第14話 ナナシの回想 真理に気づく俺
ミアと言う少女に回復してもらった体を撫でる。 さっきまで、傷だらけだった体には、一切の傷はなかった。
当時の俺は、その事実に驚愕したことを覚えている。
そんな俺の元にキャスがやって来た。 キャスは涙を流しながら俺に抱きついた。
キャスはミアと一緒に俺の様子をジッと見ていた。 まったく、彼女には格好悪い所を見せてしまったようだ。
前回の俺は、キャスに戦闘はさせなかった。 大剣を持っているし、多少腕に自信がある様だが、俺はキャスが傷つくのを見ていられなかったんだ。
「ゆう君。 怪我が治ってよかったです。 ゆう君がいないと私は⋯⋯」
「ふふ。 大丈夫さ、俺はキャスをおいて先に死んだりしないよ」
「はい、わかりました」
「ふふ。 可愛いな~」
キャスを優しく撫でる。 よしよし、彼女の教育は完璧だね。 必要な時にしか話さない、俺の言うことには従う、いつも優しい表情で見つめてくるーー
当時の俺は従順なキャスにご満悦だった。 大好きな女が俺に尽くしてくれる。
それが例え廃人や人形であろうとも構わないーー
だが今にしてみれば、そんなキャスなんてキャスじゃない。 前回の俺はまったくわかってなかったよ。
やっぱりキャスとは今回の方が好きだ。 嫌われても、思いは増すばかりだ。
彼女は今なにをしているかな? 恋しくて、胸が裂けそうだよキャスーー
まあ、そんな俺のことは置いといて。 話を戻そうか。
俺たちの様子をニコニコしながらみているミアと名乗る少女。 あんな目に遭って、なんでコイツは笑顔なんだ?
俺はそんな彼女を不審に思い、怪訝な表情になる。
「⋯⋯ニコニコして、なんだよ、お前?」
「⋯⋯あ。 ごめんなさい、ミアになにか問題がありましたの?」
「あるだろ。 お前、ボコられてたよな? 悔しくないのか?」
「ミアがボコられるのは当然なの。 このネコミミがあるから⋯⋯」
「ふ~ん」
ミアは悲しげに、ネコミミに触れる。
ーーその様子はまるで、このネコミミは呪いだ! と言わんばかりの態度だった。
「そうか? 俺にはかわいく見えるが?」
「⋯⋯かわいい? ミアのことが?」
「ああ、似合っているぞネコミミ」
「⋯⋯そんな! 本当に?」
ミアは予想外だと言う表情をしている。 しかし、かぶりを振って否定し始めた。
「⋯⋯違うの。 村のみんなは、ミアのことを醜いって言うの。 だから、醜いの⋯⋯」
「あいつらか⋯⋯よくも不意打ちなんて卑怯な真似を!」
「⋯⋯違うの」
「⋯⋯なんだと?」
俺が不意打ちされたことを悔やんでいると、ミアが俺を否定した。
俺の疑問に答えるように、ミアが口を開く。
ーーその目は真っ暗に沈んでいて、まるで深淵を覗いているみたいだった。
「⋯⋯それは違うの。 世の中公平じゃないの、不意打ちなんて発言は負け犬の遠吠えなの⋯⋯死んだらそれで終わりなの」
「なんだと! ⋯⋯⋯たしかにその通りだなぁ⋯⋯」
「だから、勝てばいいの」
「そうだったのか⋯⋯」
俺は苛立ちを覚えた。 既に治ったはずの体が痛むーー
俺はこの時、戦いとは例え不意打ちでも、勝った者の勝ちだという当たり前の事実を知ったのだ。
正々堂々などと言う綺麗事は、敗者の言い訳であることをーー
そうか、勝てばいいんだよ、勝てば! 俺をコケにした奴に復讐を。 そう、痛みには痛みを。
「⋯⋯⋯⋯ギヒ」
だから気づかなかった。 あの忌まわしい笑みにーー




