↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『元婚約者様、私が新しいママです』 ~婚約破棄された私が国王陛下に溺愛されるまで~  作者: 萩原 遊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/42

32. 小さな予感

「ロザリア!!!」


エドワードが、焦った様子でロザリアに駆け寄った。


「どうしたんだ。大丈夫か!?」


ロザリアは朦朧とする意識の中、エドワードの方へ顔を向けようとした。


「だ……大丈夫ですわ……。ちょっと立ちくらみを……」


「大丈夫なわけがないだろう! とにかく部屋で休もう。ロイ! すぐに王宮医を寝室へ」


エドワードはそう言うと、ロザリアをそっと横抱きにした。


「エドワード様……重たいですわ……」


「羽根のように軽いよ。最近少食だっただろう、体調が悪かったのではないか? 気づいてやれなくてすまない」


エドワードは悲痛な面持ちでロザリアを寝室のベッドまで運んだ。


「アン、王宮医が来る前に、楽な服に変えてやってくれ」


「かしこまりました」


「すぐに王宮医が来る。着替え終わったらまた来るよ」


エドワードはロザリアの髪を撫でながらそう言うと、ロイと共に廊下へ出た。


しばらくして、アンがドアから顔を出し、着替えが終わったことを告げた。ほどなくして王宮医も到着した。




「……ふむ。貧血を起こされたようですな。本日は安静にお過ごしください」


一通りの診察を終えた王宮医は、診療記録に目を落とし、何やら考え込んでいた。


「おい、どうしたんだ」


エドワードが怪訝な顔で問いかけると、王宮医は彼に向き直った。


「陛下……大変恐れ入りますが、一度外へ出ておいていただけませんか?」


「なぜだ」


王宮医の言葉にピンときたアンは、その会話に割って入った。


「陛下、あとは私にお任せください。後ほどご報告いたしますので……」


アンはそう言うと、ロイに目配せをした。

ロイも何かを察したようで、小さく頷いた。


「陛下、参りましょう」


「あ……ああ……。わかった、また来る」


二人の圧力に、エドワードは仕方なく部屋の外へ出た。


「さてと……」


王宮医は姿勢を整えると、アンとロザリアに目をやった。


「王妃様、失礼ながらお聞かせください。最後に月のものが来たのはいつになりますか?」


その言葉にアンが両手を合わせた。


「もしかして……!」


ロザリアは予感がしていたのだろう、特に驚く様子もなく淡々と答えた。


「もう……ふた月半以上前になります」


「気分が悪くなったり、匂いに敏感になったりということは?」


「最近、よく……」


「ふむ……。王妃様、まだ確かなことは申し上げられませんが……ご懐妊されている可能性がございます」


王宮医の言葉に、アンが横でぴょんぴょん跳ねて喜んでいるのを、ロザリアは制した。


「アン、まだ決まったわけではないのよ。先走らないでちょうだい。……それに、まだ誰にも知られたくないの」


エドワードとの子供ができたかもしれないというのに、ロザリアは浮かない顔をしていた。


「ロザリア様……」


アンは申し訳なさそうに目を伏せた。それからロザリアのそばに近寄り、そっと手を握った。


「ロザリア様、陛下にだけはお伝えするべきです。確定ではなくても、可能性がある限りは、より大事にしていただかなくては」


アンの言葉に頷きながらも、ロザリアの頭にはセドリックが浮かび、不安が広がっていった。


アンがエドワードを呼びに行くと、待ち構えていた彼は勢いよく中に飛び込んできた。


ロザリアはドアの方に目をやると、


「ロイもいいわ」


と、ロイに対して頷いて中へ招いた。


エドワードはすぐさまロザリアの手を握った。


「体の調子は? 何かわかったのか?」


心配そうなエドワードを安心させるかのように、ロザリアは優しく笑った。


「エドワード様……まだわかりませんが、赤ちゃんができたかもしれません」


心配しすぎて、その可能性を考えていなかったエドワードは、目を丸くしてロザリアを見つめた。


「本当か……」


「まだ、わかりませんよ。可能性の話です」


みるみる顔が明るくなるエドワードを見て、ロザリアは先ほどのアンを思い出した。嬉しい気持ちはわかるが、まだ確定したわけではないのだ。


「あ、ああそうか……、えっと……でも、可能性があるのだな、そうか……」


はしゃぎたい気持ちを必死に抑えるエドワードに、ロザリアは思わずくすりと笑った。しかし、その表情には再び暗い影が差した。


「どうした?」


「エドワード様……私は怖いのです。もし……男の子だったら……と。素直に喜べなくてごめんなさい……」


ロザリアの不安に、エドワードやアンはハッとした。


エドワードには、すでに立太子されているセドリックがいる。

しかし男の子が産まれてしまえば、その子を王にと思うものが出てくるかもしれない。


エドワードはまだ若い。いずれ王位を譲る頃には、生まれてくる子供も成人しているかもしれない。


ロザリアは無駄な権力争いに、自分の子供を巻き込みたくはなかった。


「セドリックも……つらい思いをすることになるかもしれません」


エドワードはロザリアを抱きしめた。


「セドリックのことまで考えてくれてありがとう」


そう告げると、ロザリアの両肩に手を置き、そっと体を離した。


「だが私は、セドリックを次期王にすると決めている。もし私たちの間に男の子が産まれたら、皆には改めてそう宣言するとしよう」


エドワードは真っ直ぐロザリアの目を見て、はっきりとそう告げた。

その言葉に、ロザリアは目に涙を浮かべながら、笑顔で何度も頷いた。


「でもできれば君に似た可愛い女の子が良いな」


エドワードが真剣な顔から一転、何かを想像してにやけ出したので、それを見てロザリアも笑ってしまった。


「まだ、性別どころか確定でもないですけどね」


二人の空気をぶち壊すロイのクールな一言に、アンもまた笑っていた。



それから少し眠ったロザリアは、昼前に目を覚ました。

一人の寝室で、体を起こして自らのお腹に視線を向けた。


「ここに……赤ちゃんが……」


そっと手を当ててみる。


「ごめんなさいね。先に喜んであげるべきだったわよね」


ロザリアはほんのりとお腹が温まるような感覚を覚えた。


「気のせいかしら。それとも……本当にいるのかしらね」


ロザリアは、まだ何も変わらないお腹をそっと撫でながら、不思議と確信めいたものを感じたのだった。

お読みいただきありがとうございます!

「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

★で応援していただけると嬉しいです!

ブックマークも励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。