表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死に戻りクズ勇者は勝手に生きたい〜こんな奴に勇者は任せておけない!  作者: Masa(文章力あげたい)
黄金の鉱山編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/114

第9話 魔王姉妹のお願い ーーアゼッタ視点

 報告を終えた後、私とルミス様はそのまま地下の研究室で、他愛のない雑談をしていた。


 「それにしても、キャスという少女。 あれは何者だ?」

 「さあ? ですが、ただの人間ではないことは確かです」

 「ふむ……」

 「あの服装のままで、実技授業に出たそうです」

 「……着替えずに?」

 「ええ」


 ルミス様が、くつくつと笑った。 ーー本当は無表情に近いこのお方が、こうして笑ってくれるのは、きっと私の前だけ。 それが、少しだけ嬉しい。


 そんな時、研究室の扉が慌ただしく叩かれた。


 「ルミス王! 失礼いたします!」


 扉の向こうから、兵士の声が聞こえる。 


 「……入れ」

 「失礼いたします!」


 兵士が、息を切らせて入ってきた。 白銀の鎧を身につけた、若い兵士。 彼は片膝をついて、頭を垂れる。


 「ご報告申し上げます! ただいま、魔王の次女ミルフィ様、ならびに三女プリン様が、ルミス殿下に謁見したいとのことです!」


 ーー魔王の娘たち。


 ミルフィ。 あの聖女と呼ばれる、ピンク髪の少女。 ルミス様のクラスメイトでもある。


 そしてプリン。 ーー私は、まだ会ったことがない。


 ルミス様は、ゆっくりと頷いた。


 「分かった、応接間に通せ。 すぐに向かう」

 「はっ!」


 兵士が一礼して退出する。 ルミス様は、机に広げていた書物をぱたんと閉じた。


 「アゼッタ、行くぞ」

 「はい……」


 ーー魔王の娘たちが。 心当たりはある。 


 ーーあの件しかない。 武闘大会でのことよね。


 応接間に着くと、扉の前に控えていた侍従が、深く一礼して扉を開けた。


 部屋の中には、すでに二人の少女が待っていた。


 一人は、ミルフィ。 ピンク色の長い髪、聖女のような清廉な雰囲気。 学園で見るのと同じ、静謐な佇まい。


 もう一人は、プリンというのか。


 金色がかった髪を、ふわふわと肩まで垂らした、小柄な少女。 大きな瞳が、緊張気味にこちらを見ていた。


 二人は、私たちの姿を認めると、すぐに立ち上がって深く頭を下げた。


 「ルミス王。 お忙しいところ、お時間をいただき誠にありがとうございます」

 「……気にするな。 座レ」


 ルミス様が、向かいのソファに腰を下ろす。 私は、その斜め後ろに控えた。


 すると、ルミス様が不機嫌そうに私を見た。 


 ーー横に座れ! そう言いたいのだろう。 けれど、私は見ないフリをした。


 ミルフィとプリンが、再びソファに腰を下ろす。 ミルフィが、深く息を吸ってから、ゆっくりと口を開いた。


 「ルミス王。 此度の件について、お詫び申し上げます」


 ミルフィが、深々と頭を下げる。 プリンも、慌てて姉に倣って頭を下げた。


 「武闘大会の最中、オーガが乱入した件。 そして、前国王マルク様が、お命を落とされた件」

 「……」

 「あの場にいたウルトラオーガは、我ら魔王軍から離反しました。 管理が行き届かなかったこと、心よりお詫び申し上げます」


 ミルフィの声が、わずかに震えていた。 彼女もまた、あの日のことを背負っている。


 ーールミス様のお父上、マルク様。


 武闘大会の最中、突如乱入してきたウルトラオーガ。 


 混乱の最中、会場に残っていたマルク様を含む、数名が謎の転移魔法を受けた。


 その結果、マルク様は別国が派遣した、狙撃者ケンタウロスに打たれて死亡。 


 その後、亡骸を第三者に奪われるという惨事まで発生した。 


 そのご遺体は今も見つかっていないーー


 ルミス様は、しばらく無言だった。 やがて、静かに口を開く。


 「ミルフィ。 この件については、もう何度も伝えたはずダ」


 ルミス様の声は、穏やかだった。


 「あれは、お前たちのせいではない。 オーガの管理下からの離反など、どこの組織でも起こり得るこト。 そして、父は戦士として、自らの意思で剣を取った。 誰かを恨むような死に方ではなイ」

 「ですが……」

 「ミルフィ。 お主の妹プリンも、危うくそのオーガに殺されかけたというではないカ」

 「それは……」

 「もう、頭を下げるな。 お前たちは、何度この国に頭を下げに来た? それで十分だ」

 「……はい」

 「……はい……」


 二人が、ゆっくりと顔を上げる。 ミルフィの目には、薄っすらと涙が浮かんでいた。


 ーー本当に、優しい方。


 ルミス様は、父を奪った相手。 いや、相手の管理下にあった魔物の被害者の遺族として、彼女たちを責める権利がある。 なのに、こうして優しく接している。


 ーー私だったら、できないかもしれない。


 ルミス様が、空気を変えるように、軽く咳払いをした。


 「それよりもダ」

 「はい」

 「ミルフィ。 今日来たのは、その件だけではないだろウ?」


 ミルフィが、少し驚いたように目を見開いた。


 「……さすが、ルミス殿下。 お見通しですニャ」

 「お前が、頭を下げに来るだけのために、わざわざ妹を連れてくるとは思えなイ」

 「はい、実は……」


 ミルフィが、隣のプリンに目をやる。 プリンが、ぴくっと肩を震わせて、姿勢を正した。


 「妹のプリンを、理想学園に通わせていただけないでしょうかニャ」

 「……ほう」


 ルミス様が、ふむ、と顎に手を当てる。


 「ミルフィ。 私には、それを決める権利はない」

 「ですが……」

 「学園の入学許可は、ミート学園長の管轄ダ。 私に頭を下げても、意味がなイ。 直接、ミート学園長に願い出るといイ」


 ルミス様の言葉に、ミルフィが、言葉を繋いだ。


 「……ルミス殿下。 実はニャ」

 「ん?」

 「プリンの入学許可は、すでにミート学園長より頂戴しておりますニャン」


 ルミス様が、少し目を見開いた。 私も、内心驚いていた。


 「ミート学園長は、こうおっしゃいました。 『最終的な是非は、ルミス殿下に確認するように』と……」


 ルミス様が、苦笑した。


 ーー要するに。 ミート学園長は、入学そのものは認めた上で、ルミス様の感情を最後に確認したかった、ということ。


 マルク様を失ったルミス様が、魔王の娘をもう一人、学園に受け入れることをどう思うか。 それを確かめてから、正式に入学させるつもりだったのだろう。


 ルミス様は、しばし沈黙した後、ゆっくりとプリンに向き直った。


 「プリン」

 「は、はい!」


 プリンが、びくっと背筋を伸ばす。 ーーこの子、思っていたよりずっと初々しい。 とても魔王の娘とは思えない。


 「学園では、姉のミルフィや、他の生徒たちと仲良くするようニ」


 ルミス様が、優しく微笑んだ。


 プリンが、ぱあっと顔を輝かせる。


 「は、はい! ありがとうございますっ! 僕頑張りますっ!」


 ぺこっと、勢いよく頭を下げるプリン。 その仕草が、まるで小動物のようで、思わず私も口元が緩みそうになる。


 ミルフィも、心底ほっとしたように深く頭を下げた。


 「ルミス殿下、本当にありがとうございますニャン」

 「気にするな。 ただし、ミルフィ」

 「はい」

 「妹のことは、お前がしっかり見てやレ。 学園には、まだ何かを隠している連中もいるようダ。 ……ナナシみたいにナ」


 ルミス様の言葉に、ミルフィが少し首を傾げる。


 「……ナナシみたいですニャン?」

 「ああ。 まあ、おいおい分かるだろウ」


 ルミス様が、ちらっと私に視線を送る。 私は、軽く頷いた。


 ーー水晶玉を割った真犯人。 まだ正体不明の、強者たち。


 プリンを学園に迎え入れることで、また波乱が増えそうだけれど、それも、悪くない。


 ーー明日からの学園が、ますます賑やかになりそうだ。


 「キャス! 待っているニャ! 今、僕が行くニャー」

 「……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ