番外編6:とある夜会のあと
「夜会ってのは、疲れるものなんだな……」
開拓地での戦闘では疲れたなんて言わなかったガルドが、馬車でぐったりしている。
わたしも疲れたけど、慣れている分、まだ元気。
「言っていいことと悪いこととか、覚えておくことが多いから」
「そういうのは蛇女たちの領分だからな」
両親に報告したらすぐもどるつもりだったけど、数日は滞在しなさいと言われた。
そして今夜、つきそってあげるからパーティーに出なさい、だ。
ちょうど王弟の誕生日パーティーで、招待客はごくわずか。
王の補佐をしているそのかたは、当然ルタ地域のこともご存じで。
ガルドの話も聞いていたらしく、満面の笑顔で「素晴らしい誕生日プレゼントだよ」と仰った。
魔族についての知識もそこそこあるおかたらしく、ガルドの態度に怒ることもなく、むしろ興味深そうに話していた。
招待客は少ないとはいえ王族のものだから、挨拶はしなきゃいけない。
興味津々の質問は事前に考えておいた受け答えですませたけど。
「……ガルド、令嬢に囲まれてた」
変化したほうがいいだろうと、人間の姿でパーティーに参加していた。
骨の魔族だということは、会場では言わないままだった。
人族に擬態したガルドは、十人全員が美形だと判断する容姿をしている。
だから、令嬢たちが近づいていった。
気づいた両親がすぐなんとかしてくれたけど。
「お前も囲まれてただろう」
「ああ、いつものことだから。慣れてる」
でも今回はダンスの誘いも、ガルドという婚約者がいるから、で断れた。
ガルドは踊れない。
婚約者と踊っていないのに、他の男性と踊るわけにはいかない。
角が立たなくて、とても都合がよかった。
「……」
なんだろう。
なんだか、もやもやする。
わたしは立ち上がり、むかいにすわっていたガルドの隣に腰を下ろす。
それから手を伸ばして、礼服から覗く手の骨をつかんだ。
──変化は解いてるようで、そのまま骨の感触がして、ほっとする。
「やっぱり、ガルドはこの姿が一番」
普段は見えない皮膚には、当然だけど体温がある。
だから、他人との接触は少しだけ苦手。
骨を触っているはずなのに、ぬるまったいから。
でも、ガルドにさわっても、そうはならない。
わたしの体温がうつって、そこだけ少しぬるくなるのが、むしろ、ちょっと嬉しい気もする。
「──そうか」
からん、と嬉しそうな骨の音がするのも、いい。
セレは やきもち を覚え……た?




