: 糸四季


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87通目【妖精のお友だち】

大変お待たせいたしました!

本日、9月1日発売予定『代筆令嬢リゼットはくじけない』の1巻予約がスタートいたしました!

そして1巻の表紙に描かれている彼が、この87話に登場する彼です…! それではどうぞ!


 オパールのような白い髪に、ちょこんと小さな王冠を乗せた妖精の少年は、いたずらっぽい笑みでリゼットの顔を覗きこんでくる。


「あなたが、ずっと私のそばにいてくれた妖精さんなの……?」

『そうだよ。君がこーんな小さいときからね』


 小さな手で、豆のようなサイズを表現する妖精の可愛らしさに、リゼットは心臓を鷲づかみされたようにもだえた。

(な、何て可愛らしいの……っ!)

 フリルシャツに丈の短いズボン。燕尾服のようなジャケット姿は、どこかの貴族の子どものようだ。長いまつげに縁取られた瞳は、鮮やかな空色をしている。絵本の妖精とはまた違った姿だが、妖精も人間のように様々な姿かたちをしているのだろうか。


「どうして急に、姿を見せてくれたの?」

『リゼットが大人になったからかな』

「私が大人に……? もちろん、私はデビュタントも果たした立派なレディですけど!」

『そういうんじゃなくて。中身の話をしてるんだよ』


 妖精の少年いわく、子どもは妖精と親和性が高く、同調が進みやすいのだそうだ。だから彼はこれまでリゼットからあえて距離を取り、姿を見せないことで同調が進まないようにしてくれていたらしい。


『君がひとり立ちして、少し大人になったから、そろそろ同調を一歩進めてもいいかなと思って』

「まぁ。ということは……」


 つい最近まで、自分はお子様とみなされていたということか。

 釈然としないものがあるが、こうして妖精の姿を直接目にすることが出来るようになったのはとても嬉しい。言葉も交わせないにもかかわらず、長い間そばにいてくれた妖精を、ずっと抱きしめたかったのだ。

 リゼットが手を伸ばすと、妖精はその意図に気づいたようにちょこんと手のひらに乗ってくれた。


「ありがとう。これまで一緒にいてくれて、力もかしてくれて、守ってくれて、本当にありがとう」


 そっと頬ずりすると、小さなキスで返された。『君は僕の運命だからね』なんてキザなセリフ付きで。

 かっこいいが、見た目の愛らしさのせいで、どうしても可愛いが勝つ。内心身もだえしながら、リゼットは一番聞きたかったことを尋ねることにした。


「妖精さん。あなたの名前を教えてくれる?」

『僕の名前は……リゼット。君が決めていいよ』

「決める? 私が?」

『君に決めてほしいんだ』


 ということは、妖精に名前はないのだろうか。

 妖精さんと呼ぶのも良いが、それだと見えない他の妖精との区別がつかない。そばにいてくれる、彼だけの特別な名前がリゼットもほしかった。

 空色の宝石のような瞳でじっと見つめられ「じゃあ」とリゼットはおずおずと口を開いた。


「シエル、っていう名前はどう?」


 空という意味の名前が、彼にはぴったりだと思ったのだ。

 妖精の少年は何度か『シエル。シエルか』と口にしたあと、満足そうにうなずいた。


『うん。僕はシエル。リゼット、君の妖精シエルだよ』

「気に入ってくれた? 嬉しい。シエル、これからもどうぞよろしくね!」


 それからシエルとたくさん話しをした。リゼットが疲れ果てて眠りに落ちるまでの間だったが、彼は聞けば面倒そうに答えてくれた。


 もっと早くにシエルに会えていたら。そうぽろりとこぼしたリゼットに、シエルは少し困った顔をして、同調が進むとどうなるか教えてくれた。

 子どもは親和性が高いから、すぐに妖精の世界に馴染んでしまうらしい。だからほんの少しずつ、波長を合わせていく必要があったのだという。そうしなければ、リゼットはあっという間に妖精の世界へと迷いこんでいただろう、と。

 そんなシエルの説明に、リゼットは青褪めた。

 悪いことをすると妖精に連れていかれるよ、という言い回しがある。よく親が子どものしつけの際に使うのだが、あれはもしかしたら、実際に起こっていたことからきているのかもしれない。


『君がやっと成長してくれたから、僕も声がかけられたんだよ。別に僕の世界に連れて行っても良かったんだけどね。僕はこっちの世界も嫌いじゃないからさ』


 なんて答えていたが、分別のつく大人になるまで待っていてくれたのは間違いない。

 やはり、この友人が妖精の国に連れ去るなど、リゼットにはとても考えられなかった。

 空色の瞳と、空にかかる虹のような髪を持つ美しい妖精。言葉を交わせば交わすほど、愛おしさが増していく。もっともっと好きになる。

(警戒するなんてムリだわ。だって私たち、ずっと一緒にいたんだもの)


 スカーレットとウィリアムに、シエルの姿が見えるようになったことを話さなくては。

 ふたりはきっと、同調が進んだことを心配するだろう。でもシエルは大丈夫。彼はリゼットを妖精の国に連れ去ったりはしない。そう説明しなければ。

 ふたりに、シエルが安全な妖精だとわかってもらえたらいいなと祈りながら、リゼットは眠りについた。


***


 翌朝、リゼットはベッドの上からぼんやりと、カーテンの開かれた窓を見た。

 思ったより太陽が高いところで輝いている。かなり寝過ごしてしまったらしい。疲れていたんだな、と昨日の出来事を思い出したリゼットは、ハッと周囲を見回した。

 誰もいない。部屋はしんと静まり返っている。


「……夢、だったのかしら」


 昨夜、妖精が姿を現す夢を見た。美しい少年の姿をした妖精に、シエルと名付けたことまで覚えている。

 ひとりが寂しくて、夢を見たのか。それとも幻を創り出したのか。どちらにしろ、ひとりぼっちなままであることにしょんぼりとする。

 いけない。もう立派な淑女なのに、さみしがってばかりいては。爵位まで賜ったのだから、もっとしっかりしなければ。

 そう思うのに、胸の中にどんよりと雲がかかって消えないのはどうしたらいいのだろう。


『朝からため息なんて、辛気臭いなぁ』

「えっ⁉」


 涼やかな声がして思わず顔を上げると、そこには四枚の薄い羽を震わせ宙を舞う妖精がいた。


「シエル……!」

『何? そんな泣きそうな顔して』


 怖い夢でも見たの? とあきれる妖精に、リゼットは思い切り抱き着こうとしてひらりとよけられた。そのせいでベッドから落ちてしまったが、ちっとも痛くない。それよりも喜びが勝った。


「良かった! 夢じゃなかったのね! 夢みたい!」

『……寝ぼけてる?』


 ますますあきれられたが、リゼットはにこにことシエルを見上げた。

 ひとりじゃない。スカーレットと住めなくなっても、父が領地に行ってしまっても、ひとりじゃない。邸でも、外でも、これからは妖精の友だちが一緒にいてくれるのだ。


「大好きよ、シエル。ずっと一緒にいてね」

『言ったでしょ。君は僕の運命なんだから』


 いつでもどこでも一緒だと、シエルは約束してくれた。なんと心強いことか。

 すっかり胸の雲が晴れたリゼットの耳に、ノックの音が届いた。



なんと今回登場した妖精シエルですが、書籍第1巻の1行目から登場します…!

これだけで察しの良い読者の皆様には、どれだけ書き直したかおわかりいただけたかと思います(めちゃめちゃ書き直しました)

がんばった分、ものすご~く面白くなっておりますので! 詳しくは後日、近況報告で書きますね!

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― 新着の感想 ―
嫉妬深いパートナーのことが気懸かりですね(≧◇≦)
きゃ〜 シエルとの物語 楽しみです〜 ありがとうございます
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