第24話:パンと未来と、選ばれなかった俺の選んだ世界。
――卒業式の日。
学園の空は、ありえないほど晴れていた。
もちろん、それは“偶然”だ。
「ユウト=ナガセ、あなたの功績を称え、名誉総代として卒業証を授与する!」
満場の拍手。
雑用生。追放。笑われ、転んで、でもパン片手に進み続けた。
それが今、“学園の頂点”として、舞台の上に立っている。
「俺に、もう一回歩くチャンスをくれたこの世界に、感謝するよ」
アリシアとセリーヌが並んで見守る。
ミラ姉さんはステージ袖で爆睡してる(でも感動でちょっと涙目)。
「……ありがとう」
式の終わりに、彼はひとことだけそう呟いた。
仲間に、パンに、そしてこの世界に向けて。
卒業後、チーム《強運》の仲間たちは揃って、王立魔導士士官学校への進学を決めていた。
アリシアは主席入学を狙えるほどの実力で。
セリーヌは貴族の推薦枠を蹴って、自ら試験を受けて合格。
ミラ姉さんは“特別腕力枠”という異例の形で合格していた。
ユウトはというと——
「特に決めてない。パンが落ちてる方へ、進むだけさ」
そう言って、軽く笑った。
その夜、ユウトはひとりパン工房を訪れた。
入り口に置かれていたのは、
一冊の手帳と、焼きたてのパン。
そこには、ロゼッタの手書きメモが残されていた。
『未来が不安なら、まずパンを焼け。運は腹から来る。』
──なるほどな、とユウトは呟く。
空を見上げれば、星が流れていた。
「さて……選ばれなかった俺の人生を、そろそろ本気で選んでみるか」
強運のスキルも、パンも、仲間も。
全部が、自分の手でつかんだ“偶然”の結晶だった。
だからこそ、これからの選択は、自分の意志で。
パンを片手に、ユウトは歩き出す。
──そして物語は、次なる“世界”へと続いていく。
《第一部 完》




