3ー⑧ どうなの?
「そうなの!?2人とも」
一番驚いた声を上げたマキオが渦中の2人を見ると、一方は顔を薄紅色に染めてうつむき、もう一方は青ざめて額に手をあてていた。
青年れんには彩羽の、彩羽にはれんの一瞬の心身の動揺が伝わり、さらに感情が揺らいだ。
れんは額にかかるやや乱れた髪をよけて耳にかけ、冷静に口を開く。声色とは裏腹に薄くて繊細な眉は険しいままだった。
「芙蓉。いい加減にしなさい。彩羽さんに謝って」
「どうしてよ」
「どうしてもなにも……人前でする話題ではない」
「でも大事なことじゃないの。わたしたちにとっては」
「池のことはそうだけれど、これに関してはきみは関係ない。ぼくの一方的な好意に、彩羽さんは応えてくれているだけだから」
「そうなの!?」
「マキオうるさい」
星合まつりでの夜、テントの中でれんと真夜中まで過ごしたことを芙蓉にそのように誤解されていたとは知らず、彩羽はただただ恥ずかしくてうつむいていた。
かといって、あの夜は肩を寄せ合って手を繋いだだけです。とはこの状況で言えるはずもなく、また言いたくないので沈黙を貫いた。
「で、結局れん。どっちなの?ちぎ……」
「マキオさん。ちょっとお静かに」
れんはひと呼吸をおいてゆっくり話し始めた。彩羽が横目で見ると、彼が握りしめた拳が赤くなっていた。
「繰り返しになるけれど、星合の夜の出来事はぼくと彩羽さんの間であったことだから第三者に話すつもりはない。マキオさんにも心配をかけて申し訳なく思っています。けれど体調は回復してきているし、務めも果たせます」
「そうか。とりあえず夏が終わるまでに取りかかればいいから、ギリギリまでは待ってみよう」
「ありがとうございます」
「彩羽さんと知り合ってからの一連のレンの変化は僕としても興味深いし。僕も旅先で手に入れた資料をこれから調べるから」
マキオはため息をついて、部屋の隅に積まれた年季の入ったパンパンに膨れたバックパックや風呂敷包みを指差した。
「すみません。ぼくもできることは手伝いますから」
「いや、元はと言えば僕の古い身内がやらかしたことだから」
そこから先は生物学の専門的な用語が飛び交い、彩羽にはほとんど内容が理解できなかった。
次話につづく




