第32話 いでよ! 私の新必殺技! ーーキャス視点
森の入り口を塞ぐように現れた奴を、私は観察する。 彼の見た目は壮年の男性、豪華なマントに貴族の服というわかりやすい見た目。
そして腰には剣がある。 おそらく、この剣でオーガを討伐したのね。
そんなことを考えていると、奴は私を見ながらくつくつと笑い始めた。
「おいおいサキュバス。 人間のフリはやめたのか?」
「⋯⋯どういう意味かしら?」
「さっきまで、服を着てただろう? 律儀にコートまで羽織っていたから、笑いを堪えるのが大変だったぞ」
なんですって! あの時の無表情は、笑いを堪えていたっていうの! 私のなにがいけないのよ! 許せない、絶対に倒す!
私は怒りに任せて、奴に大剣を叩きつけた。 しかし、奴の剣に阻まれてしまう。
彼が取りだした剣は、血だらけだった。 不気味なほど刃こぼれをしておらず、まるで、もっと斬れと要求しているようだった。
「ちっ。 サキュバスが、剣を覚えおって⋯⋯」
忌々しそうに、私のことを睨みつける彼。 私が大剣の心得があることが気に入らないらしい。
「亜種如きがいい気になるなよ! コイツらといい、ギバドルでも⋯⋯」
「⋯⋯今、なんて言ったの!」
私が問い詰めると、奴はケラケラと笑いだす。
「クク。 ギバドルは美味しいからな~ 売ったら金になるんだよ。 おかげでこの国は大繁盛だ! 笑いがとまらないな~」
しかし、抜け落ちるように表情が一変する。
「グレギの奴、しくじりおって⋯⋯ まあ、いいだろう。 また派遣すればいいからのう。 今度は徹底的にやるぞ! まずは、反乱を起こした街の住民を消して⋯⋯」
「させない! ギバドルは私が守る!」
私の言葉に不意を突かれたのか、彼は私のことを無表情で見た。
「⋯⋯ああ。 そういえば、おめおめと逃げ帰ってきた兵がなんか言ってたな⋯⋯たしかサキュバスと白獣人が、革命を起こした原因だと。 あまりにも、ふざけた話だったので、この剣でこっぱ微塵にしたのだが⋯⋯そうか、そうなのか。 つまり、お前らが我の計画を潰した、クソ亜種どもだなぁ!」
突然気が狂ったように、剣をがむしゃらに振り回す彼。 縦横斜め、斬る突く叩きつけるの動作を不規則に繰り返す。 奴が無軌道に行う攻撃を、私は防いでいく。
ーー近くにいないと攻撃できないけど、このままじゃジリ貧ね。 遠距離技が使えればいいのに。
ケンタウロスの矢並みの破壊力があって、曲芸師のように華麗で、忍術のように多彩な技。
そして、話術のように確実性があって、真空波のように使い勝手のいい技ーー
できるかどうかじゃない! 一発勝負でやってやるわ!
奴から、距離をとる。 突然消えた私に思わず空振りをする彼。
私は手でハートを作り、それを奴の方に向けて叫んだ。
「必殺! ラブラブ光線!」
ーーするとポワっと、手からハートが出てきた。 それがヨロヨロと、奴に近づく。
あれ? 私の新必殺技ショボくない?




