3. 一輪の薔薇
――ロザリア誕生より五年後
王城庭園の一角、丹精込めて育てられた色とりどりの薔薇に囲まれるように、白亜のガゼボが建っていた。
その中では四人の男女が、和やかにお茶を楽しんでいた。
王エドワード、王妃ジュリエット、そしてクリストフ・ヴァロア公爵夫妻だ。
その絵画のような美しい光景に、使用人たちは羨望の眼差しを向けた。
その光景にさらに華を添えるように、小さな二人が薔薇園を駆けていた。
「ロザリア!早く!」
「お待ちください!セドリック様!」
少し後ろを走るロザリアが自分の元へ来るのを待ったのち、セドリック王子は彼女の手を取った。
「この薔薇園に、お母様が僕の為に植えたとびきりの薔薇があるんだ!一緒に見に行こう」
セドリックがそう言い優しく微笑むと、ロザリアは繋いだ手に熱を感じながら顔を赤らめた。
「嬉しいです」
頬を赤らめて自分を見つめるロザリアを、セドリックは可愛いと思った。
四人の親たちはそんな二人を微笑ましく眺めながら、以前から話に上がっていた二人の婚約について話していた。
「クリストフ、婚約させない理由がないと思わないか?」
「……あぁ。まぁ……ロザリアがいいなら」
真逆の表情を見せる父親たちを見て、母親たちはクスクスと笑いながら目を合わせる。
幼い頃から父親に連れられて王城へ来ては、セドリックと遊んでいたロザリアを、ジュリエット王妃は実の娘のように可愛がっていた。
「いつか本当に私の娘になるのね」
ジュリエットは両手で頬を包み込み、喜びを噛みしめている。
エドワードもまた
「これなら我が国の未来は安泰だな」
と満足げに目の前のお茶を飲み干した。
しばらくすると一本の薔薇を手にしたロザリアが近づいてきた。
両陛下に向かい美しい礼を見せる。
「お話中、失礼いたしますわ。セドリック様に薔薇をいただきましたの。ご覧ください、とても美しいでしょう?」
愛しそうに薔薇を見つめる最愛の娘の姿に、クリストフは観念した表情を浮かべる。
エドワードも、五年前の自分の予想通り、愛らしく聡明に育ったロザリアを見て満足そうに頷いた。
この日、ロザリアとセドリックの正式な婚約が結ばれた。
その場にいた誰の目にも、お互いを想い合う二人は、王国の明るい未来そのもののように映っていた。
誰もがこの幸せが、永遠に続くと疑わなかった――。
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