第16話 胸騒ぎは悪意の予感
「⋯⋯! ⋯⋯ここはまた、医務室か⋯⋯」
「ニャー。 ナナシ君がやっと起きたニャー」
「⋯⋯またか。 ピンクネコ⋯⋯」
「ミルフィって呼んで欲しいニャー」
「⋯⋯⋯⋯」
俺は服を捲り上げ、ルーブに一発入れられた後を探す。 だが、当然見つからない。 目の前にいるミルフィが治療してくれたんだ。
俺ははっきりと覚えている。 奴に一発の腹パンをもらっただけで負けた事実を。 そして、これが初めてではなくて三度目であることをーー
しかし、それでも俺は敢えてこういうのだ、勝った! とーー
「⋯⋯やれやれ。 また興奮してしまったようだなぁ? ついつい気絶してしまうぜ~ ⋯⋯なんだよ、その表情は! 俺に文句あるのか、ピンクネコ!」
「ニャ⋯⋯ナナシ君のことがよくわかったニャー」
「⋯⋯⋯⋯」
そう言うと突然、俺に抱きついてきた。 俺はミルフィを突き飛ばす。
「⋯⋯なんだよ、ピンクネコ! ひっついてくるな!」
「ニャン? ナナシ君⋯⋯ワタクシは聖女ニャン。 敬意を払って欲しいニャ」
「ハア? ピンクネコに払う敬意なんてねぇよ」
「でも、さっきは敬語になってたニャン?」
「⋯⋯⋯⋯」
図星を突かれて、たじろぐ俺。 前回の人生の時に、ミア以外の聖女に会ったことは俺の身分上いくらでもあった。
ーー聖女は神に選ばれた存在、故に相応の敬意を払うべきなり。
その概念が、この世界の常識だ。
貧しい少女がこの力を発芽しただけで、貴族の仲間入りだ。 昨日まで下に見られていた奴らのことも、文字通り踏んづけることも容易い。
まさに、この世界の一般常識。 貧民のガキだって知ってる当たり前の事実だ。
ーーあれ? 違和感を覚える。 なんだこの胸騒ぎは。 俺はとんでもない誤解をしているのではないだろうか? もしかして、ミアはーー
一方。 俺の思案顔を肯定だと勘違いしたのか、ミルフィが胸を張ってアピールし始めた。
俺は素直に今の感情をミルフィに伝えた。
「ニャ! ナナシ君? 素直に認めるニャ? ホレホレ⋯⋯」
「ウザい」
「ニャビーン!」
「ねえ、ミートさん。 聴きたいことがあるんだけど⋯⋯」
「どうしたんじゃラム? ⋯⋯内緒話かえ?」
「うん。 お姉ちゃんが知ったら、すぐにミアの前で話すからね」
「⋯⋯ミアに聴かれたらマズイのか⋯⋯ 言ってみなさい」
「あの子って実は聖女なんだ。 ⋯⋯おかしいよね? どうして村人たちや家族に、秘密にしてたんだろうね⋯⋯」




