第38話 新たな意識の芽生えーーミア視点
「⋯⋯う~ん。 貴方は誰なの?」
「おや? こちらの子はネコミミかえ? 珍しいの⋯⋯」
ミアの寝顔を優しくみるミートが何気なく呟いたの。
「やっぱり珍しいんです?」
「当然じゃ! あのミミの部分には魔力タンクが備わっているんじゃ! 立派で逞しいネコミミ! 羨ましいぞ!」
「ミアが羨ましい? ⋯⋯こんなもの、いらない! こんなものがあるせいでミアは苦しんでいるんだよ! こんな耳なんて、根元からちぎり切ってやる!」
そう言うと、ミアは近くに置いていたナイフを手に取る。 そして、ネコミミにナイフを向ける。
ーーでも、これは本意じゃなかったの。 内心、ミアは焦っていたの。
やめて、ミア! そんなものに触れちゃだめ! そのナイフを今すぐ捨ててなの。
その耳は、ミアが一番愛している場所の一つなのよ。 そんな大切な部分を傷つけるなんて、ミアが絶対に許さないわ。 ミアの体は貴方のものなんだから、勝手に壊そうとしないでミアーー
「そんなに欲しいならあげる。 こんなものなければいい⋯⋯こんなものがあるから、ミアは蹴られて、殴られて、差別されて、死にたくなるんだ!」
「ミアちゃん! 落ち着いて、ね?」
「なによ? 変態露出お姉さん? そんな紐下着で言われても説得力がないよ」
「変態露出ですって! この私がゆう君と同じだって言うの? ⋯⋯わかったわ、今すぐ服を着るから待ってて! ⋯⋯私はアイツとは違うんだから!」
「キャスさん。 この状況でその行為は滑稽です⋯⋯」
ミアが自暴自棄になっているのに、キャスは何をしているの?
あはは、結局服を着たのね。 ご丁寧にグローブまでして貴方に対して、ウケを狙っているのかしら?
でも、そんなに慌てて着飾っても、あなたのその浅ましい心までは隠せないのよ。
ミアの耳を傷つけようとしたこと、そしてそんな格好でミアの前にいたこと全部、あなたの罪として刻んでおくから。 ミアの大切な耳に触れようとするなんて、万死に値するわ。
ねえ、あなたのその服、ミアがハサミで切り刻んであげようか? あなたなんて、ミアの隣にいる資格も価値もないの。
そんな時、ミートがミアに優しく話しかけてきたの。
「⋯⋯ミアよ、その力は要らぬものではない。 力は必要だから生まれる。 つまり、お主は使命を持って生まれたのじゃ!」
「うるさい! ミアの境遇を知らないくせに! 勝手なことを言わないでよ!」
「⋯⋯チカラ? ワタシニモイミ⋯⋯があるのかなぁ?」
「あ! ラムが、戻ったです!」
「ラム、よかったわね」
ちょっと? 今はミアのターンなの! ラムが目立ってどうするの! ここはミアが説き伏せられて、涙を流すシーンなのに!
「⋯⋯それにしても、ミアはこんな激情を抱えていたのね」
キャスが、ミアにしか聞こえないほどの小さな声で呟いたの。
そうよ、これがミアの本当の姿なの。 今まであなたにだけ見せていた優しい聖女の仮面は、ただの守りのための鎧に過ぎないわ。
こんなに汚くて、歪んでいて、誰にも見せたくなかったミアの本音、それをこんな奴らに暴かれるなんて、本当に不愉快でたまらないの。
あの子たちがミアを理解したような顔で同情するたび、心の中の黒い霧がどんどん膨らんでいくのを感じるわ。
ねえ、ミアの激情に触れて、貴方は怖がってしまったかしら? でも、どんなに狂っていても、ミアのすべては貴方だけのものなの。
そんなミアの心に、またミートが諭してきたのーー
「たしかに過去は変えられない。 じゃが、今からは変えられる。 ⋯⋯つまらない昔など捨て置いて、今この時を一緒に生きようぞ! たった一回しかない今日と言う一日を。 今日からは、儂らがお前の支えになるからの? そうじゃろ、キャス」
「当たり前だわ! 変態露出じゃない私が優しくしてあげる~」
「ミアちゃん! 私やラムもいるです! ⋯⋯ってあれ? 倒れたです」
「⋯⋯きっと、気力を使い果たしたんじゃの⋯⋯」
別にミートの発言で、安心して気を失った訳ではないの。 だって、ミアは貴方のための『ミア』なんだから。
でも、ミートの言葉になぜか、心がポカポカしたのよーー




