第10話 プリンとの再会 ーーキャス視点
入学してから数十日が経ったわ。 私は、すっかりこの生活に慣れたわね!
でも、今日はなんだか騒がしいわね?
「キャス! 今日、転校生が来るらしいです!」
「そうなんだよ。 しかも噂では、魔王の娘って噂なんだよ!」
「え! それって……」
ミリィとラム。 そして驚いているミア。
ーーあらあら。 プリンに会えるのね。 あの子にも、学生服衣装の私を見せてあげられるわね。
私は、教室に向かって歩く。 今日も、私は絶好調よ!
教室に入ると、ルミスがいつもの席で、机に突っ伏して寝ていた。
ミアがほっとしながらも、耳を立てて唸りながら、警戒しているわね。 相当、根に持っているみたいね!
しばらくして、ゲバドン先生が入って来たわ。
「皆さん、おはようございます。 今日は、転校生を紹介します」
「一人は、皆さんご存じのミルフィさん。 彼女は事情があって、しばらく学園を休んでいましたが、今日から復帰します」
えっと? 誰かしら?
「……ミルフィさんは、ご存知の通り、現魔王様の次女であらせられます。 そしてもう一人は、三女のプリンさんです」
ゲバドン先生が、扉の方に視線を向ける。
「二人とも、入ってきてください」
ガラララ。
扉が開いて、二人の少女が入ってきた。
一人は、見慣れた金色の髪のプリン。 もう一人は、初めて見る子だわ。
ピンクがかった、ふわふわの髪。 長い髪の優しい瞳。 そして、ネコミミーー
二人が、教壇の前に並ぶ。 ミルフィが、まず一歩前に出た。
「皆さん、ご無沙汰しておりますニャ。 ミルフィですニャン。 今日から、また皆さんとご一緒できることを、嬉しく思いますニャー」
ぺこり、と上品にお辞儀をする彼女。
次に、もう一人の少女が、ぴょこっと前に出た。
「えっと、えっと……」
ーーあらあら、プリン。 緊張してるのね?
「ぼ、僕は、プリンですニャ! ミルフィ姉さまの妹ですニャ!」
ぺこーん、と勢いよく頭を下げる。 その勢いが強すぎて、彼女の体ごとぐらりと前に傾いて倒れそうになる。
「あわっ……」
「プリン!」
ミルフィが、さっと手を伸ばして、プリンの肩を支える。
ーーさすがお姉ちゃんね。
「ふえっ、ありがとうニャー 姉さま!」
「もう、落ち着いてくださいニャン」
「は、はいニャ……」
プリンが、ぺこりともう一度頭を下げる。
「えっと、ぼ、僕、人前に出るのは慣れてなくてですニャ……。 でも、皆さんと仲良くしたいですニャ! よろしくお願いしますニャー!」
ぱああっと、満面の笑みを浮かべるプリン。
ーーまあ。 なんて、可愛らしいの! 私は、思わず手を叩いてしまった。
プリンが、私の方を見て、尻尾をブンブン振っていた。
「……?」
そのまま、プリンの視線が、私の顔の上で止まる。
ーーあら? なんで、こんなにじっと見るのかしら?
「キャスー!」
プリンが、教壇から飛び降りて私の方へ駆けてきた。
「まあ! プリン!」
「キャスー! 会いたかったニャー!」
プリンが、私の胸に飛び込んできた。 小さくて、ふわふわで、あったかい。
「……久しぶりね、プリン……」
「会いたかったニャー! ずっと、ずっと会いたかったニャー!」
プリンが頬を、ぐりぐりと私の胸に擦り付けてくる。
ミルフィが、ゆっくりと近づいてくる。
「プリン……。 いきなりは、失礼ですニャン!」
「だってだって、姉さま! キャスだニャ! 本物のキャスだニャ!」
「もう……」
ミルフィが、苦笑しながら私に頭を下げた。
「キャスさん、申し訳ありませんニャ。 この子、ずっとキャスさんに会いたがっていてですニャ」
「あら? 私に?」
「初めまして! 私はミルフィ、ニャン」
「こちらこそ、初めましてね。 キャスよ」
プリンは、私の胸からようやく顔を上げて、私を見上げてくる。
「……あれから、結構経ったわよね」
「ニャン。 ……ちょっと、父上がうるさくて、入学手続きが遅れたニャン!」
プリンが、ぷくっと頬を膨らませる。 ーーまあ、頬っぺた、ぷくぷくね?
「……もう、いいニャ。 これから、いっぱい思い出を作るニャ! キャスと、たくさんお話するニャー!」
「あら、嬉しいわ! よろしくね、プリン」
「はいニャー!」
プリンが、ぱあっと顔を輝かせる。 ーーなんて、わかりやすい子なのかしら。
そんな様子を、教壇の上から、ゲバドン先生が苦笑しながら見ていた。
「……皆さん、自己紹介の途中なんですが、続けてもいいですか?」
「あ、ごめんなさい先生〜」
「ご、ごめんなさいニャ!」
プリンと二人で、ぺこっと頭を下げる。
ふと、教室の一番後ろを見ると、ルミスがゆっくりと顔を上げて、こちらを見ていた。
目が合うと、ルミスは、小さく笑っていた。
ーーなにかしら? あの態度。 お陰で、ミアが殺気立っているわよ。
ミルフィとプリンが、それぞれ空いていた席に座る。 プリンの席は、なんと私の隣だった。
「キャスー! お隣だニャ!」
「あら、ほんとね! よろしくね、プリン」
「はいニャー!」
ぴょこぴょこと、嬉しそうに椅子で跳ねるプリン。
ふと、ミアがプリンに話しかけた。
「……あの。 この前は、ありがとうなの。 ……貴方がミートを救ってくれなかったら、ミアは永遠に後悔していたの……」
「ニャン! 当然だニャ。 気にすることニャイニャン!」
よかったわね、ミア。 これで一安心だわ!
ふと、教室の窓の外を見ると、空が、とても気持ちよく晴れていた。
ーー今日も、楽しい一日になりそうだわ。
「ニャ! キャ、キャス! 謝らないといけないことがあるニャ……」
「……? どうしたの?」
「僕の毛が、キャスの服に付着しちゃったニャ……べっとりニャン」
「……もう。 制服は卒業するわ……」




