第12話 不意打ちでも勝てばいい
場所は教室から移動して、俺たちは競技場に到着した。 武術大会のクラスの代表者を決めるためである。 ゲバドンが躊躇いがちに、話し掛けてくる。
「ナナシ君? あまり、無理はよくないですよ?」
「オケ、オケ。 大丈夫。 殺しはしないって! 安心してくれよデクの棒」
「デクの棒? ⋯⋯ナナシ君。 さっきから言ってますが、まさか僕のことですか? ⋯⋯そんなことを言われるのは心外ですね。 昔を思い出して悲しいです」
「ハア?」
どうやら、ゲバドンは昔もデクの棒扱いを受けていたようだ。 まったく、どうでもいい情報だな?
そう思っていると、また俺に向かって水鉄砲が飛んできた。 俺はまた避けたが、その先にいたゲバドンに命中した。 やったか?
教室の壁をぶち抜いた攻撃と、威力はまったく同じだった。 しかし、ゲバドンには傷一つついてなかった。 馬鹿な! コイツの体の強度は鉄以上か!
一方、この水鉄砲を繰り出した犯人であるアセッタは、ニヤニヤしながら俺に文句を言う。
「ちょっと、ハリボテ君。 君が動いたから、先生に当たったじゃない? どうしてくれるのよ?」
「ハア? おいメスガキ、あんな玉⋯⋯ぶつかったら、貫通するわ! 誰が当たるもんか!」
「ふふ。 アンタ、いい的当てね! ゾクゾクしてきちゃう⋯⋯」
アセッタはそう言うと、体を震え上がらせるーー
その様子に、俺は恐怖を覚えるのであった。
横を見ると、ルミスが興味津々な様子で、ゲバドンを見つめていた。 それは欲しい玩具を見つけた子供のようだった。
ゲバドンが若干引きながら、ルミスに話し掛ける。
「⋯⋯僕の体をまじまじと見て、どうしたのかな?」
「ゲバドン先生の体頂戴! 実験に使うかラ!」
「え? 僕の体は上げられないな⋯⋯ちなみにどうしてだい?」
「だって、その体! 羨まし過ぎるゼ!」
どうやら、ゲバドンの体に興味を持ったらしい。
ウンザリだ。 もう、コイツらの話はいいだろう。 なぜならモブだからなーー
俺は、腰にある剣を構えて、ルミスに斬りかかる。 突然の奇襲に驚くルミスの背中を切断。
血飛沫を上げながら、悲鳴すら出さずに倒れる豚。 調理完了だーー
その時、遠くで見ていたミルフィが、血相を変えてルミスに駆け寄る。 傷口を見て青ざめる彼女。 なにをするつもりだ?
ゲバドンがそんなミルフィを見つめる。 彼女もゲバドンを見て、目でなんらかの合図を送っていた。 そしてミルフィは、血だらけのルミスの体に手で触れた。
ミルフィが傷口に手を当てた瞬間、まるで時間が巻き戻ったように、傷口が消えていく。
そして、あっという間に、治ったルミスを見てため息を吐いた後、俺を睨む。
俺はそんなミルフィを嘲るために、口を開いた。
「おや? ピンクネコの正体は、聖女でしたか。 ⋯⋯せっかく、隠していたのに残念ですね?」
「⋯⋯ニャ。 今の攻撃は、明らかにやり過ぎニャ⋯⋯」
「やり過ぎですか⋯⋯フハ。 どうやら、温室育ちの家ネコのようですね。 ⋯⋯世の中は甘くはないんですよ! そら、もう一丁!」
「えっ! アンタな、ギャーァ」
俺は静観していた、アセッタにダッシュして斬りつける。 またも不意打ちだったらしく、哀れな断末魔と血飛沫を上げ倒れた。
ちょっとズレたな。 もう少しで、両手を切り刻むことが出来たのに!
それにしても、嗚呼! たぎってきたなぁ? たまらね〜ぜ。
アセッタにはマジでムカついていた。 本当だったら、殺したいぐらいだ!
ーーだが、許してやる。 なぜなら、人間だからな!
おっと、ここには人間じゃない奴がたくさんいるぞ? そうだよなぁ?
例えば、目の前のピンクネコとかなぁ? 殺してやる!
俺はミルフィを切り刻むために、襲いかかる。 当の彼女は、アセッタの傷を治そうと懸命になっていた。
チャンスだ! 切り刻んで、ミンチにして、鳥の餌にしてやんよーー
「そこまでだ、ナナシ」
ダッシュでミルフィに向かう途中、不意に声が聞こえた。 その瞬間、腹部に衝撃と痛みを覚え、そしてーー
「アグ! ボゴゲェコ⋯⋯」
「ナナシ。 貴様の行動、実に醜悪そのものです。 ⋯⋯立ちなさい。 相手になります。 この俺が、お前の根性を叩き直してやろう⋯⋯」
「ルーブ。 格好いい決め台詞しているけどさ⋯⋯」
「なんだ、フレイア? 今は大事な場面なのだが⋯⋯」
「ニャー。 ナナシ君、気絶してるニャー 一発KOって奴ニャー」
「なんだと? ⋯⋯そんな馬鹿な⋯⋯」
「ルーブって、力加減下手ね? ⋯⋯まあ、そんなところ嫌いじゃないわよ私」




