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死に戻りクズ勇者は勝手に生きたい〜こんな奴に勇者は任せておけない!  作者: Masa(文章力あげたい)
聖女・学園編

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第50話 ケンタロスの実験

 遠くにいるトゥファンは、平原の真ん中に鎮座していた。 


 フレイアは、面白そうにルーブに話しかける。


 「あれれ? 大丈夫? めちゃくちゃ、こちらが不利よね? いいのよ、フレイア様助けてください! って言ってごらん? ホラホラ! 今なら、一食のご馳走で許してあげるからね?」

 「……お前は帰れ。 そして、ヨニーと一緒に待ってろよ」

 「え〜 ……一人で大丈夫なの?」

 「……お前が残っても邪魔なだけだ」


 ルーブは旅芸人衣装の袖をひらりと払うと、木の影から飛び出した。 風の矢が三本、立て続けに飛んでくる。


 ルーブは身体をひねり、宙でくるりと一回転して、矢の合間をすり抜けた。 着地と同時に地を蹴り、また一歩、トゥファンへと距離を詰める。


 トゥファンは、平原の真ん中で弓を構えたまま、目を細めていた。


 「ほう? ……あの矢を避けたか。 面白い」


 彼の声は、戦場に立つ者のそれではなかった。 むしろ、新種の昆虫を観察する学者のそれに近い。 新たな実験動物を、楽しそうに見ていた。



 「……次は二本同時に、軌道をずらしてみよう。 どう動く?」

 

 風が唸る。 二本の風の矢が、それぞれ別の角度からルーブの胴を狙って飛んだ。 ルーブは足を止めない。 懐から取り出した小さなナイフを二本、指の間に挟むと、すれ違いざまに矢を弾き飛ばした。 金属音が二つ、乾いた草原に響く。


 曲芸士の衣装の裾がふわりと舞う。 


 「いいぞ、いいぞ! もっと、楽しませろ!」


 トゥファンは、興味を隠そうともしなかった。 矢筒から新しい矢を抜き、つがえる。 


 ただ速いだけじゃない。 風で軌道を曲げてくる。 まともに正面から走れば、間違いなく串刺しだ。

 

 だが、相手は「実験」をしている。 こちらの動きを観察し、データを取ろうとしている。  


 ーーそれなら、付け入る隙はある。


 ルーブは、わざと同じパターンで身体をひねった。 右、左、右。 トゥファンの矢が、その軌道を読んで放たれる。


 ーーかかった。 ルーブは四歩目で、リズムを崩した。 地面に手をつき、低く滑り込むように身を伏せる。 頭上を矢が通り抜け、はるか後方の森の木にぶつかって砕けた。


 「ほう……パターンを読ませて、裏切ったか。 学習能力があるな」


 トゥファンの声には、わずかな感心が混じっていた。 だが、警戒の色はまだない。 ルーブは、それで十分だった。


 距離が縮まる。 近距離になれば、弓は不利だ。 トゥファンもそれは分かっているのか、ついに弓を捨て、空へ手を上げた。


 「……ようやく実験は終わりか?」

 「君のような被験体は珍しい。 最後まで観察させてもらおう」

 「あいにく、こっちは観察される趣味はない」

 

 ルーブは、跳んだ。 素早い身のこなしで、トゥファンの頭上を飛び越える。 空中で身体をひねりながら、懐のナイフを三本、扇状にばら撒いた。

 トゥファンは、いつの間にか生成していた風で二本を弾き、一本を躱す。 


 だがその一瞬、彼の視線がルーブから逸れた。 ルーブは、マルクの亡骸の傍らに屈み込み、肩で担ぐ。


 トゥファンは、その動きに気づいて視線を巡らせた。 だが、その瞬間、ルーブが彼の足元に向けてナイフを投げる。 


 トゥファンは、それを避けた。 その隙にルーブは後ろに大きく跳んだ。 そして、そのまま身を翻し消えた。

 

 トゥファンは追わなかった。 ただ、彼をじっと見つめていた。


 「……ふむ。 雇い主への報告は、『標的は確かに殺害した。 ただし、亡骸は第三者に持ち去られた』……これでいいか」

 

 彼は弓を拾い上げ、矢筒を背負い直すと、来た道を悠然と引き返していった。 追撃の意思は、最初から無かった。

 ーー彼にとって、依頼は既に完了していたからだ。


 「面白い実験だったな。 ……しかし、亡骸なんぞ持って帰って、どうするつもりなのか? まあ、動かない的に興味はない……」


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