アレクサンダーの想い
結論から言うとこれから会う。
私がグレイス様にお願いすると、グレイス様は怒って廊下にいる第2皇子になぜか「木偶の坊アレクサンダー様を呼んでください!!」と怒鳴っていた。
第2皇子は近くにいた衛兵にアレクサンダーを呼びに行かせた。
正直、アレクサンダーは帝都の自邸にいると思っていたのだが、何故か宮廷に滞在していた。
走ってきた様子のアレクサンダーは、ブラウスシャツをラフに着こなし、チノパンツをはいていた。
すごく・・・男らしい・・・色気駄々洩れ。
乱れた髪が尚更色気むんむん。
直視なんかできるはずもなく。
とにかく、グレイス様はアレクサンダーにメイラに面会する際に、ティアに一緒について行くよう命令した。
まるで皇子妃のようだ。
いや、もうすぐなるのか。
地下牢のメイラが入れられた場所は、四方に魔紋がかかれた壁だけの檻であった。
食事が通る小さな穴があるだけ。
中に入ると、メイラは首から下に真っ白な拘束具を身に着けていた。
拘束具にも魔紋が施されていた。
ティアは不思議に思う。
ココには古の国の人間はいない。
なぜ魔紋があるのだろうか。
魔紋を扱うのは、古の国のひとのみ。
メイラがゆっくりとティアに視線を合わせた。
「・・・聞きたいことがあるの。」
メイラは答えない。
「あなたは、古の国に行ったことがある?」
微動だにしない。
「私に幻覚魔法をかけた?」
少し待つ。
「・・・私に教えたことはすべて本当?それとも嘘?」
メイラは何も答えない。
瞳はうつろになっている。
「記憶を読むわ」
ティアが言うと、メイラがびくっと肩を振るわせた。
ティアは読み取り魔法を使える。
かなりの魔力が必要になるが、記憶を読み取ることもできる。
「・・・私はおねえちゃんだから。だから・・・あいつらから守らないと・・・あいつらが私から奪ったの。・・・だから・・・だから、取り返してるの。私は・・・」
メイラがぶつぶつと繰り返してた。
アレクサンダーがティアの後ろから声をかけた。
「たぶんこれ以上は聞けないだろう。・・・どうする?記憶を読むかい?」
ティアは首を振る。
「・・・リスクが多いからやめておくわ。」
知りたいことはある程度知れた。
私もだてにメイラと過ごしていない。
彼女が私に教えた情報は真実もあっただろうが、半分は嘘だろう。
それに関してはマシアス様に確認すればわかる。
もう一つも、たぶんマシアス様に聞けばわかる。
あとは、マシアス様の居場所を調べなくてはならない。
たぶんだけど、マシアス様は何らかの理由で魔塔から出られない。
幻覚魔法はメイラがかけたのだろう。
ティアとアレクサンダーは地下牢から地上へと昇った。
地下牢の出入り口は広場になっている。
広場は円形状になり、月明かりで少しだけ明るく見える。
「・・・大丈夫かい?」
アレクサンダーがティアの手を握り、聞いてきた。
「大丈夫です。」
ティアの瞳には何も映らない。
いや、映らないようにする。
「ねえ、ティア。いや・・・ルアンて呼ぼうか?」
「どちらでも」
「・・・覚えていてほしいんだ。」
「何をですか?」
「君は一人じゃない。今も昔も。・・・私は君に守られるだけの男じゃない。」
でも。
私は一人ぼっちになった。
大切な人はいらない。
だって、失った時に辛いから。
傷つきたくない。
私は一人で良い。
「私は・・・アローシェン家の私生児だ。父と平民との間にできた。だから魔力はあっても、マナが小さい。しかし、伯爵も夫人も私を実子として育て、愛してくれた。後継者にもしてくれた。」
ティアはじっと目の前のアレクサンダーをみつめた。
「後継者として、努力した。でも、マナの大きさだけは変えられなかった。初めて君を図書室で見た時、熱心に勉強していた。平民の特待生だから。普通の平民の子たちは貴族のいじめが怖くて、放課後に残ったりしない。でも君は必死だった。」
母を守れる力を欲しかったから。
「君は努力を怠らない人だった。貴族たちの嫌味も淡々と返して、挙句自分の仲間にしてしまっていた。私は君にあこがれた。君のように気高く生きたい、と。」
夜なのに。
月明かりだけの明るさなのに。
自分たちの周囲がキラキラして見える。
「大人になって君に再会した。あのカフェで。君は成長して美しくなっていた。髪の色が変わってもその美しい瞳は変わっていなかった。君を追いかけたかったけど、きっと知らないふりをされると思った。だから、待った。偶然君に再会するのを。」
ティアはアレクサンダーから視線を外せなかった。
握られた手も振りほどけなかった。
二人の距離はほとんどなかった。
アレクサンダーの唇がそっとティアの唇に重なる。
ティアは目を閉じた。
頭が真っ白で、何を悩んでいるのかも思い出せない。
ただ胸がドキドキしていた。
二人の唇が離れて、アレクサンダーは自分の額をティアの額にあてた。
“親愛の証”
「私は・・・君が好きだ。愛してる。だから、君に守られるんじゃなくて、背中を預けてもらいたい。私は簡単に君をおいて行ったりしない。・・・君の隣で、君と一緒にいたい。」
私も・・・
一緒にいたい・・・・
二人は月明かりを浴びて抱きしめあった。




