第二期 第15話:最終審判《余白の未来へ》・中編
そして世界は——焼き直された。
天上の神々は眠りにつき、記録は白紙へと戻され、
学園同士の国家トーナメントも、神界の戦いも、
誰の記憶にも残らなくなった。
けれどただ一人。
ユウト・ナガセだけが、あの旅の記憶を失わなかった。
パン屋の朝。
焼き立ての匂いが町を包み、いつも通りの日常が始まる。
「おはようございます、店主さん!」
制服姿の少女が、にこにことパンを買いに来た。
見覚えのある顔だった。
「……あれ? 俺のこと、覚えてたり……しないよな」
ユウトが思わず尋ねる。
少女は首をかしげて笑う。
「へ? 今日が初めて……ですけど? あ、このクリームパンすごくいい香りです!」
そこに、もう一人の影。
「カレーパン、二つ追加で。……あと、あのバゲット。
なんか妙に気になってな」
セリーヌだった。
目つきは鋭いまま、だがどこかユウトを懐かしそうに見ていた。
アリシアも現れる。
「……初めてのお店なのに、懐かしい匂いがした気がして」
そして最後に、ミラ姉さんが荷物をどさっと持って現れた。
「ちょっと! パンの仕入れに来たの! 変な顔してんじゃないよ!」
——みんな、覚えていない。
でも、どこかで“パン”が繋いでいた。
ユウトはひとり、笑った。
「……そうか、俺のパンが、まだ焼き続けてくれてるんだな」
パンの焼き色は、日々の微妙な変化に左右される。
けれどその“余白”こそが、焼く者のすべてを映し出す。
そして今日も、パンは焼き上がる。
──次回、最終話《余白の未来へ》・後編:パンはまだ焼き途中




