第29話 真の敵は何者? キャス視点
世界が戻る。 さっきまで競技場にいたはずなのに、森林地帯になっていた。 周りには森林があり、視界は塞がれている。
私は周囲を伺う。 感じるわ! オーガの気配を強く感じるわねーー
「なにが起こったです? ここはどこです?」
「お姉ちゃん、落ち着いて。 ⋯⋯多分だけど、オーガの拠点の近くだよ。 気配を感じるから⋯⋯」
「⋯⋯ニャー! ロルカの奴。 これは完全にアウトだからな! 帰ったら、お父様に言いつけてやる! お父様の名誉毀損罪ニャー」
ミリィとラム。 そして、プリンはいる。 でも、ミートとミアがいないわね。
混乱するミリィをラムが諌める。 プリンは、ぷくぷく怒っていた。
「とにかく、二人を探しましょう! みんな、はぐれないようにね⋯⋯」
私の指示に三人は頷く。 鬱蒼とした森の中は、オーガの気配で満ちていた。 風が吹くたびに木が揺れるので、それがオーガなのかがわからない。
「入り組んでます。 似た景色ばかりで迷いそうです⋯⋯」
「そうね。 はぐれたら、合流できないわね」
空を飛べば、場所の位置がわかる。 ただし、危険な行為ね。 私は、三人にこの策を提案することにした。
「私が飛んで、場所を調べてくるわ」
「キャスお姉さん! そんなの危険だよ?」
「危険なのはわかってる! でも、これしか方法はないの⋯⋯」
私がそういうと、ラムは渋々了承した。
私は空へ舞い上がった。 高さは森林を越えて、遥か上空へ。
ーーそして、私は最悪の光景を目撃してしまう。 血だらけのミートさんが倒れていたのだ。
私は慌てて、ミートさんの元へ向かう。 無事に到着できたが、その傷痕を見て、驚愕した。
彼女の傷は刺し傷。 ナイフのような細い傷だった。 オーガたちは棍棒使いだから、こんなものは使わない。
つまり犯人はオーガじゃない! 一体ここで、なにが起こったの? そして、ミアはどこに行ったのかしら?
慌てて飛んでいった私を、追跡していた二人も、ここへやってきた。
「ミートさん! 嘘です。 そうに決まっているです⋯⋯」
「刺し傷?! キャスさん⋯⋯」
「⋯⋯ええ。 どうやら、私たちの敵はオーガじゃないようね⋯⋯」
私はミートを見るとまだ息がある。 かろうじて生きているけど、助からない。
ーーこんな時にミアがいれば!
私は自分の無力さを嘆くことしかできなかった。 そんな時、プリンが遅れてここへやってきた。
「ニャー。 みんな、早いニャ。 僕はヘトヘトだニャ! ⋯⋯えっと? みんな悲痛な表情をして、どうしたニャ?」
プリンが私たちを怪訝そうに見る。 そして、視線は血だらけのミートさんへ。
「⋯⋯刺し傷。 まだ息はあるニャ⋯⋯」
「⋯⋯でも、私たちにはなにもできないよ⋯⋯」
「ウウ。 ミートさん、嘘です! こんな別れ、嫌です!」
私たちが悲しんでいると、プリンがなにかを決意した表情で呟く。
「⋯⋯大丈夫ニャ。 ミートは助けるニャ⋯⋯」
するとプリンは、ミートさんの服を捲り、体を露出させた。 そして、患部へ手をあてる。
その時間は一瞬。 彼女の手がどけた先には、傷ひとつない綺麗なミートさんがいた。
「すう⋯⋯私は無罪です⋯⋯すう」
安らかに寝言を言うミート。
私たちは、目の前で起きたことに驚愕した。
プリンは聖女だったのだーー




