第15話 ナナシの回想 村の壊滅
深夜、俺は一人で村を回っていた。 キャスには近くの洞窟で大人しくしておくように、指示を出した。 キャスは俺がなにをするのか不審がっていたが、了承してくれた。
そんな俺が手に持っているのは、血だらけの剣。
つまり、俺はこの剣で奴らーー村人たちにお返し回りをしていたのだ。 まあ、そのままの等倍だと甘いので、倍返し以上だがな。
俺に馬乗りした奴、俺に蹴りを入れた奴等の哀れな悲鳴が、俺を癒してくれる。
強いて残念なことと言えば、悲鳴しか聴けないことかな?
俺の暗殺スキルに、思わず笑みが溢れる。 これでは、勇者じゃなくて、暗殺者だな? 家業でもするか?
まあ、とは言え殺してはいないけどな?
後でせいぜいミアに詫びながら、治療してもらうんだなぁ?
思わず高笑いをする俺。 その時背後に誰かの視線が。 振り返るとそこにはミアがいた。 しかし、その表情は先程までと違って狂気に満ちていた。
「ギヒヒ。 ゆう君って猟奇的なの~」
「⋯⋯ミアか。 なんのようだ?」
「ゆう君にお願いがあるの〜」
そんな彼女が持っていたのは小型のナイフ。 しかし、そのナイフは血で汚れていた。 ミアは無機質な表情で突っ立っていた。 俺はその様子を見て震え上がる。
俺のその様子を見たミアは、口元だけを笑顔にしていた。
「⋯⋯ああ。 これが気になるの?」
「それは人の血だな⋯⋯」
「ゆう君駄目なの。 ちゃんとトドメを刺さないと⋯⋯まだ生きてたの。 だから、ミアが殺しておいたの⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「ギヒ。 それでお願いなの。 ミアの代わりに惨殺の罪を背負って欲しいの」
「⋯⋯断る。 と、言ったら?」
「ミア、悲しいの⋯⋯死人が一人増える⋯⋯からぁ!」
「⋯⋯!」
ミアが突進して来る! 急な行動に俺は剣を構えるだけで、精一杯だった。 俺の剣と、ミアのナイフが交わる。
「ギヒヒヒヒ⋯⋯動きだけは素早いの~」
「お前もな!」
剣に力を込めて、ミアを弾き飛ばす。 のけぞったミアに追撃を仕掛けようとしたが、眼前にミアの右足が迫る。
今度は俺がのけぞる羽目になったが、そこにミアがナイフを投擲。 寸前でかわしきれず、ナイフが俺の顔の皮膚を裂いた。
痛い、痛い、痛い! この、ネコミミ女が! 許さねえぞ!
武器が無くなったミアは 地面に這いつくばっていた。 俺はミアを立ち上がらせないために、馬乗りになる。
ミアはそんな俺を見て、また不気味に笑った。
「どうしたの? ⋯⋯私を犯したいの?」
「ふざけるな。 誰がこんな薄気味悪いネコミミなんて⋯⋯」
「⋯⋯そう。 やっぱりネコミミのせいなの。 こんなものがあるせいでミアは産まれてから、ずっと最悪なの⋯⋯本当に鬱なの」
ミアはそう言うと気絶してしまった。 俺は恐怖を覚えながら村を去る。
洞窟に戻ってキャスと合流。 キャスは、顔の怪我を心配してくれたが、今は逃げることが先決だった。
後日知った話だが、村は廃墟になったそうだ。 部下から聴いた一説によると、村は放火されて、跡形もなく全焼したらしい。
そして、この一件で俺は亜種が嫌いになったのだった。 あのネコミミの不気味な笑みが脳裏にこびりついて離れない。
亜種はそういう存在なんだと勝手に決めつけた。
「ああ。 ミア、置いてかれたの。 ⋯⋯貴方はどう思う? ミアは貴方がいないと駄目なの。 ずっと、ミアのことだけ見て欲しいなの⋯⋯」




