第10話新たな領主の誕生
「待て。その税、私が代わりに払おう」
広場に響く僕の声。
兵士たちが一斉に振り返る。天幕の奥で、ハロルド伯爵が不快そうに目を細めた。
「なんだ、その身なりのいいガキは。その顔は…はっアルベイン家の落ちこぼれか。ふん、実家を追放された身で、この私に意見するつもりか?」
「意見じゃない。取引だよ、ハロルド伯爵」
僕は歩を進め、驚く領民たちの間を通り抜ける。
ハロルドの護衛が三名、即座に腰の剣を抜いた。鋭い鉄の光。だが、僕の視線が彼らの頭上を捉える。
カチリ、カチリ、カチリ。
三人の護衛の動きがピタリと止まる。
「……ん? 俺、なんで剣を抜いてるんだ?」
「腹減ったな。詰所に帰るか」
護衛たちは武器を収めると、主君であるハロルドを完全に素通りして、のんびりと歩き去ってしまった。世界からミュートされたハロルドの存在は、彼らにはもう見えない。
「なっ……!? お前たち、どこへ行く! 戻れ、この私を置いていくな!」
ハロルドが椅子から転げ落ちんばかりに絶叫する。
「無駄だよ。彼らにはもう、君の姿も見えないし、声も聞こえない」
僕はハロルドの目の前に立ち、脳内画面の【領地所有権・爵位】の項目をタップした。
『所有者を【ルーク・アルベイン】に書き換えますか?』
【はい】を選択。
カチリ。
その瞬間、ハロルドが懐に持っていたはずの「領主の刻印」と「爵位証明書」が、まるで最初からそこにあったかのように、僕のポケットの中に現れた。
それと同時に、ハロルド自身の名前の横にある【ミュート】を強くタップする。
「がはっ……!? な、何が……身体が……薄くなっていく……!」
ハロルドの絶叫は、急激にボリュームを失い、ただの風の音へと変わる。彼の身体は完全に透き通り、地面に這いつくばったまま、誰にも認識されなくなった。
兵士たちも、領民たちも、呆然と僕を見つめている。
いや、僕ではなく、僕が掲げた「領主の刻印」を。
「本日より、この地の領主は僕、ルーク・アルベインだ。理不尽な税はすべて廃止する」
広場に沸き起こる、割れんばかりの歓声。
ニーナとシャロンが、信じられないものを見る目で僕に駆け寄ってくる。
実家を追放されたはずの僕が、まさか一領地の主、貴族になってしまうとは。
「ええっぁ?領主様?。?」
驚く人たち
「ああ。さて、まずはこの荒れた領地を、僕たちの手で住みやすく作り直そうか」
読んでいただきありがとうございます。
ブックマークと評価をおねがいします。
次回もお楽しみに。




