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僕のSNSスキルが世界を書き換える〜傲慢令嬢はミュートされました〜  作者: にんじんさん


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第3話「騙されかけた少女と、新たなターゲット」


 元婚約者のエレナを世界からミュートして、数日。

 道を歩く僕の心は、かつてないほど穏やかだった。

(フンフンフン)

心のなかでスキップをしながら蔓延の笑みで歩いて行く。ときどき体を揺らしながら。僕を罵倒する声も、見下す視線も、あのボタン一つですべてこの世から「非表示」にできる。これほど快適なことはない。最高だ。そう思いながら歩いてた時―


「――お願いです、もう一度だけ待ってください! 父の遺した工房は、絶対に渡せません!」


 大通りから一本入った路地裏から、必死に懇願する少女の声が聞こえた。

 足を止め、そっと様子を覗き込む。

(何があったのだろうか…)

 そこにいたのは、仕立て屋の作業着を着た、栗色の髪の少女だった。泥や煤で少し汚れているが、その態度はひたむきで、なににも屈しない強さを感じた。


 彼女の前に立ちはだかっているのは、仕立てのいい上着を着た、いかにも悪辣そうな肥満体の男――この界隈を牛耳る悪徳商人、ゴードンだった。背後にはゴツゴツとした体格の用心棒を二人従えている。

(卑怯なやつ…なぜこんなことを…。僕の最高の散歩を邪魔するなよな…。

そう顔をゆがませながら聞く耳をたてる。


「ハハハ! 待てと言われて待つ商人がどこにいる、ニーナちゃん。亡くなったお前の父親が作った借金は、今月末が期限だ。返せないなら、その工房と……お前の身柄を、俺の愛人として貰い受けるという契約書があるんでね」

「そんな……! その借金、本当は父が騙されて書かされたものだって、街の誰もが知っています!」

「証拠でもあるのかね? この街では、力と金を持つ俺の言葉こそが真実なんだよ」


 ゴードンは下品な笑みを浮かべ、ニーナと呼ばれた少女の顎を、不躾に指で しゃくりあげた。ニーナは悔しさに唇を噛み締め、涙を浮かべながらも、その手を振り払う。

「離してください!お金は絶対払いません!帰って!」 

「ははっ、そう言ってられるのも今のうちだよ」


「……なるほど。あいつが次のターゲットか」


 僕は路地の陰で、自分の脳内画面を展開した。

 視界の端に現れたのは、ニーナとゴードンの「ユーザー情報」。


【ニーナ(街の仕立て屋)】――ステータス:困窮・実直

【ゴードン(悪徳商人)】――ステータス:強欲・傲慢


 僕はまず、ニーナの名前を見つめ、脳内で【フレンド登録】を送信した。

 もちろん、彼女に通知が届くわけではない。これは僕の側で「僕が大切にしたい人間」を識別するための処理だ。僕の昔の立場からして、ほっとけなかった。


 そして、ゴードンの名前の横にある三点リーダーを見つめる。

 だが、ここでいきなりミュートボタンを押すのは芸がない。せっかくだから、あの大悪党が一番絶望する瞬間に、世界から消し去ってやろう。


「おい、そこの不届き者。女の子を泣かせるのは感心しないな」


 僕はポケットに手を突っ込んだまま、のんびりとした足取りで路地裏へと進み出た。いかにも、アホらしい、バカにしてるような表情つきで。


「あ? なんだお前は。……チッ、アルベイン家の無能令息か。家柄だけの若造が、俺の商売に口を挟むな」


 ゴードンは僕の顔を見るなり、鼻で笑った。僕が剣の才能もなく、実家からも見放されかけていることは、王都の商人なら誰もが知っている情報らしい。

(そう思ってられるのも今のうちだよ?)

心の中で笑いながら近づいていく。


「ルーク様……!? 危ないですから、逃げてください!」


 ニーナが僕を庇うように前に出ようとする。自分の方がよっぽど危険な目に遭っているというのに、他人の心配ができるなんて、本当にいい子だ。


「大丈夫だよ、ニーナ。あんな奴、僕が一瞬で『非表示』にしてあげるから」

「は? ひひょうじ……? 何を寝言を言っていやがる。おい、やっちまえ!」


 ゴードンの合図で、二人の用心棒がニヤニヤしながら鉄の棍棒を構え、僕へと近づいてくる。

 強者が支配するこの世界。まともに戦えば、剣の才能がない僕は一瞬で叩きのめされるだろう。


 けれど、僕には世界そのものをバグらせる、最強のボタンがある。


「……じゃあ、まずはそっちの二人から」


 僕は視線で、用心棒二人の名前の横にある【ミュート】を同時にタップした。



読んでいただきありがとうございます!

傲慢な令嬢はザマァと思いましたね!

評価とブックマークおねがいします!

次回もお楽しみに!

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