第23話:祝勝会と、その夜、俺たちは空を見上げた。
生徒会長リューガ=ヴァレントとの頂上決戦から一夜。
学園内は未だにその余韻に包まれていた。
「お前、ほんとにやっちまったな!」
「学園王者! サインください!」
廊下を歩けば、どこからか歓声が飛ぶ。
教員すら、どこか誇らしげに頷いていた。
ユウト=ナガセ。
かつて“雑用生”と呼ばれ、期待もされなかった男が、
今や“英雄”として讃えられている。
祝勝会の夜。
チーム《強運》の面々が、学園の屋上に集まっていた。
テーブルには、学園食堂特製のごちそう。
そして中央には、ロゼッタ特製の“勝利のパン”。
セリーヌはぶっきらぼうに言った。
「ま、認めてあげてもいいわよ。あんたが強いってこと」
アリシアは静かに頷いた。
「でも、あなたが“頂点に立った”のは、運だけじゃないわ」
「……いや、俺はやっぱり《強運》だけの男だよ」
ユウトはそう言いながら、パンをちぎって口に放り込む。
「ただ、その運が“誰かのため”に働いたとしたら──それで十分だ」
ミラ姉さんは無言で、でかい肉パンをむさぼっていた。
その隣で、ユウトは背中に背負ったままの剣をそっと見つめた。
伝説の装備──《天運の剣》。
異世界に転生して最初に手に入れた奇跡の武具。
これまで戦いの中で直接振るうことはなかった。
だが、決戦の瞬間、剣の柄が“落雷の軌道”をずらし、
リューガの必中攻撃を逸らしていたことを、ユウトだけが知っていた。
「……お前もずっと戦ってくれてたんだな」
ユウトは柄を軽く叩き、そっと笑った。
時折、うんうんと満足げに頷いている。
やがて全員が無言になり、夜風の中で星を見上げた。
──静かで、あたたかい時間。
「ねえ、ユウト」
アリシアがぽつりと口を開いた。
「これからどうするの?」
「さあな。でも……まだ、パン拾って生きていくさ」
セリーヌは呆れ顔で笑った。
「はあ……まったく、相変わらずね」
ユウトは笑い返しながら、小さな声で言った。
「こんな俺でも、誰かの隣にいていいのかな……」
そのとき、風が吹いた。
空を見上げると、ひとつだけ星が流れた。
「ほら、また運が来たわよ」
アリシアがささやいた。
──そして夜は更けていく。




