第23話 ミス・ファナイの暗躍 ーーキャス視点
ミス・ファナイやプリンたちと一緒に、パルデン王国に向かうわよ。
早くミアちゃんを治さないと! 待ってて、お姉ちゃんが治してあげるからね。
「⋯⋯よし。 じゃあ行くわよ!」
「これ! ⋯⋯お主、まさかとは思うが、儂を担いで運ぶつもりかぇ?」
「当然じゃない! 早くいかないと⋯⋯二人ぐらいなら楽勝よ?」
「⋯⋯怪力サキュバスか。 じゃが都合が悪いの⋯⋯」
都合が悪い? 高いところが苦手なのかしら?
そう思っていると、彼女は宙に手を伸ばしたわ。 その手には、いつのまにか大きな杖が握られていたの。
「ゴホン。 ⋯⋯それよりも、いい方法があるぞい。 ワープじゃ」
「ワープ? すごい! 昔話で見たことあるよ! 僕、憧れてたんだ!」
プリンがネコミミをぴょこぴょこさせて、興奮しているわね。
彼女の杖が光り、周りの景色が揺れた。 そして崩れていく景色に、私とプリンはお互いに抱きしめあう。
なにこれ? これがワープなの? なにか違和感を覚えるんだけど。
私は、ミス・ファナイに視線を向ける。 彼女は不気味に笑っていたーー
空間が歪んだのは、ほんの数秒間。 やがて景色が落ち着くと、目の前に大きな建物が現れた。
その建物の幟には『本日開催! 武闘大会』と書かれた文字があった。
それを一緒に見ていたプリンが驚いていた。 ネコミミがぴょんぴょん揺れている。
「武闘大会が今日? ⋯⋯おかしいニャ! 武闘大会はまだまだ、数日後のはずだニャ!」
「なんですって? どういうこと! ⋯⋯まさか」
「あー」
私は説明を求めるためにミス・ファナイの方を向く。 すると彼女は、おちゃらけた表情をしていた。
「あちゃー 儂としたことが! 空間どころか、時間軸まで移動してしまったわい。 うっかりじゃ! 耄碌したかのう⋯⋯」
「⋯⋯⋯」
ーー絶対にわざとだわ! どういうつもりなの! ミス・ファナイ!
そう思った私は、彼女に掴みかかろうとした。 でも、寸前で思い止まる。
ミアのことがあるから、彼女に歯向かうのは得策ではない。
悔しいけど、ここは彼女の思惑通り、付き合うしかないわねーー
そう私は決めて、建物へ歩き出した。
「⋯⋯参加登録にいくわ」
「おや? ⋯⋯⋯ホホホホ。 勘がいい上に聡いとはのう? 儂はてっきり掴まれて、元に戻せ! ⋯⋯とか? いうと思ったぞい?」
「⋯⋯⋯」
ーー関わるな! 私の危機意識がそう言っている。 挑発に乗せられたら駄目よ!
私が予選会場に行くと、締め切り寸前だったようだ。 私がサキュバスの姿なのにも関わらず対応してくれた。
でも、区分を人間にされた。 どうやら、コスプレだと思われたみたいねーー
受付を終えた私。 その時、背中をポンポン叩かれた。 振り返ってみると、ミリィがいた。
「キャス、お久しぶりです! ミス・ファナイさんを見つけたんですね!」
「ミリィ! ミアちゃんは無事?」
「⋯⋯? 無事です! 健康バッチリです! おメメが濁っていて、私たちが渡すご飯は一切食べないですけど⋯⋯」
「駄目じゃない!」
絶望した。 早く、治療しないと! そう思っていると、ラムがミアを担いでやってきた。
ラムはまだ小さいのに、ミアちゃんをラクラク運んでいるわね。
「キャスお姉さん!」
「ラム、久しぶりね。 ⋯⋯ミアちゃん? 私だよ?」
そう言うと、ミアちゃんは私の方をぼんやり見つめていたわ。 でも、目が合ってないーー
どうやら、私たちのことなんて、眼中にないようね。 まあ、だからって関係ないわ。 彼女が傷ついているのは、事実だからねーー
私はミス・ファナイを見つめた。 彼女はミアを見ながら、ぶつぶつ呟いている。
「ネコミミ⋯⋯ふむ。 これは⋯⋯聖女か⋯⋯」
「ねえ? どうなのよ?」
「まあ、治療は可能じゃぞい。 ⋯⋯この武闘大会が終わった後でのう」
「⋯⋯ハア。 はいはい、お願いね」
ーー聖女。 ミアを見ただけで判断するなんて。 私があえて口にしなかったことを、彼女は簡単に口にする。
私は違和感を覚えた。 なぜ、ミス・ファナイはこの大会に私を出場させたがるの? なにかがここで起こる予感がする。
そんなことを考えていると、プリンが私の服の袖を掴んで、ゆすってくる。 この子の自己紹介がまだだったわね。
「この子はプリン。 オーガに襲われていたところを助けたの」
「初めまして。 僕はキャスのペットになりました。 よろしくお願いします」
プリンがニッコリと挨拶をした。
「キャス⋯⋯ ゆう君に逃げられたから、新しい相棒を用意したんです?」
「お姉ちゃん! 駄目だよ、そんなこと言ったら⋯⋯」
「⋯⋯⋯」
別に? ゆう君には逃げられてないから! アイツは、私の虜なんだからね?




