第41話 貴方がいない所で ーーミア視点
そして、武闘大会当時。 ミアはラムにおんぶされて、会場に向かったの。
ーーまったく! なんなの? いつになったら、このごっこは終わるのかしら?
キャス。 あなたなのね! ミアの大切な時間を邪魔して、あまつさえミアの体に触れようとするなんて! あの、変態露出サキュバスなのにーー
そんな時キャスが現れて、ミアに声をかけてきやがったの!
キャスの声なんて、ミアにはただのノイズにしか聞こえないわ。 なのに、どうしてそんなに必死にミアを見つめるの? そんなにミアを観察したいなら、キャスのその瞳、ミアに頂戴? 貴方に直視されるのは、ミアだけで十分なの!
貴方はミアのもの。 他の誰でもなく、ミアだけがあなたのすべてを知り、すべてを愛しているのよなの。
彼女がミス・ファナイなの? 聖女? そんな肩書きでミアを評価しないで!
ミアにとっての聖域は、ただ貴方の隣にある場所だけなのよ?
キャス! 武闘大会なんてくだらない催しのために、ミアの治療を後回しにするなんて。 許されると思っているのかしら? ミアを邪魔するなら消し去ってしまいたいわ。
ねえ? ミアを置いてどこへ行くつもりなの? 貴方のすべてはミアのものなんだから、他の誰かじゃなくて、ずっとミアだけを見ていてなの。
そんなことを思っている間も、貴方はキャスのことばかり見ている。 貴方に見られたいのはミアなのにーー
武闘場の観客席でミアの思考が真っ暗になっている内に、眩しい光がミアの視界を覆ったの。
気がつくと、森の中にいたの。 そして、ミートの肩の上にいたのよ。
「え? ⋯⋯ええ!」
突然のことに、ミアは慌てたの。 さすがに廃人のフリをしている場合じゃないの。
「なんで森? オーガの気配でいっぱいなんだけど!」
「ふふ、それがお主の本性かの。 儂は見抜いておったぞ⋯⋯」
したり顔のミートに、ミアの表情は険しくなるのがわかるの。
「⋯⋯」
「おや? 不機嫌にさせてしまったのう」
ミアのことを揶揄うミート。 ーーなんなの? それなら、ミートもなの。
そんなミアの苛立ちを受け流したミートは、周りを見渡していたの。
ーーもういいや、貴方も見てないし、口調を変えるわ。
「ふむ。 ここはバルデン王国の近所の森じゃな」
「⋯⋯なんで、そんなところにいるのよ」
「⋯⋯なんでって。 ミス・ファナイの魔法じゃよ!」
「はあ? なんで転送されなきゃいけないのよ!」
ミアがやさぐれていると、ミートが思案顔でミアを見ていたの。
「⋯⋯まさか。 記憶がないのかえ?」
「記憶?」
「ミアが最後に覚えている記憶は、いつじゃ?」
「キャスに再会した時だけど⋯⋯」
「⋯⋯」
ミアが答えると、考えこんでしまったの。 それから、彼女はミアに対してこう言ったの。
ーーミア、君の症状は悪化していると。
その瞬間、ミアの意識が飛んだ。 ミアが次に意識を戻すと、血だらけのミートの姿があったの。
「あ、ああ⋯⋯」
ミア! 早く、治療するの!
そんな想いに反して、ミアの足は彼女から遠のいて行ったの。
意味がわからない? でも、矛盾しているけど理由はなんとなくわかるの。
ミートは知りすぎたの、ミアの秘密をーー




