第12話:世界を揺らす《パン》と《王血》の記憶
王都杯、準決勝進出。
チーム《強運》は、王都でも一躍“英雄扱い”となっていた。
だが俺は、浮かれてはいなかった。
……ずっと、気になっていたことがある。
(俺がこの世界に来てから、何かあるたびに助けてくれた“パン”。)
(なぜ毎回、落ちる。なぜ毎回、当たる。なぜ……こんなに、うまい)
その夜、俺はふらりと、王都の裏通りに足を向けた。
“パン工房アミュレット”
いつも学園食堂で食べていたパンと、まったく同じ香りがする店。
店主は、白髪で小柄な老婆だった。
でも、その瞳はどこか“神秘”を感じさせる。
「……あなたね、《運の子》」
「……え?」
老婆は静かに語った。
「このパンには、“世界の記憶”が少しだけ込められてるのよ」
「……は?」
「あなたが食べたパンにはね、ほんの微かに《時の神の祝福》が宿っているの。あなたにだけ反応してるのよ」
(時の……神!?)
老婆の正体は、かつて王国で仕えていた“時術士”。
その力を恐れられ、隠遁していたらしい。
「あなた、きっと“運命を変える存在”。それも、神々すら干渉できない《観測外》の人間」
そして同じ夜。
一方、アリシアは、王宮の書庫にいた。
——開かずの扉の前で、手をかざすと、鍵が光る。
「……やっぱり、私の血……“王族の失われた系譜”だったのね」
彼女の出生の秘密。
そして、封じられた“過去の戦争”と“魔王の真実”——
それらすべてが、
やがてユウトの《強運》と交差する。




