第39話 勝手なことしないで! ーーミア視点
ミアは少しだけポカポカした。 けれど、そんなミアが聞いたのは、意味不明な勝手につけられた設定だったのーー
虚構人格。 そんな言葉でミアを片付けようっていうの?
ああ、頭が痛いわ。あの子たちがミアの耳を、ミアの魂を、勝手な理屈で解剖しようとしているのが聞こえるの。
ミアがどれほど貴方を想い、この身を削ってまで貴方を監視し、貴方が迎えにきてくれるのを待っていたか。
その重みをあの子たちに何がわかるというのかしら。 ミアを壊したのは誰でもない、ミアの孤独と、貴方への執着そのものなのよ。
ねえ、ミアが倒れても、あの子たちの言葉なんて信じないで。 ミアは貴方のものなの。 たとえ意識が途切れても、ミアの心は貴方だけを捉えて離さないの。
「ミアちゃん? 変態じゃないお姉さんがご飯持って来たよ!」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯やっぱり、無反応か⋯⋯」
誰の声が聞こえるの? 遠くで誰かが騒いでいるけれど、ミアには関係ないわ。
だって、ミアの視界には今、貴方しか映っていないもの。
あの子たちが何を言おうと、ミアの心は貴方のそばにあるのよ。 ねえ、どうしてそんなに悲しそうな顔をするの? ミアがここにいるのに、どうして他の誰かを探すような目をするの?
貴方の匂い、貴方の温もり。 それだけがミアを繋ぎ止めているの。 ねえ、早くミアに触れて、ミアをあなたで満たしてほしいの。
「ミアの精神救出作戦! 開始」 『おお!」です!」
空から羽ばたく音が聞こえるわ。 ふふ、やっぱり貴方はミアを見捨てられないのね。
そんなに必死になって、ミアの心を探しに来てくれたの? 貴方がミアのために空を駆けてくれるなんて、これ以上の喜びはないわ。でも、そんなに遠くへ行かないで、ずっとミアのそばでその羽を休めていてほしいの。
ミアはここで待っているから、早くミアを見つけて抱きしめて。 貴方だけがミアの救いなの。
え、どこへ行くの? キャスと一緒に行く? 理由はなんなの?
ーーキャスがこの物語のヒロインだから? ふざけないで! 貴方のヒロインはミアなの!
キャス。 あの女が、貴方を運んでいるの? ミアの愛しい貴方を、あの品のない女の視点で空を飛んでいるなんて、絶対に許さないわ。
頭が、焼けるように熱いわ。 キャスがヒロインなんて、考えただけで吐き気がするの。
ねえ、今すぐその女を突き落として、ミアのところへ戻ってきてなの。
「⋯⋯ミリィお姉ちゃん。 大丈夫? 私も運ぶよ?」
「ラム。 これぐらい楽勝です! むしろ足りないぐらいです!」
「オホ。 若い子はよいの! 儂にはとても持てないぞよ⋯⋯」
ミリィ。 ミアを背負って、そんなに嬉しそうにしているのね。
ミリィの体温が背中越しに伝わってくるのが、ミアにはわかるわ。 でもね、その温もりはミアと貴方だけのものなのに、どうして他の誰かに触れられているの?
虚ろな瞳の奥で、ミアは今、ミリィのその無防備な首筋をずっと見つめているのよ。
早く二人きりになりたいわ。邪魔な子たちをみんな消して、貴方とミアだけの世界へ行こう? ねぇ、ミアを独り占めしてなの。
「⋯⋯ミア、あやしいよね?」
ーーだから、気づかなかったの。 ラムにマークされてたことに。




