第13話 ナナシの回想 村娘の聖女
聖女ーー 体の傷を治すことが出来る存在を俺たちは呼んだ。
そもそもなぜ聖女と言う呼び名なのかと言うと、傷を治す能力が発芽するのは女性だけだからだ。
やり直し前の部下から聴いた一説によると、その力を与える存在が女神であることが理由らしい。 知らんけど。
そして前回の人生で俺は、ピンクネコーーミルフィとは違う聖女に会ったことがある。 そいつもネコミミだった。
彼女の存在はとても忌まわしい思い出だが、語ろうと思う。
話は少しだけ戻る。 俺はキャスと一緒に村で生活していた。
教えの母親が死んだ後、まるで抜け殻のようになってしまったキャス。 さらにサキュバスであることが俺にバレてしまった。
お互い気まずい関係になってしまい、会話すらままならない日々が続いていた。
キャスは俺を置いて、どこかへ行ってしまうのではないか? 彼女がいなくなってしまったら俺はまた一人だ。 彼女が俺から離れてしまうことに恐怖を覚えた。
それは絶対に嫌だ! 俺はなんとかキャスと一緒にいる方法を考える。
そこで俺は閃いた。 キャスの正体を村人たちにバラすことをーー
さっそくローブとお面をかぶり、村人たちに告げ口をする。 こうすれば、誰かが信じる。 それが、たまたま村長だっただけの話しだ。
正体を知られたキャスは、自分がなぜ正体がバレたのかわからないまま、着の身着のまま下着姿で村から追い出される。
突然家を失って憔悴しきったキャスに、俺は甘く囁いたーー
「キャス。 僕⋯⋯いや、俺がずっと側にいるから⋯⋯安心してね」
「でも、私とゆう君は種族が違うから⋯⋯」
「はは、そんなの関係ないさ。 俺とキャスの間にはな⋯⋯」
「ゆう君⋯⋯ありがとう⋯⋯」
俺の胸でか弱く泣くキャス。 俺は彼女の存在が愛しくて堪らなかった。
ただ、誤算があった。 キャスは思ったよりも、精神ダメージがデカかったようで、俺が献身的な介護をしたのにも関わらず、性格が豹変してしまった。
俺と話す時は、常に敬語。 ーー最初に出会った時の、お姉さん感はどこにもなかった。 『ゆう君』と俺の名前を呼ぶことだけが、唯一の共通点だった。
色々な所へ旅をした。 思い出せば、この時が今を含めて、一番幸せだったのかも知れない。
そんな中、俺たちはある村に立ち寄った。 そこの村人から話を聴くと、近くにパルデン王国と呼ばれる、大きな国があるらしい。
次の目的地をそこに決めた所で、俺はキャスと村を散策した。
すると、村人たちが言い争いをしているではないか。 すぐに様子を確認すると、村人たちが一人の少女に暴行をしていたのだった。
キャスが心配そうに様子を見ている。 少女を助けたいようだ。
そこで、俺はキャスの前で格好をつけるために、村人たちの中へ割って入った。
そいつらは、怪訝な顔で俺を睨んで来た。 偉そうな奴らだなと、俺が思っていると、一人が不意打ちで俺の鳩尾に蹴りを入れられた。
俺は地面に埋もれた。 その様子が気に入ったのか、立ち上がろうとする俺の背中を踏みつけて、動けないように馬乗りにされた。
それだけに飽き足らず、少女の代わりと言わんばかりに暴行された。
ニタニタと笑う村人たちから、開放されたのは日が暮れる頃だったーー
飽きられたのか、そのまま捨てられるように放置された俺。 立ち上がることも、声を出すことも出来ない俺に声をかけたのは、助けた少女だった。
「大丈夫ですか?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「傷だらけ⋯⋯今治します⋯⋯」
キャスと一緒に逃げていた少女は、傷に手を合わせると、あっという間に俺の傷が消えていった。
まさかの出来事に驚いていると、少女は俺に顔を見合わせる。
その時、頭の上を見るとネコミミがあった。
「初めまして。 ミアと言います⋯⋯貴方の名前はキャスさんから、聴きました。 ゆう君、ありがとうございます」
「ネコミミ⋯⋯人間じゃない⋯⋯」
これが俺と聖女ーーミアとの出会いだった。




