第40話 夜の屋敷にて ーーミア視点
そしてミアはずっと廃人のフリを続けたの。 ミアはみんなが寝ている間しか、行動できなかったの。 本当に最悪な気分なのーー
しばらくの間、ご飯が食べられなかったから、お腹がぺこぺこでぐったりするの。
まあ、こんな生活は慣れっこなのーー
そんなある日の夜。 ミアは忍び足で、屋敷を徘徊していたの。 するとーー
あら、どこからか誰かの話し声が聞こえるわね。 内緒話をしているの?
もしそうだったら、貴方だと嬉しいなの。
でもね? ミアには隠し事なんてしないでほしいの。 だって、貴方のことは何でも知っておかないと、私が安心できないもの。
そう思っていたのに、実際は違ったの。 ラムがミートに話し掛けていたの。
ねえ? ラムはミートに何を話そうとしているのかしら? ミアに教えてくれないと、嫉妬で何をしでかすかわからないの。
「ねえ、ミートさん。 聴きたいことがあるんだけど⋯⋯」
「どうしたんじゃラム? ⋯⋯内緒話かえ?」
「うん。 お姉ちゃんが知ったら、すぐにミアの前で話すからね」
ーーふふっ、そんなに必死に隠そうとしなくてもいいのよ? どこで誰が何を話そうと、全部ミアの脳内に記録されているの。 ミアに内緒でこそこそなんて、そんな可愛らしいこと、いつまで続けられると思っているのかしら?
ねえ、そのラム? 何を企んでいるの? ミアが直接お話しして、その口を一生閉じさせてあげましょうか?
「ミアに聴かれたらマズイのか⋯⋯ 言ってみなさい」
「あの子って実は聖女なんだ。 ⋯⋯おかしいよね? どうして村人たちや家族に、秘密にしてたんだろうね⋯⋯」
ーーああ、そういうことだったのね。 ラムはミアの正体を知ってしまったのね。
でも、そんなことわざわざミートに話して、一体何がしたいのかしら?
村や家族に秘密にしていたのは、ラムが一番よく知っているはずでしょう?
ーー邪魔なノイズは消さないとね? 貴方をミアから引き離そうとするような虫は、一匹残らず排除してあげるから安心してなの。
ミアは服に隠していたナイフを取り出して、前に出ようとしたわ。
ーーでも、その前にミートがこう言ったの。
「⋯⋯ラム。 聖女であることを打ち明けても、時には逆効果になることもあるのですよ」
その、ミアの心中を見抜かれた発言に、ミアの心がドキドキしたの。
「え? でも、聖女って神聖な存在なんだよ? きっと打ち明けたら、見る目変わるよ? ⋯⋯ほら、ざまあってあるじゃない? お姉ちゃんがいつも読んでくれる本にそんな内容があったもん!」
神聖? そんな綺麗な言葉、ミアには無縁なの。 ミアが聖女として崇められることを望んでいるとでも思っているのかしら? そんな評価よりも、貴方の瞳にミアがどう映っているかの方が、何万倍も重要なのよ?
貴方の周りに、そんなくだらない本を読んでいる子がいたら。 ミアが少し「教育」してあげたほうがいいかもしれないわね? ねえ、ミアのこと、もっと独占したくなってきたでしょう?
「その場合も時にはありますが、それは物語なんです。 それがミアに当てはまるとは限らないんですよ。 ⋯⋯むしろ、悪化する可能性があるのです」
それは、ミアが回復魔法を使った時に思っていたことを、ミートは続けて言ったの。
「聖女だとバレたら家族や村の人に、もっとサンドバッグにされるかもしれなかったから⋯⋯」
「そんな! 酷いよ⋯⋯人間って、最悪なんだね⋯⋯」
ラムがショックで俯いてしまったの。 それをミートが優しく抱きしめていたわ。
ミアはその様子を見て、手元のナイフを服に戻して、その場を去るの。
ーー別に、感傷に浸っている訳ではないの。




