表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『たった一つのスキル《強運》だけで、異世界の魔王をぶっ倒し、学園の頂点に立った話をしようか。』  作者: Hachiroll
『たった一つのスキル《強運》だけで、異世界の魔王をぶっ倒し、学園の頂点に立った話をしようか。』
14/44

第14話:パンの香りと、名前のない記憶

パン工房からの帰り道。

 俺の頭の中では、ずっとぐるぐると考えが渦を巻いていた。


 


 《観測外の存在》

 《時の神の祝福》

 《ユート=アムネジア》という、異常に似た名。


 


 (……俺は、何者なんだ? 本当に“転生者”なのか?)


 


 月明かりが差し込む中、ふと風に乗って香る“パンの匂い”。

 懐かしい。けど……この匂い、前にもどこかで——


 


 「……ユウト君?」


 背後から声がかかった。アリシアだった。

 何か言いたげな、けれど迷っているような、そんな目。


 


 「私……知ってるかもしれない。“あなたの名前”を、昔聞いた気がするの」


 「え?」


 


 アリシアが差し出したのは、古文書の複写。

 そこには、異世界の最果てで語られていた伝説の記録。


 


 《ユート=アムネジア。世界の終焉に、運命を捻じ曲げた者。》

 《人々の記憶から消え、名もなき英雄として風に溶けた》


 


 その名前を見た瞬間——


 脳裏に、何かがぶわっと押し寄せた。


 


 ——白い部屋。パンの香り。窓辺で笑う誰か。

 その背後で、黒い影が迫る。

 刃。叫び声。そして——


 「……俺……あの時……何を……守ったんだ……?」


 


 気づけば、膝から崩れ落ちていた。

 目の前が揺れる。時間も空間も、軋んでいるような感覚。


 


 「ユウト君!」


 アリシアが肩を支え、俺の名を呼ぶ。

 その声が、ようやく現実に引き戻した。


 


 「……ごめん、ちょっと思い出しかけた」

 「思い出した……何か?」

 「わからない。でも、ひとつだけ確信した」


 俺は立ち上がる。


 


 「俺は……この世界の“予定調和”をぶっ壊すために、生まれ変わってきたんだ」


 


 その瞬間、夜空が軋むような音を立て、星が一つ、砕けたように消えた。


 


──遠く魔王城にて。


 「気づいたか、“ユート”……さあ、次は俺の番だ」


 玉座の影が、立ち上がる。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ