第33話 ミートを刺したのは誰? ーーキャス視点
私が放った渾身の新技は、ヒョロヒョロと奴の元へ向かっていく。
当然、そのハート形の物体は奴に気づかれた。 その物体を見た反応はーー
「クッ! ハハハハ。 なんだそのヘナチョコ物体は? それでどうするつもりだ!」
「ですよね⋯⋯」
やっぱり、そう見えるかな? 当然、避けようともしなかった。 奴は私に見せびらかすように、剣を物体に向ける。
「ふん、こんなもの切り刻んでやるわ!」
奴はまるで遊戯のように、剣でハートを攻撃した。 しかし、攻撃は空振り。 すぐさま、体勢を整えて追撃するも空振りだった。
なぜか物体はあるのに命中しない攻撃に彼はイラついていた。
「チッ。 ただのデコイかよ⋯⋯」
彼が油断したその時、ハートが大爆発した!
「ぬわ!」
森の出口を通せんぼしていた彼を、遠くへ吹き飛ばしたわね。
これには、ずっと静観していたミリィとラム、そしてプリンが驚いていた。
「キャス! すごいです! デコイ人間が吹っ飛んでいったです」
「名前がラブラブ光線なんだね? ところでなんでそんな名前なの?」
「さすが、ご主人様ニャ!」
私にみんなが駆け寄ってくる。 さすが私、みんなのヒーローだわ!
私が出した新技。 破壊力抜群で遠距離でも追えるホーミング仕様、どんな形にも変えることが可能よ。
そんなことを考えていると、ミリィが背負っているミートが目を覚ました。
まあ、あんな大きな爆破音してたら目を覚ますわね。
「⋯⋯お、おう。 勇者よまだ朝は早いです⋯⋯違う早いのじゃ」
「ちょっと! 勇者じゃないわよ? 照れるわね〜」
「⋯⋯キャス。 いたい子です」
「お姉ちゃん。 駄目だよ、一応私たちのヒーローなんだから」
私を勇者っていうなんて、ミートてば! クネクネしていると、ミリィとラムがジト目で私を見ていた。
ーーなによ! 私だって勇者は、不相応だと思っているわよ!
「あれ? 勇者はどこかのう?」
「いないわよ、寝ぼけているんじゃない?」
「そうか⋯⋯」
私がミートに指摘すると、ミートはどこか寂しく俯いていた。
死にかけて、走馬灯のように過去を思い出したのかしら?
そんなことよりも、ミートは大丈夫なの? だって、あんなに血だらけだったんだからーー
「体大丈夫? あんなに、死にかけだったからね。 奴⋯⋯国王が貴方を刺したせいで⋯⋯」
「儂が国王に刺された? ⋯⋯え、なんでじゃ?」
私は事情を知らない彼女に、今まで起きたことを伝えた。
「⋯⋯それで! 私の新必殺技のラブラブ光線が奴に炸裂! 奴は吹っ飛んで、私はゆう⋯⋯私は英雄よ!」
「へえ? ⋯⋯で、吹っ飛んだそいつが国王だったと?」
語り終えると、ミートは私たちを訝しんだ目で見ていた。
「おかしな話じゃの? ⋯⋯その国王とやらはどんな人物じゃった?」
「ハア? 貴族の服装の壮年野郎よ! 来賓席にいる時から怪しかったけど⋯⋯まったく、この国はトップが腐っているんだから!」
「壮年で来賓席に座っていたのう⋯⋯ああ、わかったぞ!」
ミートが合点がいったという様子で、私を見る。
「そいつは『前』国王じゃ。 ⋯⋯まったく。 旧態の老害が! 今回の事態を利用して、また統治を戻すつもりなのじゃな⋯⋯」
「前? ⋯⋯なんでそんな奴が堂々と来賓席に座っているのよ!」
私がミートに詰め寄ると、困ったように眉を吊り上げる。
「現国王は変わり者でのう。 今は学生らしいらしいのじゃ。 パルディア学園に通っているそうじゃぞ! ⋯⋯奴に授業を教えるのが楽しみじゃの!」
突然脇道に逸れて、ニコニコする彼女。 ーーちょっと、どういうことよ!
「国王ってだいたい、来賓にいるんじゃないの? 私、勘違いしたじゃない!」
「そんなこと言われても⋯⋯ルミスは学園のみんなと仲良く観戦してたぞ? 儂も挨拶したのじゃ! 今後お世話になるぞいと⋯⋯」
私は羞恥で赤面する。 だって思うじゃん、あんな堂々と豪華な王席に座ってたら。 そう思うわよね? ねえ!
「⋯⋯じゃあ、ミートを刺したのも前国王?」
「儂を刺した? ⋯⋯うう! あれ? 私は生きているのですか⋯⋯」
ミートが記憶を取り戻したわね。 ーー死ぬほどの痛みを思い出させるなんて、罪悪感があるわね。
塞ぎ込んでいる彼女に私は話しかける。
「奴はミートや私たちのことを、オーガが殺したことにして、処分するつもりだったの! 酷い奴よね⋯⋯」
「⋯⋯違う。 違います。 私は前国王に刺された訳じゃないです⋯⋯」
ミートが震える指でラムを指す。
「儂はコヤツにやられたのじゃ!」
「ラム! なんてことを、見損なったわよ!」
私はラムを非難する。 しかし、ラムはジト目で私を見る。
「キャス? 馬鹿です。 私たちはずっと一緒だったです!」
「じゃあ違うわね!」
「キャス? 現実逃避もいいところです! さすがの私も疑ってましたです!」
「⋯⋯やっぱり。 ミートお姉さんを刺した犯人は⋯⋯」
ラムが背負っている人物に目を向ける。 ミリィとプリンも視線を向けた。
「⋯⋯⋯ギヒ。 バレたの? 残念なの⋯⋯」
ーー犯人はミアだった。




