第2話:直販契約と、はじめての青色申告
翌朝、午前9時。
蓮は川越税務署の窓口にいた。手元にあるのは「個人事業主の開業届」と「青色申告承認申請書」だ。
「屋号は『クロキ・アセットマネジメント』、事業内容は……『ダンジョン資源の採取および市場調達コンサルティング』ですか。頑張ってくださいね」
控えを受け取った瞬間、蓮の頭の中で見えないコインがチャリンと音を立てた。
(これで最大65万円の青色申告特別控除を確保。事業に関する出費はすべて『経費』で落とせる……!)
次に向かったのは、大手精密医療機器メーカー『メディカル・コア社』の本社ビルだ。
アポなしで資材調達部部長の神田を呼び出す。
「君ね、ウチは暇じゃないんだ。スライムの魔石なんてゴミ同然で医療機器には使えな——」
神田が言いかけた言葉は、蓮がテーブルに置いた木箱と、その上の【レシート】によって遮られた。
箱の中には透き通った青い魔石が30個。レシートには【純度99.9%】【参考市場価格:45,000円】と印字されている。
「……ッ!? なんだこれは……内部に不純物がない……!? それにこの数値は……!?」
神田の目が丸くなった。
「直販契約を結びましょう。1個4万5,000円で御社に納品します。御社は海外からの輸入関税をカットでき、私はギルドの手数料を回避できる。『Win-Win』の取引です」
「……供給量は?」
「週に100個。月間400個なら確実にお届けできます」
「契約だ! 今すぐ法務を呼ぶ!」
契約締結の瞬間、蓮の頭の中で計算機が爆発した。
月間400個 × 45,000円 = 月収1,800万円。
年間にして2億1,600万円の売上が確定した。
◆
その日の夜。蓮は150円のカップ麺を食べながら、Excelの画面と睨み合っていた。
「……マズいな」
年商2億円オーバー。いくら個人事業で経費を積んでも、最高税率(55%)に余裕で引っかかる。
「早急に法人化(会社設立)が必要だ。税率を法人税の約30%に抑えつつ、自分への役員報酬を低く設定して社会保険料を削る。さらに……」
蓮の目が怪しく光る。
装備費、移動のガソリン代、体調管理のサウナ代……すべて正当な『事業に必要な経費』として計上する。
「待ってろよ、億万長者。まずは来月、法人登記と『マイクロ法人』の二刀流スキームを完成させてやる」




