42. 新たな試練
「えっ? あたし、セドリック様と一緒に暮らせないんですか?」
改めてダリル侯爵家ではなく、別の侯爵家の養女になると聞いたアメリアは、表向きは冷静さを装ったものの、心の中では大喜びしていた。
しかし、即座に居をカルヴァン邸へ移されるという話をされ、思わず素の態度がむき出しになってしまった。
「婚姻まではカルヴァン侯爵家で教育を受けてもらう」
無表情のエドワードの言葉に、アメリアは悲しげな顔を見せながら体をくねらせた。
「でも、あたし、もう十分勉強してますよ?」
『どこがだ』
その場にいたセドリックとアメリア以外の全員が、同じことを考えた。
国王と話している最中に、そのような様子を見せることすら何一つ変わっていない証拠であった。
「王太子妃となるには、まだ学ぶべきことが多い」
アメリアがエドワードと会話をしている最中、セドリックはカルヴァンのことを思い出していた。
セドリックがまだ幼かった頃、王宮の庭で遊んでいて、使用人が大切に育てていた花壇を踏み荒らしてしまったことがあった。
注意した使用人に対し、セドリックは「僕は王子だぞ」と言い返した。
それを聞いたカルヴァン侯爵は、セドリックの前に立ちはだかり、厳しい声で告げた。
「王子であるならば、なおさら人の苦労を踏みにじってはなりません」
その場で謝罪するまで許してもらえず、幼いセドリックは泣きながら頭を下げたのだった。
王子相手に臆することなく、間違っていれば説教をするカルヴァンの恐ろしさを思い出して、セドリックは身震いした。
「あの……、カルヴァン侯爵はいささか厳しすぎるのでは……」
セドリックが恐る恐るエドワードに意見すると、エドワードは強く睨みつけてきた。
「彼に任せるのが、王太子妃への一番の近道だ。今のままでは何十年かかるかわからんぞ」
エドワードの言葉に言い返せずにいると、アメリアが小声で話しかけてきた。
「あた……私、そんなにまだ酷いですか?」
セドリックはこちらにも何も返せず、ただ黙って目を逸らすしかなかった。
セドリックとアメリアが部屋を出た後、アンがお茶を入れ直した。
エドワードとロザリアは大きくため息をつくと、それぞれお茶に口をつけた。
「なんとか理解を得られてよかったですわね。アメリアさんはまだどういうことになるかよく理解されていないようでしたが……」
「まあ……逃げ出したら、その時はその時だ」
エドワードは一気にお茶を飲み干すと、席を立った。
「政務に戻るよ。今夜は早く来なくてはいけないからね」
そう言うと、ロザリアの手の甲に口づけて部屋を後にした。
ロザリアも立ち上がると、アンに着替えを頼んだ。
「少し疲れたから眠るわ。起きたらまた続きを読まなければね」
フェリシアの日記をサイドテーブルに置くと、ロザリアはお腹を優しく撫でた。
少し休んだら、また続きを読もう。
そう思いながら、静かに目を閉じた。
お読みいただきありがとうございます!
次回またフェリシアの日記をはさみます!
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