39. 過去への扉
翌日、ロザリアとエドワードは、ローゼンベルク公爵家の敷地内にある墓地に来ていた。
そばにはロザリアの叔父であり、ローゼンベルク公爵家の現当主でもあるアルフォンスが付き添っていた。
「こちらがフェリシア様のお墓になります」
アルフォンスが指し示した墓石には
【我が最愛の妻 フェリシア・ローゼンベルク 此処に眠る】
と書かれており、夫であるテオドールの深い愛情が見てとれた。
その隣には寄り添うようにテオドールの墓石が並んでいた。
ロザリアは墓石の前に百合の花束を供えると、エドワードと共に胸の前で両手を組み、静かに目を伏せた。
「フェリシア様、あなたが残された日記とお手紙を見つけました。宝石箱に刻まれた言葉は、私たち子孫に向けて残されたものなのでしょうか。あなたが何を感じ、どのように生きてこられたのか、日記を通して知ることをどうかお許しください」
そう言葉を口にすると、ロザリアはお腹の奥がじんわりと温かくなるのを感じ、愛おしそうにお腹へ手を当ててそっと撫でた。
「あなたもお願いしてくれているのね」
三人は墓石に向かって深く頭を下げ、その場を後にした。
墓参りを終えたロザリアたちは、アルフォンスの案内で公爵邸へと向かった。
応接室に通され、温かな紅茶が運ばれてくると、アルフォンスが口を開いた。
「ところで王妃陛下、先日お送りした箱は、無事に開きましたでしょうか」
「ええ。母が持っていた宝石箱の鍵で開けることができましたわ」
「なんと……。まさか、あの宝石箱と同じ鍵だったとは」
アルフォンスは驚いたように目を見開いた。
「中には、フェリシア様の日記とお手紙が残されていました。まだ中身は読んでおりませんが、これから少しずつ目を通そうと思っています」
「そうでしたか。曾祖母様が何を綴られていたのか、私も気になります」
アルフォンスはしばらく考え込むと、静かに続けた。
「実は、あの箱を見つけたとき、なぜ今まで誰も開けなかったのだろうと不思議に思ったのです。けれど、鍵が嫁いだ姉のもとへ受け継がれていたのなら、納得がいきます」
ロザリアは小さく頷いた。
「私も、フェリシア様が何かを伝えようとされていたのではないかと思っているのです」
「もしそうであれば、王妃陛下が見つけられたことにも、何か意味があるのかもしれませんね」
「そうですわね。何か分かりましたら、叔父様にもお伝えいたしますわ」
ロザリアが微笑むと、アルフォンスも穏やかに頷いた。
その後もしばらく歓談を楽しんだロザリアとエドワードは、アルフォンスに見送られ、公爵邸を後にした。
王宮へ戻ったロザリアとエドワードは、ロザリアの部屋でフェリシアの残した箱を前にしていた。
「いよいよだな」
「ええ。フェリシア様が何を想い、どのような人生を歩まれたのか……。とても気になりますわ」
ロザリアは箱を開けると、何冊も重ねられた日記の中から、表紙に一番小さな数字が記されたものを取り出した。
長い年月を経て、表紙にはわずかな傷みが見られたものの、大切に保管されていたのだろう。中の紙は思いのほか綺麗だった。
エドワードが隣に腰を下ろすと、ロザリアはそっと表紙に手を添えた。
「それでは、読ませていただきますね。フェリシア様」
そう呟き、ロザリアはゆっくりと最初のページを開いた。
お読みいただきありがとうございます!
次回はフェリシア視点でお送りします!
「続きが気になる!」と思っていただけましたら、
★で応援していただけると嬉しいです!
ブックマークも励みになります。




