第34話 彼女の誤算 ーーキャス視点
出口で待ち構えていた前国王は、私の技で吹き飛んだわ。 しかし、目を覚ましたミートから聞かされた話は、私の予想を裏切るものだったわ。
私は、その事実が信じられなかった。
呆然とした気持ちで、ラムの上に乗っているミアを見る私。
そんな私のことを、ミアは不気味な笑みを浮かべて見ていた。
「ギヒ。 ⋯⋯ああ、みんなにバレちゃったの。 ミアが悪い子だって」
「そんな⋯⋯嘘よね?」
「ギヒヒ」
ミアは私たちを見渡していた。 その様子は、相手の反応を面白がる子供の様だわ。
だけど、ミートを見ると、口元の表情を変えた。
「⋯⋯この女は、ミアを疑ってたの。 邪魔だから刺したの」
「儂としたことが不覚じゃった⋯⋯」
「でも、それも無駄だったの。 ミアは失敗したの⋯⋯」
ミアはプリンを見た。 正確には、プリンのネコミミーー聖女である証を見ていた。
「ニャン。 僕が治療したからニャー」
「金髪ネコミミの存在はイレギュラーなの。 おかしいの⋯⋯誰かが、世界に介入しているの⋯⋯」
ミアは、体をモゾモゾと動かし始めた。 でも、ラムがミアをしっかり固定しているため、動けないでいた。
するとミアは、オドオドしながらラムを見つめる。
「⋯⋯ラム。 私を降ろして、なの」
「嫌だけど?」
「⋯⋯どうしてなの? ミアはもう大丈夫なの」
「降ろしたら、悪いことするでしょう?」
ミアを諭すように問いかけるラム。 ミアは、狂乱しながら肯定する。
「当然なの! ここでミアが大暴れする展開なの!」
「じゃあ、駄目」
「あれれ? 脚本がミスっているの? ⋯⋯後で説教しないと」
願いを却下されたミアは、一瞬普通の表情に戻ったけど、すぐさま不気味な笑みを再開させる。
「⋯⋯ギヒヒ。 想定外なの。 ⋯⋯まさか、ミアの正体を先に気づかれていたなんて⋯⋯ これじゃあ、展開に盛り上がりがかけるの⋯⋯読者もガッカリなの」
ミアが訳の分からないことを呟く。 そんな中、ミリィは彼女の服の中を探り始めた。
「足元に、血の付いたナイフがあったです!」
「ミアのミステリアスゾーンに触れるなんて、なにを考えているの? ミアに触れていいのは⋯⋯アフゥ。 どこを触っているの? 痴漢姉妹なの! 共同作業でミアを犯すつもりなの!」
そんなミアの様子にお構いなしのラム。 まったく離すつもりはないらしいわね。
一方ミリィは赤面しながら、隠し持っていた武器を回収していく。
「シクシク、ミアは丸裸なの。 こんなのあんまりなの⋯⋯」
泣き真似をするミアの目には、涙がまったく流れていなかった。 ずっと暗い目で私たちを観察している。
そんなミアに私は近づいた。 ミアは驚いたのか、私のことをじっと見ていた。
「⋯⋯なんのつもりなの?」
「ミア。 絶対に救ってあげるから!」
「⋯⋯救う? なにを言っているの? ミアが救われる道は、お前たち変態集団を倒すことなの⋯⋯」
ミアが私のことを睨む。 彼女の目には、私たちが敵にしか見えてない。
「⋯⋯ミアはミートを傷つけたの。 もう後戻りはできないの⋯⋯」
「できるわよ! だってミートは生きているから」
「⋯⋯そんな訳ない! 私はミートに嫌われたの!」
「ミアよ⋯⋯ヤンチャしたぐらいで儂は、ミアを見捨てないぞい!」
「そんな! ⋯⋯ミアやり直せるの?」
「⋯⋯そうよ。 だから安心して」
「ごめんなさい。 ありがとう⋯⋯」
ミアの目から、一筋の涙が溢れ落ちた。 そして、ミアは気絶してしまった。
◇◇◇
平原地帯まで吹き飛んだ前国王は、怒りに震えていた。 変な物体に自ら当たったことを恥じているようだ。
「⋯⋯たしか、名前をキャスと言ったか? ⋯⋯あのクソサキュバスめ! ぶっ殺してやる!」
「キャスを殺すだと? ⋯⋯させる訳ないだろ? マルク」
「⋯⋯貴様! 我の名前を呼び捨てにするとは⋯⋯何者だ!」
「⋯⋯俺に名前なんてない。 『ナナシ』これが俺の名前だ」




