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番外編1:上司に報告

「……っと、早かったか」

「ガルド?」


 最近はずいぶん落ちついたので、夕食はみんなでとることが多い。

 今夜も同じで、レーヴィさん、文官さんと一緒だった。

 頑張って誘わなきゃと思っていたけど、むこうから声をかけてくれて、助かった。

 食後に少しお話が、と言うと、わかりました、とうなずいてくれた。

 ガルドさんはこなくてもいいと言っておいたので、伝えなかったけど、きてくれたんだ。

 夜は緊急事態以外では訪ねてこないから、レーヴィさんが腰を上げようとする。


「急ぎの用じゃないから、ゆっくり食べてくれ」


 ガルドさんはそう声をかけて、同席する。

 しばらくすると、文官さんたちはご馳走様でした! と勢いよく言って去って行った。

 途中から喋らずに食べていたけど、早食いはよくないと思う。

 のんびり食べ終わったところで、いつものお茶を用意する。


「ガルドさんもよければどうぞー」


 好き嫌いがあるからどうかなと思ったけど、出さないのも変だし。

 食器を片づけたおかみさんは、好きに使っていいと下がっていった。


「オレには甘すぎるが、茶自体はうまいな」

「じゃあ、蜂蜜減らしますかねー」


 お茶本体が平気なら、食後に一緒に飲める。

 わたしはむこうでもこれを飲みたい。


「……あ、でも、西大陸まで運ぶのって、無理ですよねー?」


 通路は細く、拡張が難しいため、少人数でしか進めないと聞いた。

 当然、荷物も一度に運べないことになる。

 ガルドさんがどこに住んでいるのか知らないけど、道を抜けてもさらに行程は続くわけで。


「茶葉自体を西で育てられればいけるだろ」


 その手があった。

 とはいえ、どこでも育つかは知らないし、勿論、栽培方法もわからない。

 種って……どこで買うんだろう、園芸店?

 実家の庭師に聞けたらいい。


 ……って、うっかり脱線しちゃった。


「実はレーヴィさんに報告がありましてー、でも業務外なので、夕食後にした次第ですー」


 文官さんもおかみさんもいなくなったから、知らせるにはちょうどいい。

 聞かれて困ることではないが、相手は選びたい。

 うっかり知ったら、相手も対処しづらくなるかもしれないし。


「ここの仕事が終わったら、ガルドさんと一緒に行くことにしましたー」


 仕事が終わればレーヴィさんとはお別れでも、今は上司だ。

 公私混合する気はないけど、連絡は必要。

 どこかの職場では、夫婦で勤務は駄目という既定もあるらしいし。


「交際開始報告かと思ったら、一足飛びですね」


 レーヴィさんはあまり驚いた声もなく、そう呟いた。


「ここだと劇場も喫茶もありませんから、交際のしようがないですしー」


 わたしが返すと、くっと背中が曲がりかけて、持ち直す。

 隣のガルドさんの骨が軽くコキン、と鳴った。


「劇場? 喫茶? 西にはないものだな」

「恋人同士の逢瀬って、そういうところに行くらしいですー」


 でも開拓地にはどれもない、買物もできないし。

 最終的に西大陸に行くのは決めているからと伝えたけど、変だったかな。

 というか、交際しますって言うと思われてたって意味に聞こえるけど、どうしてわかったんだろう。


「二人きりで会話するのも、十分な逢瀬ですよ」


 そういえば夜会とかで二人きりになるな、と母に厳命されていた。

 噂が立ったらおしまいだから、って。

 でも、ここでは噂になってないし、逢瀬、になるものなのかな。


「……まあ、それはともかく。おめでとうございます」

「ありがとうございます?」


 よくわからないまま返す。

 ガルドさんは小さく骨を慣らしていた。


「この件はご実家にはまだ伝えていませんよね?」


 それから、ちょっと改まった声で確認してくる。

 伝えるもなにも、その話が出たのはつい先日で、まずはレーヴィさんに報告しよう、と意見が一致した。


「なら安心です。とりあえず、まだ知らせないようにしてください」

「もし反対されたら家を出るだけですよー」


 魔族との婚姻はまだまだ例が少ない。

 歴史上に何件か見つかるが、裏を返せば文献に載るほど珍しいことになる。

 親交はある、くらいの現状で、わたしがガルドさんと結婚することになれば、色々あるだろう。

 魔族のほうは番の感覚だと、人族みたいに結婚であれこれしないかもしれないけど。


「……家族と縁切りをさせたいわけじゃない」


 ガルドさんが強い調子で呟いた。

 でも、駄目だと言われたら、そうするしかない。

 今のわたしは、貴族令息と政略結婚する気はまったくない。

 ここまで育ててもらった恩を仇で返すのは申しわけないから、西大陸で頑張って働いて、養育費は返却できるようにするくらいしか、とる方法が浮かばない。


「私もです。ですから、少し待っていてもらえますか?」


 レーヴィさんにはなにか考えがあるらしい。

 でも、関係ないのに、任せてしまっていいんだろうか。


「どう考えても私が適任でしょう」

「……よろしくお願いします-」

「……頼む」


 ちょっと悩んでいると、続けて言われて。

 あまりに正論過ぎて、二人揃って答えてしまった。

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― 新着の感想 ―
貴族のしがらみがありますもんねー。 セレちゃんとガルドさんの結婚はやはり珍しいのね。 子供って、、、
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