第28話 ボスオーガの余興 ーーキャス視点
ロマーニャさんとの闘いの後、オーガの集団がここに向かっているというアナウンスが競技場に流れたわ。
観客の人たちは慌てて逃げ出す人たちと、この状況を楽しむ人たちに分かれているわね。 出口に一度に大量の観客が、向かわないだけマシかしら?
ーーでも、このタイミングねえ?
私がそう思ったのは、ここは武術大会の場ということ。 ここに集まっていた選手の大半はボロボロだったり、または会場を後にしている。 私が対戦した選手たちがその例ね。 あの人たちは、どこかへ消えるようにいなくなったわ。
さっきまで横にいたロマーニャさんは、颯爽と壁をよじ登り、飛び降りて行ったわ。 おそらく、単身でオーガに突撃したのね。
そして、来賓席にはバルデン国王がいた。 彼はまるで置物のように、動かずに座っているわ。 まるで、感情がないみたい。 私は彼に不気味さを覚えた。
そんな風に会場の様子を窺っていると、あのボスオーガが現れた。
改めて見ると、威圧感が凄いわねーー
私が感心していると、さっきまで楽観的だった人たちが、狂乱する。 どうやら、ただのオーガだと思っていたようね。 すぐに逃げた人たちを押し除けるように、我先にと撤退する様子を見て、私は呆れてしまった。
結果は、大混乱。 狭い入り口が逃げ惑う人々で溢れかえる。 罵声と、泣き叫ぶ人たちの悲鳴が聞こえてきたわ。
そんな様子を、ケラケラと嘲笑しながらボスオーガは眺めていた。
「ハハ。 腑抜け共め! せいぜい恐怖するがいい! 今日が我が魔王様の人間界、破滅の日々の始まりだ!」
「⋯⋯ずいぶんと、大袈裟なことね?」
「ふん、貴様か⋯⋯」
私がボスオーガに声をかけると、アイツは私をまじまじと見つめる。
「⋯⋯ふむ。 よく見ると、魅力的なメスだなぁ? 帰ったら、お前の妄想を酒の肴に楽しむこととしよう⋯⋯」
「え? 私で楽しむ、ですって?」
「じゃあな、サキュバス。 せいぜい生き残ることだな⋯⋯」
そういうと、アイツは去っていく。 どうやら、怯える人間たちを間近で見たかっただけのようだ。
私がボスオーガの後ろ姿に目を向けていると、ミリィとラムと、そしてプリンがやってきた。
「キャス! 無事です?」
「ええ。 なんともないわ⋯⋯ミアちゃんはどこ?」
私があたりを見渡すと、ミートさんとミアが一緒にいた。
「⋯⋯あのオーガ、悪趣味だね。 人間たちを怖がらせることを、楽しんでいるみたい⋯⋯わざわざ姿だけ見せて、去るんだもん」
「まったく⋯⋯その通りね」
「キャス? どうしたです?」
人の怖がる姿を見たいだなんて! なんて卑劣なオーガなの! そんなオーガに妄想の中で、愉しまれている私。 悔しいわ〜 アイツはきっと今夜、裸の私を想像して、夜を迎えるのでしょうねーー
「ニャー! ペットの僕がいるのに、ロルカのことを考えるなんて⋯⋯」
「ロルカ! ⋯⋯アイツの名前なのね?」
「そうだけど⋯⋯まさか喜んでいるニャ?」
私は体をくねらせながら、興奮していた。 最高じゃない!
「⋯⋯露出変態」
「⋯⋯誰? 私は今、服を着ているわよ?」
「キャスお姉さん? どうしたの?」
「今、誰かの声が聞こえて⋯⋯」
その時だった。 私の世界が揺らぐ。 待って! この感覚、覚えがあるわ!
ワープ。 この会場に残った人物を、まとめてどこかへ送るつもりね!
私はこの現象の犯人であるミス・ファナイを探す。
ようやく見つけた彼女は、私に気づくと不気味に笑ったーー




